頭金の持ち逃げの損害賠償・・・

頭金の持ち逃げの損害賠償・・・

不動産会社の支店長に居住用マンションを勧められ、マンションを購入することに決め、頭金500万円を支払ったのですが、その支店長は契約締結の事実を会社に隠し、行方不明になってしまいました。

また、その不動産会社まで倒産したのですが、頭金の返還請求はできるのでしょうか?

不動産会社の支店長については、詐欺罪や業務横領罪が成立しますが、これは刑事上の問題であって、被害を受けた500万円は返ってきません。

不動産会社を相手に500万円の返還を求めることになりますが、会社も倒産しています。

残る法的手段として、会社の代表取締役に対する損害賠償請求が考えられますが、倒産した会社の代表取締役ですので、個人資産がなければ返済を受けることはできません。

支店長の犯罪行為につき会社の代表取締役みずから加担していたような場合には、刑事上共犯者になり、民事上の共同不法行為者として損害賠償義務を負うことになります。

そのような加担行為が認められないとしても、民法715条2項の代理監督責任が認められる可能性があります。

(使用者等の責任)
民法第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

会社に対する使用者責任を追及することができることについては問題ありませんが、その会社自体が倒産しているので回収は困難です。

そこで、使用者に代わる事業を監督する者として、代表取締役へ責任を追及します。

それ以外の取締役についても、取締役がその職務を行なうにつき悪意又は重大な過失があるときは、その取締役は第三者に対して連帯して損害賠償責任を負うとされています。

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えん罪事件の被害者の損害賠償・・・

有罪判決が確定し、長い間刑務所で拘束されていた人が再審無罪となった場合は、その人や家族の人たちは国に対し、損害賠償ができるのでしょうか?

国家賠償法1条では、「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行なうについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任する」とされており、故意又は過失に基づく違法行為の存在を被害者の方で主張・立証しなければならないとされています。

えん罪事件の被害者は、自分が無実であることを長い年月をかけて刑事裁判の場で訴え続け、勝利をつかんでも、更に新たな民事裁判を行なわなければならないのです。

これまで、再審無罪となった事件で国家賠償請求が認められて確定した事例はありません。

これには、判例上、次のような基準があって、相当厳格な要件が求められているからです。

①公訴の提起及び追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があったときは、検察官の公訴の提起及び追行は、国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為に当たらない。

②裁判官がした裁判につき違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が認められるためには、当該裁判官が、違法又は不当な目的をもって裁判したなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めえるような特別の事情がある場合であることを要する。

このような基準に従った上で、その違法行為を立証することは容易なことではなく、死刑判決から一転して再審無罪となったいわゆる松山事件の国家賠償訴訟でも、一審の仙台地方裁判所は請求を全面的に棄却しています。

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犯人逮捕に協力し死傷した補償・・・

太郎は、昔かから柔道をしており、熟練者でした。

あるとき、警察官に追跡されていた泥棒とばったり出くわし、後方から走ってくる警察官に「そいつを捕まえてくれ」といわれたため、とっさに泥棒に足払いをかけて、ねじ伏せたのですが、泥棒が隠し持っていたナイフで刺されてしまいました。

泥棒は逮捕されましたが、資産もない状態なのですが、何らの補償は受けられるのでしょうか?

太郎が泥棒に対し損害賠償請求権を有しますが、資力のない泥棒から賠償を受けることは難しそうです。

犯罪の発生に伴って、警察官から一般人が協力扶助を求められた場合に正当な理由なくこれに応じないと軽犯罪法1条8号に触れることになります。

しかし、自分の身の危険を冒してまで協力する義務はないといえます。

また、警察官が死傷した場合には、公務中の災害ということで補償を受けられます。

そこで、制定されているのが、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律があり、援助協力者が災害給付が受けられるのは、次の場合です。

①職務執行中の警察官がその職務執行上の必要により援助を求めた場合に、協力援助した者が災害を受けた場合

②殺人、傷害、強盗、窃盗など人の生命、身体、財産に危害が及ぶ犯罪の現行犯人がいて、かつ、その場に警察官などがいない場合に、現行犯逮捕や犯罪の被害者の救助に当たった者が災害を受けた場合

③水難、山岳における遭難、交通事故などにより人に生命の危険が及んでいる時に、又は及ぼうとしている時にみずからの危難をかえりみず人命の救助に当たった者が災害を受けた場合

この給付を行う期間及び給付の内容について、給付を行う機関は、①の場合は警察庁の警察官に援助協力した場合は国で、都道府県警察の警察官に協力した場合はその都道府県が当たることになっています。

②③の場合は、その現場の都道府県が行なうと定められています。

給付の内容ですが、療養給付、傷病給付、傷害給付、介護給付、遺族給付、葬祭給付とされています。

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不動産会社が合鍵でアパートに侵入・・・

アパートの一室を借りている不動産会社の従業員が、合鍵を使って、勝手に部屋に侵入しているところを隣人が目撃し教えてくれ、その後、隣人と共に警察に通報して逮捕されました。

被害はないのですが、勝手に入られて気持ちが悪く、不動産会社に慰謝料を請求したいのですが?

逮捕された犯人については、住居不法侵入が成立します。

その犯人を雇っていた不動産会社についても、民事上損害賠償が義務があります。

民法715条1項は、従業員が事業の執行につき、第三者に損害を与えたときには、使用者も原則として責任を負うものとし、これを使用者責任といいます。

(使用者等の責任)
民法第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

本件の場合、従業員が会社で保管していたアパートの合鍵を使って侵入した行為が、事業の執行につき行なわれたものかどうかが問題となります。

判例は、従業員の職務行為そのものには属しないが、その行為の外形から見て、職務の範囲の属すると認められる場合には使用者にも責任があるとしています。

本件の場合においても、犯人がアパートの部屋の合鍵を会社内から持ち出し、これを利用して侵入した行為は、従業員の職務行為ではありませんが、これを密接な関連を有するもので、外形上アパートの管理のために鍵を開けて部屋に入るという不動産会社の仕事と同じように見られることから、不動産会社には責任があるということになります。

使用者の方で従業員の選任及びその仕事の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害を生じたはずであるときは使用者に責任はないとされます。

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