質権とは・・・
質権とは、債権者が債権の担保として担保提供者からその目的物の占有を取り上げ、弁済が無かった場合、それを換価して債権の回収を図るものです。
担保設定者による担保目的物の利用を認めないので、実際の商取引においては債権質が多く利用されています。
債権質としては敷金、入居保証金、保険金に対するものが多く利用されています。
譲渡するときに証書を交付することが必要な商法上の有価証券などを質権の目的にするときには、証書の交付によって質権が効力を生じます。
敷金、保証金など証書が存在するとは限らない債権については証書を交付しなくても質権を設定することができます。
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譲渡担保とは・・・
◇譲渡担保とは
会社Aが、A所有の工作機械を担保に、Bから資金を借りようとする場合、目的物が動産であるために抵当権を設定できません。
質権を設定してしまうと、その工作機械をBに引渡さなければならなくなるので、仕事ができなくなります。
そのため、AはBにその工作機械を売った事にして、売買代金に相当する額を借入れ、その上で機械自体をBから賃借あるいは消費貸借して賃借料を支払い、借入金の全額を返済し終えた場合に、その工作機械をBから買い戻す、という契約を締結することを譲渡担保といいます。
譲渡担保は、譲渡担保権設定者があらかじめ所有権を移転する方法で担保しますが、方法としては、所有権の移転と同時に賃貸借あるいは消費貸借契約を締結し、譲渡担保権者に債権が存続するものと、所有権の移転は行うが、特に賃貸借・消費貸借契約は締結しないで、単に売買代金を全額返済すれば目的物を取り戻すことができるというのがあります。
譲渡担保では、債務者または第三者の目的物の所有権を債務者に移転して担保とする方法であり、債権者に目的物の占有を移さず、債権者は譲渡を受けた目的物を債務者の手許におき使用させます。
譲渡担保は、質権設定と異なり債務者が業務上必要な自己の財産をそのまま利用しながら債務の弁済ができるものです。
債務者が弁済をしないときは、裁判所を経ないで、優先弁済を受けることができます。
ただし、債権者には、清算義務があり、目的物を売却または評価して清算し残金があれば債務者に返還しなければなりません。
譲渡担保の問題としては、特有の対抗要件がないということです。
対抗要件とは、動産の場合には引渡し、不動産の場合は登記などです。
◇譲渡担保の内容
①譲渡担保の目的物
目的物は財産的価値があり、譲渡性があれば特に制限はありません。
動産・不動産のほか、債権も対象になります。
動産の集合物(*)や複数の債権(*2)も対象とすることができます。
②被担保債権
金銭債権以外の債権も対象になります。
既存債権だけでなく将来の債権も対象になります。
(*)集合譲渡担保とは
店舗、倉庫内に出たり入ったりしている商品を一括して担保にとるものを集合譲渡担保といいます。
構成部分が変動する集合動産であっても、種類、所在場所および量的範囲を指定するなどの方法により、目的物の範囲を特定することができれば譲渡担保の目的とすることができます。
倉庫内の商品は出入りを繰り返すものの、担保を実行する際に存在する商品が優先弁済の対象となります。
(*2)集合債権譲渡担保
集合債権譲渡担保は、債務者が第三者に対して有している複数の集合債権を債権譲渡という形で担保にとるものです。
集合債権とは、債務者が第三債務者に対して有している特定の債権と異なり、たとえば債務者が取引先に対して継続的に商品を販売し、そこから継続的に発生する売掛債権等を包括的に一つの債権として把握するもので、集合動産と同じ考えを債権に適用したものです。
その中の一部の債権は回収によって消えていき、その代わりにその後の取引によって新たな債権が加わってくるというように、内容的には変動すること前提として、全体として一つの集合債権と把握し、それを担保の目的物とします。
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所有権留保とは・・・
◇所有権留保とは
所有権留保とは、自社の販売商品を担保に取ることをいいます。
民法では、売買契約の成立により商品の所有権は買主に移りますが、売主、買主の合意により代金の支払いが完了するまで商品の所有権を売主に留保することができます。
買主が代金を支払わない場合、あるいは資産状態が悪化した場合などに、売主は売買契約を解除して商品を引き上げることができますが、解除の場合には契約を全部清算しなければなりません。
その手間をなくすのが所有権留保です。
売主は、引渡しを受けた目的物を任意に他に転売し、あるいは目的物を売主に帰属させて、処分代金ないし評価額を残代金債権に充当することができます。
法的に所有権留保は、形式上は売主に所有権は留保されていますが、その目的は代金債権の回収という担保目的です。
所有権留保には、特別の担保設定契約はありません。
売買契約書中に、目的物の所有権が買主に移転する時期を買主の代金完済時とする旨の特約が入れらることになります。
◇所有権留保の実行手続き
①割賦代金不払い、信用不安事由の発生
②期限の利益喪失
請求によって期限の利益が喪失する場合は内容証明郵便による通知が必要です。
③解除の通知
所有権留保の実行として売買契約の解除が必要と解されています。
この解除の意思表示は、相手に到達することが必要になるので、売買契約時に「無催告解除」を特約しておく必要があります。
また、「違約または信用不安が生じたときは、何ら意思表示を要せず、当然に目的物の返還義務が生じ、売主は目的物を残代金債務の弁済の全部または一部に充当できる」旨の特約をしておけば解除の意思表示は不要となります。
④目的物引渡請求と占有取得
債務者が、目的物の引渡しを拒む場合の占有の取得については、占有移転禁止の仮処分、債権者への引渡しを認める仮処分などが必要になることがあります。
⑤清算義務
売主は被担保債権の限度で目的物を支配しているにすぎないので、目的物の価額が被担保債権額を超過しているときは、その超過部分を買主に返還しておかなければなりません。
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代理受領・振込指定とは・・・
◇代理受領とは
債権者Aが、債務者Bから、BがCに対して持っている債権の取立ての委任を受け、これを相殺により自らの債権の弁済に充当する担保手段です。
この時、Cから代理受領の承認を受けるのが通常です。
Bは自ら取り立てない、Aとの委任契約を解除しないおよびCはBに支払わないという約束ができます。
代理受領を承認したCがBに弁済した場合には、CはAに対し不法行為となり、損害賠償義務を負うことになります。
◇振込指定とは
受領代理において、受領権限を有する債権者が銀行の場合、債務者がその銀行に有する口座への振込みを第三債務者に指定し、銀行は振り込まれた金銭の返還義務と債務者に対する貸金債権を相殺して債権の回収を図る手段を振込指定といいます。
法的には、代理受領と同じです。
代理受領と同じように、振込指定を承諾した第三債務者が債務者に弁済した場合には、第三債務者の債権者による不法行為となります。