他人の塀にペンキで落書きの罰則・・・

他人の塀にペンキで落書きの罰則・・・

ペンキで他人の所有する塀に落書きをする行為は、刑法にあたるかどうかについて、器物破損罪では、「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」とあります。

(器物損壊等)
刑法第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

前3条に記載してあるものは、公文書、私文書、建造物、艦船ですから、塀も当然対象となりますが、しかし、ここには損壊と書いてあるわけですから、ペンキで文字を書いても損壊には当たらないと考えられるかもしれません。

しかし、この「損壊」は、物質的に物の全部、もしくは一部を害し、又は本来の効用を失わせることとされ、効用を失わせたかどうかは、その減損の程度、原状回復の難易等から総合的に判断されるのです。

判例では、ペンキで落書きをすることは、お金をかければ消せるのであるから、損壊にあたらないように考えられますが、程度によっては軽犯罪法ではなく器物破損罪の対象となるとしています。

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別居中の妻の浮気現場撮影で住居侵入・・・

太郎さんと花子さんは夫婦ですが、太郎さんの不貞が原因で、別居しており、太郎さんが太郎さん名義の家から出て行きました。

その後、離婚裁判をしたのですが、花子さんが財産分与や慰謝料を請求してくるので、話し合いがまとまらず、太郎さんはあることを考えました。

現在、花子さんには恋人がいるらしく、太郎さんはその情交の現場を写真に取り、離婚裁判を有利にもって行こうと考えました。

そして、花子さんが住んでいる太郎さん名義の家に忍び込んで、現場を押さえたのですが、花子さんに住居不法侵入罪で訴えられ、有罪となってしまいました。

太郎さんは、戸籍上の妻の情交場面の証拠写真をとるため、自己所有の家に立ち入ったのあるから、刑法130条の「正当な理由なく」人の住居に入ったのではないと主張しました。

(住居侵入等)
刑法第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

しかし、裁判所は、「適度な限度」を超えている入り方だとして、太郎さんの主張を退けました。

民事上の紛争とは別に、刑法では別居中の秩序を尊重するという考え方なのです。

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違法な取調べの調書を破り罰則・・・

山田さんは、お酒を少し飲んだ後、車に乗って帰ろうとしたところ、道でプロの女性に誘われ、ホテルに行ってしまいました。

ホテルに入って、ことをする前に、警察官が入ってきて、任意同行を求められ、話を聞くと、女性は麻薬の常習者で、どうも山田さんが売人だと疑われているらしく、また、山田さんの車に盗難車の手配が出ているらしいのです。

実は、山田さんは全く知らずに盗難車を買っていたのです。

取調べは翌日に行うことになり、警察官はこれまでにとった調書を読み上げたところ、山田さんは全てがでたらめなことに頭にきて、その調書を取り上げて破ってしまいました。

それにより公務執行妨害罪と公文書毀棄罪として現行犯逮捕されたのです。

裁判では、このような違法な取調べによる調書が公文書といえるかどうかが争われました。

一審では、懲役6ヶ月の実刑判決を言渡しましたが、控訴審では、少なくとも窃盗犯人の容疑が晴れて後の取調べは参考人である被告の意思を制圧し、身体の自由を拘束した実質的逮捕と同視しえる状況下で行なわれていたもので、調書は不完成であって、違法な取調べが続く限り刑法上の保護に値しないと逆転無罪を言渡しました。

しかし、最高裁は、本件供述録取書のように、これを作成する手段方法がたまたま違法であっても、文書としての意味内容を具備していれば、将来これを適法に使用することが予想される。

このような場合に備えて公務所が保管すべき文書であるとして公文書毀棄財は成立するものとしました。

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間違って振込まれた預金の払戻の罰則・・・

山田さんは、銀行で預金通帳を記帳してみたところ、300万円が振込まれていたのですが、心当たりはなく、しかし、天からいただいたお金だと思い込み、払い戻して使ってしまったところ、詐欺罪の犯人として起訴されてしまいました。

この事件について、詐欺罪が成立するかどうかが問題となります。

学説では、次の3つがあります。

①間違って振込まれたお金をもって、これを「遺失物」だと解釈しますと、お金を銀行から払い戻していただいてしまうと「遺失物横領罪」が成立すると考えるものです。

この遺失物横領罪だと、法定刑は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金・科料ということになります。

②間違って振込まれたお金をいただくのは、「横領罪」とし、横領罪は「自己の占有する他人の物」を領得する犯罪です。

自分の一存で自由にひきおろすことのできる口座のお金は、まさしく自己の占有する他人の物に該当しますから、横領罪の成立を認めると考えるものです。

横領罪の法定刑は5年以下の懲役です。

③詐欺罪が成立すると解釈し、つまり、本来は他人のお金ですから、払戻請求権がないにもかかわらず、自分の預金をおろすような顔をして銀行員を騙して受け取るのは、詐欺罪だと考えるのです。

詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役になります。

どの条文が適用されるかによって、罰則は異なるのです。

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