隣家の立替払いの返還請求・・・
仲良くしている隣の家が旅行に出かけたため、その留守中に来た、困っている集金人に立て替えて支払ったのですが、隣の人は支払う必要がなかったと言い張り、立替金を支払ってくれません。
隣人から何らの依頼も受けないのに、隣人のためになるといって、好意により立替払いをする、これを事務管理といいます。
義務なくして、人から何ら依頼されないのにその人のために、立替払いや、物の保管などの事務を行うことで、法律効果があります。
(事務管理)
民法第697条 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
2 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
(緊急事務管理)
民法第698条 管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
(管理者の通知義務)
民法第699条 管理者は、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。ただし、本人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
(管理者による事務管理の継続)
民法第700条 管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならない。ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、この限りでない。
(委任の規定の準用)
民法第701条 第645条から第647条までの規定は、事務管理について準用する。
(管理者による費用の償還請求等)
民法第702条 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
2 第650条第2項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
事務管理を始めた者は、その事務の内容から見て通常自分が尽くすと同じ程度の注意義務を尽くして、その人の利益になるような方法をとらなければなりません。
立替払いという事務管理をしたことがその他人の意思に反しなかった場合は、立て替えた全額を求償請求できます。
意思に反した場合は、客観的に利益が残っていると認められる範囲内でできます。
隣人の言うように本当に支払義務がなかったのなら、立替払いをしたことは何ら利益を与えていません。
隣人は求償に応じる義務がなく、立替払いの金銭を受け取った者に返還請求するしかなくなります。
隣人が支払い義務がないといっているのが逃げ口上である場合には、隣人に対し、権利として現に利益が残っている範囲内で立て替えた金銭の求償請求ができます。
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電車のキセル乗車の罰則・・・
有効期間が過ぎた定期券を使用したり、安い価格の切符を使用して乗車し途中の運賃を支払わず定期券を使用して下車するような行為は、悪気のなさに比べて思い責任を負わされます。
刑事上は、詐欺罪が成立するという見解があります。
民事上は、単に途中の運賃を支払えばよいとか、有効期間が過ぎた後の運賃を支払えばよいというのではなくて、鉄道などの運送会社の約款に従った責任を追及されます。
約款というのは、運送会社に限らず、ある事業で支配的な立場にある事業者もしくはその連合団体が制定した上で所轄官庁の認可を受けるもので、国会の制定した法律ではないのですが、法律と同様にその会社と利用者の権利・義務を定める効力があると解されています。
旅客運送の場合にもこのような旅客運送約款があり、不正乗車をした場合は次のとおり請求をされます。
有効期間が過ぎた定期券を使用していた場合には、その定期券の利用区間の運賃について、過ぎた日の翌日から発覚の日までの期間の正規の運賃の3倍とされます。
切符で乗車し、途中の運賃を支払わず、定期券を使用して下車した場合には、その途中の区間の正規の運賃の3倍とされます。
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近所の主婦の噂で損害賠償・・・
近所の主婦から噂を言いふらされているような場合に、損害賠償はできるのでしょうか?
判例では、近所の主婦による陰口について名誉毀損成立を認め、慰謝料の支払を命じたものがあります。
主婦3人が近所の女性について「盗みをした」「盗みをしているところを警察官が写真にとった」などと噂を言いふらし、女性の勤務先にも匿名の電話をかけ、女性宅にも匿名の電話をかけ、女性宅にも匿名の手紙を送りつけたために、その女性は勤務先を退職し自宅を売却して転居した事例です。
判決は主婦3人に対して合計60万円の損害賠償責任を認めました。
被害者は、加害者がいつごろ、どこで、誰に対して悪口、噂をしたことを証明しなければなりません。
その内容が名誉や信用を毀損する程度であることを証明しなければなりません。
この判例は、加害者が悪口、噂を言ったことを証明でき、かつその内容も名誉毀損の程度に至っていることを証明できた稀な例です。
刑罰としては、公然と事実を摘示して他人の名誉を毀損すれば3年以下の懲役・禁固、50万円以下の罰金に処せられます。
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妻の借金と夫の責任・・・
妻が分割払いで家電製品などを購入した場合、夫は保証人となっていなくても責任を負うのでしょうか?
また、サラ金から借入をする時、夫に無断で連帯保証人に欄に夫の名前を書いた場合、夫は責任を負うのでしょうか?
協同生活をしている夫婦は、その一方が日常家事に関する取引を第三者とした場合には他の一方も連帯して責任を負うとされています。
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
民法第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
妻が家族のために食品や衣料品を買う場合、普通、わざわざ夫を連帯保証人としたりはしません。
しかし、その場合でも、夫は妻のした買い物について連帯責任を負うとされます。
妻が家電製品を買ったなどの日常家事に関する取引をしたときは、夫はたとえ事前にそのことを承諾していなくとも連帯責任を負うのです。
しかし、日常家事に関する取引といえない場合には、夫婦の他の一方は連帯責任を負いません。
また、戸籍上は夫婦であっても長年別居し協同生活は破綻し家計も別々であるような場合には、日常家事に関する連帯責任はないとされます。
妻がサラ金などから借入をする行為は日常家事に関する行為とはいえませんから、夫は保証人になることを承諾していない限り、責任を問われません。
無断で連帯保証人として氏名を利用された場合には、夫婦であれ、他人であれ、その者に法的責任はないのが原則です。
金融業者は保証人となる者に対して保証の意思を確認する注意義務があるとされており、その注意義務を尽くしていれば、そもそもこのような状況にはなりません。
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