債権とは・・・
商品を売ると、売主は買主に売買代金の支払いを請求することができます。
買主は、売主に商品の引渡しを請求することができます。
このようにある人が他の特定の人に金銭の支払いや商品に引渡しなど一定の行為を請求することが出来る権利を債権といいます。
債権を有する人を債権者といい、義務を負担する人を債務者といいます。
債権は、民法上①契約②不法行為③不当利得④事務管理によって発生します。
①契約
契約は「申込み」と「承諾」という、当事者双方の意思表示の合致により成立します。
貸した金を返せといえるのは、貸すとき・借りるときに期限が来たら返すという当事者の約束があったからです。
この約束のことを契約といい、契約により債権が発生します。
②不法行為に基づく損害賠償請求権
合意が無くても、一方に故意または過失があって他方に損害を発生させた場合は、被害者に損害賠償債権が発生します。
他人に故意または過失によって損害を発生させた場合を不法行為といいます。
③不当利得に基づく不当利得返還請求権
不当利得とは、正当な理由なしに財産的な利得を得て、これによって他人に損失を及ぼした人に対して、その利得の返還を命ずることです。
損失を受けた人から利得を得た人に対し、その利得の返還債権が発生することになります。
不当利得返還請求権は、下記の要件がある場合に認められます。
・相手が利得を取得したこと
・自分に損失が発生したこと
・相手の利得が自分の損失によって発生したこと
・相手の利得に法律上の原因がないこと
④事務管理に基づく費用償還請求権
事務管理は、法律が、親切な行為について、親切な行為をはじめた以上は、頼まれたときと同じように責任をもって世話をしてもらい、その代わり、その費用を請求することです。
◇商事債権と民事債権の違い
商事債権とは、商人間の取引に基づいて発生する債権をいいます。
また、当事者の一方にとって商行為である場合には、双方に商法が適用されます。
商事において保証は当然に連帯保証になります。
留置権とは、債権の弁済を受けるまで、債務者の所有物を債権者のもとに置いておくことができる権利をいいます。
民法上は、その物と債権の間に個別的な関連性がないと留置権は発生しません。
商人と商人との間で、双方のために商行為である行為によって生じた債権については、債務者の物を債権者が商行為によって占有していた場合、物と債権との間に個別的な関連性がなくても、弁済を受けるまでその物を留置することができます。
代理の方式に関し、民法では代理人が本人のためにすることを示して取引しないと代理の効果が発生しないのが原則です。
商行為の場合は、代理人が本人のためにすることを示さなかったときでも、原則として本人に対して生ずることになります。
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手形債権・小切手債権とは・・・
◇手形には、約束手形と為替手形があります。
約束手形とは、手形の発行者が、手形の受取人に対して、決められた金額を決められた期日に支払うことを約束した書面をいいます。
この際に、手形の発行者のことを振出人といいます。
現在、流通している手形のほとんどが約束手形になります。
為替手形とは、振出人が第三者に対して、手形の受取人へ決められた金額を支払うように委託する書面になります。
小切手とは、法定の必要的事項を記載し、振出人が取引銀行に対して自分の当座預金口座から支払ってくれるよう依頼する書面をいいます。
小切手を受け取った人は、支払銀行に呈示するか、自分の取引銀行に取立てを依頼すれば支払ってもらえます。
◇手形のメリットは下記のようなことになります。
<受取人のメリット>
①手形には、不渡りという制裁があるので、支払いにプレッシャーをかけることができます。
②不渡りの場合、手形訴訟を利用できます。
手形訴訟は、1回の手形審理のみで審理を終え、すぐに判決がでるため、訴えてから約2ヵ月後には強制執行できる仮執行宣言付判決を取得できます。
手形債権は、通常訴訟でしか判決をもらえない一般の売掛金債権より早く強制執行ができることになります。
③借用証書よりも印紙税が安いです。
<第三者のメリット>
手形を取得する第三者は、人的抗弁(*)が切断され、善意取得(*2)で保護されます。
(*)手形の特徴として、手形は手形が発行された原因とは切り離して、支払いを受けることができます。
しかし、その特徴を貫くと、不利益を被ったり、不当に得をする人が出てきます。
そこで、一定の事由がある場合には、手形の支払いを拒絶できるようになっています。
これを手形抗弁といいます。
この手形抗弁には、物的抗弁と人的抗弁があります。
物的抗弁とは、所持人が誰であっても主張でき、手形要件の欠けていること、除権決定で手形が無効になっていること、手形債務が時効消滅していることなどがあります。
人的抗弁とは、特定の所持人のみに主張でき、原因関係の無効・消滅、裏書の不連続、支払いの猶予、手形譲渡禁止の特約などがあります。
原因関係の無効、取消し、解除等により手形の支払いが拒絶されると第三者は損害を被ることになります。
人的抗弁の切断とは、それらの事実を知らない第三者に、原因関係の消滅を理由に支払いを拒絶できないとしていることです。
(*2)善意取得とは、裏書の連続している手形を、盗取者や拾得者などの無権利者から取得した人は、その取得につき善意でかつ重大な過失がなければ、手形上の権利が認められることをいいます。
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約束手形・小切手の記載事項・・・
◇手形は、法定の必要事項を記載し、振出人が署名または記名押印しなければなりません。
約束手形用紙は、法律上はどのような用紙を使っても有効ですが、現行取引上は、全国銀行協会連合会によって統一手形用紙が決められ、使用を義務付けられています。
この用紙は、銀行に当座勘定口座を開設すると交付されます。
手形・小切手には必ず記載しないといけない必要的記載事項と記載するとはじめて法律的に有効になる有益的記載事項と記載することによって手形・小切手が無効になる有害的記載事項があります。
また、手形番号・小切手番号や、「商品受取済」など、記載があっても法的に効果が無く、手形自体も無効になることの無い事項を無益的記載事項といいいます。
<必要的記載事項>
①約束手形であることを示す文言
②支払いを約束する文言
「上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引き替えにお支払いいたします」等
③手形金額
チェックライター、漢数字で記載しなければなりません。
④満期日
⑤支払地
⑥受取人の名称
⑦振出日
⑧振出地
⑨振出人の署名
法人の場合は、法人名、代表者の肩書、代表者名と銀行届出印または記名押印。
<有益的記載事項>
①第三者方払文句
支払場所や支払担当者を記載します。
②指図禁止、裏書禁止
「受取人に限り支払う」などの文言を加えると、手形が裏書によって譲渡されることを防止することができます。
③拒絶証書不要の文句
手形の所持人が振出人から支払いを拒絶した場合、その事実を公証人に証明してもらう必要がありますが(手形法46条1項、77条1項4項)、「拒絶証書不要」の文言があれば、拒絶証書がなくても裏書人に遡及できます。
<有害的記載事項>
「工事完成を条件に代金を支払う」などと記載すると、必要的記載事項の単純な支払いの約束に反することになり、手形としての効力がなくなります。
(*)必要的記載事項の一つでも欠けた場合、手形は無効になります。
しかし、実務上は「受取人」「振出日」「支払期日」「手形金額」の全部または一部が記入されないものも流通しています。
そして、このような不完全な手形も有効に扱われています。
白地手形とは、このような手形のことをいいます。
ただし、取立時や訴訟の提起時には完全な手形になっていなければなりません。
白地部分は受取人が補充するのが一般的ですが、振出人の意思に反する記載をしても、振出人は第三者に無効を主張することはできません。
<小切手の必要的記載事項とは>
①小切手であることを示す文言
②支払いを委託する文言
「上記金額をこの小切手と引替えに持参人へお支払いください」
③小切手金額
④支払人
小切手用紙を交付した銀行の支店名
⑤支払地
⑥振出日
⑦振出地
⑧振出人の署名
統一小切手用紙には、有益的記載事項として「拒絶証書不要」の文句が記載されています。
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