他社商品の引揚げ(代物弁済)とは・・・
◇代物弁済による商品引揚げ
他社商品については、所有権留保、商品の引揚げ、返品処理のいずれもできないので、代金の代わりに他社商品で決済する旨の代物弁済の合意があれば引揚げることができます。
代物弁済とは、本来の給付の代わりに別の給付をもって行う弁済をいいます。
代物弁済は、債務者が倒産に瀕したとき、債権者がいち早く債務者のところへ駆けつけて商品などを持ち出すという形で行うことにより機能を発揮します。
代物弁済は、下記の要件がそろっているときに行うことができます。
①債権が存在すること
②本来の給付と異なる給付がなされたこと
③本来の給付に代えてなされたこと
④当事者の合意があること
本来の給付と代物弁済としてなされた給付が価値において釣り合っていることは必要ありません。
不動産で代物弁済をする場合には、清算義務があります。
◇代物弁済の効果
①債務の消滅
債務が消滅するためには代物弁済の合意だけでは足りず、もとの給付に代えて他の給付が現実になされる必要があります。
不動産の場合は、移転登記が必要になります。
債務の一部だけを消滅させる代物弁済も可能です。
②目的物に欠陥があった場合
債務者責任が発生します。
◇契約解除による商品引揚げ
商品引揚げ条項や代物弁済に基づき商品を引揚げる方法は詐害行為取消権、否認権の対象となりますが、売買契約を解除し、物権を引揚げるときは、債務者の行為が介在しないので、詐害行為取消権、否認権行使の対象となりません。
解除をするには、債務不履行がなければなりません。
しかし、自分の債権について履行期限がきていなくても、他の債権者に対しては手形の不渡りを出しているような場合などに解除できるようにしておかないと不都合が生じます。
そのために、債務不履行以外の事由で解除できる場合をあらかじめ契約書に記載しておけば、その条項により解除権を行使することができます。
この解除権を行使しても商品の引揚げには承諾が必要なので、無断で持ち出すと窃盗罪、住居侵入罪に問われます。
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仮処分とは・・・
◇仮処分とは
所有権留保または譲渡担保権を行使しても、相手方の手許にある物件を相手が引き渡さない場合は、訴訟によりその引渡を求めることになります。
しかし、訴訟では時間がかかり、相手がそれを処分したり、他の債権者が持ち去る可能性もあります。
そのため、裁判所を通じて自社物件を仮に引揚げる断行の仮処分、債務者の所から他に移転できないようにする占有移転禁止の仮処分の手続きがあります。
これらを仮処分といいます。
これは裁判所に仮処分の申立をなし、担保を積んで認めてもらいます。
仮処分は、仮差押とならんで民事保全といわれています。
仮処分は、物の引渡請求権を保全するものです。
◇処分禁止の仮処分とは
処分禁止の仮処分は、特定物についての給付請求権の実現を保全する、債務者の目的物に対する法律上の処分を禁止する不作為命令を内容とするものです。
同じ目的で目的物の占有の移転を禁止する占有移転禁止の仮処分と並んで、係争物に関する仮処分になります。
処分禁止の仮処分は下記になります。
①所有権に基づく動産の処分禁止の仮処分
②不動産の登記請求保全のため
二重売買等、裁判の判決を待つまでの不動産の登記請求権を保全するための仮処分です。
③抵当権設定登記保全のため
抵当権設定契約を締結しながら、その登記をしない債務者に対しては、裁判をしなければなりません。
しかし、その裁判の間に、債務者が第三者にその不動産を売却したり、先に抵当権を設定される可能性がでてきます。
その危険を回避するための、処分禁止の登記と保全仮登記を併用する順位保全型仮処分をする必要があります。
④建物収去土地明渡請求権保全のため
◇占有移転禁止の仮処分
占有移転禁止の仮処分は、物の引渡、明渡の請求権を保全するためのものです。
占有移転禁止の仮処分が発令され、執行されると、その後の占有者に対し、債務者に対する債務名義をもって新占有者に対する執行文の付与を受けて、強制執行をすることができます。
占有移転禁止の仮処分の執行の申立先は、目的物の所在地を管轄する地方裁判所になります。
占有移転禁止の仮処分命令には下記の内容があります。
①債務者に対し目的物の占有の移転を禁止する
②目的物の占有を解いて執行官に引き渡す
③執行官に目的物を保管させる
④以上の公示
⑤債務者保管、もしくは執行官保管
◇断行の仮処分
断行の仮処分とは、仮の地位を定める仮処分のうち、金銭の給付、物の引渡・明渡を命ずる仮処分をいい、目前に急迫した危険を除去するための暫定処置として、判決に基づき強制執行がされたと同一の状態を仮に実現させるものです。
この命令を出すためには、原則債務者が出頭して審尋を行わなければなりません。
断行の仮処分のための保全の必要性としては、債権者に回復しがたい著しい損害を避ける必要性があることが要件になります。
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債権譲渡とは・・・
◇債権譲渡の対抗要件
債権譲渡とは、合意による債権の譲渡をいいます。
債権譲渡の債務者に対する対抗要件としては、無方式の通知・承諾を要求し、第三者に対する対抗要件としては、確定日付ある証書による通知・承諾を定めています。
通知とは、債権が譲渡人から譲受人に譲渡されたという事実を債務者に知らせる行為で、債権譲渡の効力を生じさせようとする意思表示をいいます。
代理人によって通知することもでき、譲受人が譲渡人を代理した通知も有効です。
承諾とは、債権譲渡の事実を知っていることを表示することをいいます。
確定日付とは、証書の作成日について証明するものです。
公正証書、確定日付の付与、内容証明郵便などがあります。
◇第三者対抗要件
債権が二重に譲渡された場合の優劣基準は、債権譲渡通知の到達時が基準とされます。
債権譲渡通知が同時に到達の場合、債務者は同順位譲受人が他にも存在することを抗弁として弁済を拒むことはできません。
到達の前後が不明の場合は、それぞれの通知が同時に到達したものと扱われることになります。
債権譲渡の通知が同時に到達したときに、債務者が供託した場合には、債権額に応じて按分した額の供託金還付請求権をそれぞれの譲受人が分割取得することになります。
◇将来債権の譲渡
将来発生する債権も、現時点で譲渡することができます。
将来債権を譲渡するためには、将来の一定の期間の始期と終期を明確にするなど、譲渡の目的となる債権を特定する必要があります。
◇債権譲渡の優劣
債権譲渡と物上代位の関係としては、物上代位の目的となっている債権の譲渡を受け対抗要件を具備しても、その後、物上代位権者が、自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるとされています。
債権譲渡と相殺の関係としては、債権譲渡があった時に債務者が譲渡人に対し反対債権を持ってさえいれば、弁済期が譲渡債権の弁済期よりも後で、譲渡通知の後に弁済期の到来するものであっても、相殺敵状になれば、譲渡された債権の債務者は相殺をすることができるとされています。
◇譲渡禁止の特約
債権者と債務者間で、その債権について、譲渡を禁止する特約がある場合、その譲渡禁止特約の存在を知らなかった善意の譲受人には譲渡禁止特約があることを対抗できません。
譲受人が譲渡禁止の特約を知らなかった場合は、債権譲渡は有効になります。
ただし、譲受人に重過失がある場合は債権譲渡は無効です。
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相殺とは・・・
◇相殺とは
相殺とは、双方が互いに同じ種類の債務を負担している場合に、その債務を重なる部分で消滅させることをいいます。
相殺によりそれぞれの債権が対等額において、つまり債権額の重複する部分の債権が消滅します。
その消滅時期は、相殺をするのに適した状態の時である相殺適状に遡ります。
相殺の効果を遡及させる理由は、意思表示の時に効果が生ずるとすると、両債権で遅延損害金の利率が異なる場合は不公平な結果となるためです。
◇相殺の方法
相殺ができるのは、相殺適状にあること、相殺禁止事由がないことが要件になります。
相殺適状とは、下記の条件がそろっていることをいいます。
①共に債権を有すること
②債権が同種の目的に有すること
③両債権が共に弁済期にあること
④性質上の相殺が許されるものであること
また、相殺禁止事由としては、下記の場合になります。
①当事者の反対の合意がある場合
②性質上相殺できない、受動債権とできない場合
不法行為による損害賠償債務相殺契約は有効です。
性質上相殺できないものとしては、差押禁止債務、扶養請求権、給料等、労災の補償を受ける権利、差押・仮差押を受けた債務などがあります。
③抗弁権付債権は自働債権とすることはできません。
そして、相殺は、一方的な意思表示により行います。
実務では、意思表示の到達時を明確にするために配達証明付内容証明郵便で行っています。
意思表示に条件、期限をつけることはできないとされています。
◇相殺契約
相殺の方法や要件、効果について当事者間で特別の合意をすることができます。
条件をつけることや、損害賠償債務との相殺もできます。
また、当事者以外の第三者に対する債務とでも相殺できます。
この合意を相殺契約といいます。
◇相殺予約
相殺の予約として、一定の事由が発生した場合に、意思表示を待たずに、当然に相殺の効果が発生する旨を定める場合である停止条件付相殺契約や、法定相殺が可能な相殺適状の発生を容易にする特約を定めることができます。
債権者代位権とは・・・
◇債権者代位権とは
債権者代位権とは、債務者が自らの権利を行使しないで責任財産の減少を放任するときに、債権者が債務者に代わってその権利を行使することによって、債務者の責任財産を保全する権利をいいます。
そして、債務者に取り戻された財産を強制執行します。
債権者代位権は、債務者の責任財産を保全するためなので、一般債務者の金銭債権が対象になりますが、現在では、登記請求や賃借権に基づく妨害排除に利用することも認められています。
◇債権者代位権の要件
債権者代位権を行使するためには、下記の要件が必要になります。
①金銭債権を有していること
②履行期が到来していること
③債務者が無資力であること
④債務者が権利を行使しないこと
一身専属的な権利の場合は、債権者代位権を行使することはできません。
慰謝料請求権などがこれに当たります。
◇債権者代位権の行使方法
被保全債権の期限が到来していないときは、裁判所の許可を得たうえでしか行使できませんが、期限が到来しているときは裁判外でも行使できます。
詐害行為取消権は必ず裁判手続きで行使しなければなりませんが、債権者代位権は訴えを起こさなくても行使することができます。
ただし、第三債務者が支払わないときは、その第三債務者に対して訴訟を提起することになります。
そして、債権者が債権者代位権を行使したその効果は直接に債務者に帰属します。
しかし、金銭の場合には、相殺によって優先弁済をすることができます。