会社の能力と目的の範囲・・・

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会社の能力と目的の範囲・・・

最判昭和27年2月15日(家屋明渡請求事件)民集6巻2号77頁

<事実の概要>

A社団は、A家の家族とその主要な親戚を社員として同家の全財産を会社財産として大正8年に設立された合資会社であり、不動産その他の財産を保存しその運用利殖を計ることを会社の目的としていた。

昭和17年にA社の代表社員であるBが死亡し、その家督相続人Y1が新たに有限責任社員となり、A社の社員はこのY1と従来からの社員CD(いずれも無限責任社員)の3名となった。

その後昭和19年にCはA社の代表者と称して他の社員に無断でA社が所有しY1Y2らが現に居住する家屋をその代理人を通じてXに売却した。

そこで、XがY1Y2らに対して、家屋をA社から譲り受けたことを主張して、家屋の明け渡しを請求したのが本件である。

第1審はXの請求棄却。

第2審も、Cが会社財産である本件建物をXに売却することは、定款に定められた会社の目的の範囲内に属する行為でないのはもちろん、売却につき他の社員の同意も得ておらず、かつ、当時A社の事業を遂行するうえで本件建物を売却する必要はなかったのであるから、A社は本件建物を売却する権能はなく、したがって、本件建物の売却は無効であるとして、控訴を棄却した。

Xは、上告して、原審判決はA社の低感情の目的を狭く解釈しすぎており、不動産の売却もA社の目的の範囲内に含まれると解するべきであると主張した。

<判決理由>破棄差戻し

「A社の定款に定められた目的は不動産、その他の財産を保存し、これが運用利殖を諮ることにあることは原判決の確定するところであるが、このことからして、直ちに原判決のごとく本件建物の売買はA社の目的の範囲外の行為であると断定することは正当でない。

財産の運用利殖を計るためには、時に既有財産を売却することもあり得ることであるからである。

(このことは、A社は不動産その他財産の保存、運用、利殖を計るものであって不動産の外有価証券等の財産を含むことは勿論であるが、有価証券について考えれば、既有の有価証券を売却することが、その運用、利殖の一方法であることは疑いのないところであってその理は不動産についても、別異であるとはいえない。)

のみならず、仮に定款に記載された目的自体に包合されない行為であっても目的遂行に必要な行為は、また、社団の目的の範囲に属するものと解すべきであり、その目的遂行に必要なりや否かは、問題となっている行為が、会社の定款記載の目的に現実に必要であるかどうかの基準によるべきではなくして定款の記載自体から観察して、客観的に抽象的に必要であり得べきかどうかの基準に従って決すべきものと解すべきである。」

「原判決は当時、A社の目的たる事業を遂行するのに本年建物を売却する必要があった事情はX提出の全証拠によるも認められないと説示しているのであるが、本件建物の売却がA社の目的の範囲に属するかどうかを判断するには、かかる売却行為がA社目的遂行に現実に具体的必要であったかどうかを基準とすべきでないことは前述のとおりである。

けだし、当該行為がその社団にとって、目的遂行上、現実に必要であるかどうかということのごときは社団内部の事情で第三者としては、到底これを適確に知ることはできないのであって、かかる事情を調査した上でなければ、第三者は安じて社団と取引することができないとするならば到底取引の安全を図ることはできないからである。」

「しかして、本件建物の売却もこれを抽象的に客観的に観察すればまた、A社の定款所定の目的たる財産の保存、運用、利殖のために必要たり得る行為であることは云うまでもないのであるから原判決が前記の理由により本件建物の売却を以てA社の目的の範囲外にありとしこれを前提としてA社は本件建物をXに売却する権能はないものとしたのはあやまりである。

(原判決は、さらに、他の社員の同意の欠缺を云為するけれども、既に本件建物の売却がA社の目的の範囲内にありとする以上、他の社員の同意のないということは、無限責任社員の代理権に対する制限となるは格別それがために、原判決説示のごとくA社に本件建物売却の権能なしとすることはできない。)」

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会社の政治献金・・・

最大判昭和45年6月24日(取締役の責任追及請求事件)
民集24巻6号625頁、判時596号3頁、判夕249号116頁

<事実の概要>

鉄鋼の製造販売会社であるA株式会社の代表取締役Y1Y2は、昭和35年に、同社を代表して自民党に対して350万円の政治資金を寄付したところ、A社の株主Xは、定款の目的外の行為であり、定款違反及び取締役の忠実義務違反にあたるとして、会社の被った損害の賠償を求めて株主代表訴訟を提起した。

第1審ではXが勝訴したが、控訴審ではXが敗訴した。

Xは上告した。

<判決理由>上告棄却。

「会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または関節に必要な行為であれば、すべてこれに包含ものと解するのを相当とする。

そして必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であったかどうかをもってこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならないのである。(最高裁昭和27年2月15日第二小法廷判決・民集6巻2号77頁、同30年11月29日第三小法廷判決・民集9巻12号1866頁参照)

ところで、会社は、一定の営利事業を営むことを本来の目的とするものであるから、会社の活動の重点が、定款所定の目的を遂行するうえに直接必要な行為に存することはいうまでもないところである。

しかし、会社は、他面において、自然人とひとしく、国家、地方公共団体、地域社会その他(以下社会等という。)の構成単位たる社会的実在なのであるから、それとしての社会的作用を負担せざるをえないのであって、ある行為が一見定款所定の目的とかかわりがないものであるとしても、会社に、社会通念上、期待ないし要請されるものであるかぎり、その期待ないし要請にこたえることは、会社にとっても、一般に、かかる社会的作用に属する活動をすることは、無益無用のことではなく、企業体としての円滑な発展を図るうえに相当の価値と効果を認めることもできるのであるから、その意味において、これらの行為もまた、間接であっても、目的遂行のうえに必要なものであるとするを妨げない。

災害救援資金の寄付、地域社会への財産上の奉仕、各種福祉事業への資金面での協力などはまさにその適例である。

会社が、その社会的役割を果たすために相当な程度のかかる出捐(しゅつえん)をすることは、社会通念上、会社としてむしろ当然のことに属するわけであるから、株主その他の会社の権利能力の範囲内にあると解しても、なんら株主等の利益を害するおそれはないのである。

以上の理は、会社が政党に政治資金を寄付する場合においても同様である。

憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。

そして同時に、政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、政党のあり方いかんは、国民としての重大な関心事でなければならない。

したがって、その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄付についても例外ではないのである。

論旨のいうごとく、会社の構成員が政治的信条を同じくするものでないとしても、会社による政治資金の寄付が、特定の構成員の利益を図りまたその政治的志向を満足させるためでなく、社会の一構成員の利益を図りまたその政治的志向を満足させるためでなく、社会の一構成単位たる立場にある会社に対し期待ないし要請されるかぎりにおいてなされるものである以上、会社にそのような政治資金の寄付をする能力がないとはいえないのである。

要するに、会社による政治資金の寄付は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認める限りにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである。」

「会社が、納税の義務を有し自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべき理由はない。

のみならず、憲法3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解するべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。

政治資金の寄付もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄付と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。

論旨は、会社が政党に寄付をすることは国民の参政権の侵犯であるとするのであるが、政党への寄付は、事の性質上、国民個々の選挙権その他の参政権の行使そのものに直接影響を及ぼすものではないばかりでなく、政党の資金の一部が選挙人の買収にあてられることがあるにしても、それはたまたま生ずる病理的現象に過ぎず、しかも、かかる非違行為を抑制するための制度は厳として存在するのであって、いずれにしても政治資金の寄付が、選挙権の自由なる行使を直接に侵害するものとはなしがたい。

会社が政治資金寄付の自由を有することは既に説示したとおりであり、それが国民の政治意思の形成に作用することがあっても、あながち異とするには足りないのである。

所論は大企業による巨額の寄付は金権政治の弊を産むべく、また、もし有力株主が外国人であるときは外国による政治干渉となる危険もあり、さらに豊富潤沢な政治資金の腐敗を醸成するというのであるが、その指摘するような弊害に対処する方途は、さしあたり、立法制作にまつべきことであって、憲法上の公共の福祉に反しない限り、会社といえども政治資金の寄付の自由を有するといわざるを得ず、これをもって国民の参政権を侵害するとなす論旨は採用の限りではない。」

「商法254条の2の規定は、同法254条3項民法644条に定めるように、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものとは解することができない。

ところで、もし取締役が、その職務上の地位を利用し、自己または第三者の利益のために、政治資金を寄付した場合には、いうまでもなく忠実義務に反するわけであるが、論旨は、Y1Y2に、具体的にそのような利益をはかる意図があったわけではなく、一般に、この種の寄付は、国民個々が各人の政治的信条に基づいてなすべきものであるという前提に立脚し、取締役が個人の立場で自ら出捐(しゅつえん)するのでなく、会社の機関として会社の資産から支出することは、結果において会社の資産を自己のために費消したのと同断だというのである。

会社が政治資金の寄付をなしうることは、さきに説示したとおりであるから、そうである以上、取締役が会社の機関としてその衝にあたることは、特段の事情のない限り、これをもって取締役たる地位を利用した、利益追求の行為だとすることのできないのはもちろんである。

論旨はさらに、およそ政党の資金は、その一部が不正不当に、もしくは無益に、乱費されるおそれがあるにもかかわらず、本件の寄付に際し、Y1Y2はこの事実を知りながら敢て目をおおい使途を限定するなど防圧の対策を講じないまま、漫然寄付をしたのであり、しかも、取締役会の審議すら経ていないのであって、明らかに忠実義務違反であるというのである。

ところで、右のような忠実義務違反を主張する場合に合っても、その挙証責任がその主張者の負担に帰すべきことは、一般の義務違反の場合におけると同様であると解すべきところ、原審におけるXの主張は、一般に、政治資金の寄付は定款に違反しかつ公序を紊するものであるとなし、したがって、その支出に任じたY1Y2は忠実義務に違反するものであるというにとどまるのであって、Y1Y2の具体的行為を云々するものではない。

もとよりXはその点につき何ら立証するところがないのである。

したがって、論旨私的の事実は原審の認定しないところであるのみならず、所論のように、これを公知の事実と目すべきでないことも多言を要しないから、Y1Y2の忠実義務違反をいう論旨は前提を欠き、肯認することができない。

いうまでもなく取締役が会社を代表して政治資金の寄付をなすにあたっては、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄付の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内において、その金額等を決すべきであり、右の範囲を超え、不相応な寄付をなすがごときは取締役の取締役の忠実義務に違反するというべきであるが、原審の確定した事実に即して判断するとき、A社の資本金その他所論の当時における純利益、株主配当金等の額を考慮にいれても、本件寄付が、右の合理的な範囲を超えたものとすることはできないのである。」

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法人格の否認・・・

最判昭和44年2月27日(建物明渡請求事件)
民集23巻2号511頁、判時551号80頁、判夕233号80頁

<事実の概要>

本件店舗の所有者であるXは、Y株式会社との間で、昭和36年2月に、5年間の本件店舗賃貸借契約を締結した。

Y社は電気器具類販売業を営んでいたが、株式会社とはいっても税金対策上会社組織にしたにすぎず、実質的にはその代表取締役Aの個人企業であり、Xとしては、電気屋が会社組織か個人企業か明確に認識せずに、要するにAと契約したものであった。

昭和41年初頭、XがAに対して本件店舗を明渡すよう申し入れたところ、Aは同年8月19日までに明渡す旨の念書を差し入れた。

しかし、この期日を過ぎても明渡さなかったため、XはAを被告として建物明渡請求訴訟を提起した。

この訴訟継続中、裁判所の勧告によりX・A間で、本件店舗を明渡す等の和解が成立した。

しかし、Aがこの和解成立後に、和解の当事者はAであり、Y社が使用している部分は明渡さないと主張したため、XはY社を被告として本件建物の明渡等を求めて本件訴訟を提起した。

第1審・第2審ともXが勝訴した。

Y社は、AとY社とは一見して異なる名称であり、本件和解はY社を除外してXとA個人との間に成立したものであり、原判決はAとY社を混同していると主張して、上告した。

<判決理由>上告棄却

「およそ社団法人において法人とその構成員たる社員と法律上別個の人格であることはいうまでもなく、このことは社員が一人である場合でも同様である。

しかし、およそ法人格の付与は社会的に存在する団体についてその価値を評価してなされる立法政策によるものであって、これを権利主体として表現せしめるに値すると認めるときに、法的技術に基づいて行なわれるものである。

したがって、法人格が全くの形骸に過ぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用されるが如き場合においては、法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らして許すべからざるものというべきであり、法人格を否認すべきことが要請される場合を生ずるのである。

そして、この点に関し、株式会社については、特に次の場合が考慮されなければならないのである。

思うに、株式会社は準則主義によって容易に設立され得、かつ、いわゆる一人会社すら可能であるため、株式会社形態がいわば単なるわら人形に過ぎず、会社即個人であり、個人即会社であって、その実質が全く個人企業と認められるが如き場合を生じるのであって、このような場合、これと取引する相手方としては、その取引がはたして会社としてなされたか、または個人としてなされたか判然としないことすら多く、相手方の保護を必要とするのである。

ここにおいて次のことが認められる。

すなわち、このような場合、会社という法的形態の背後に存在する実体たる個人に迫る必要を生じるときは、会社名義でなされた取引であっても、相手方は会社という法人格を否認して法人格のないと同様、その取引をば背後者たる個人の行為であると認めて、その責任を追求することを得、そして、また、個人名義でなされた行為であっても、相手方は敢て商法504条をまつまでもなく、直ちにその行為を会社の行為であると認め得るのである。

けだし、このように解しなければ、個人が株式会社形態を利用することによって、いわれなく相手方の利益が害されるおそれがあるからである。

今、本件についてみるに、・・・Y社は株式会社形態を採るにせよ、その実体は背後に存するA個人に外ならないのであるから、XはA個人に対して右店舗の賃料を請求し得、また、その明渡請求の訴訟を提起し得るのであって(もっとも、訴訟法上の既判力については別個の考察を要し、Aが店舗を明渡すべき旨の判決を受けたとしても、その判決の効力はY社には及ばない)、XとAとの間に成立した前示裁判上の和解は、A個人名義にてなされたにせよ、その行為はY社の行為と解し得るのである。」

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商業登記の対抗力・・・

最判昭和35年4月14日(約束手形金請求事件)
民集14巻5号833頁、判時221号30頁、金判529号78頁

<事実の概要>

YはAとの間で運動靴の売買契約を締結し、昭和27年5月29日、その代金支払の方法として、受取人欄白地のまま、「株式会社甲野商店商事部代表取締役Y」名義で、①支払期日昭和27年8月7日、手形金額62万5,000円、②支払期日昭和27年8月22日、手形金額75万円とする2通の約束手形(以下、「本件手形」という。)を振り出した。

Aが売買目的物の引渡しをしなかったので、YはAに対し売買契約の解除を通告し、本件手形の返還を請求したが、Aはこれに応じず、債務の支払に充てるため、本件手形を受取人欄白地のままBに交付して譲渡した。

Bは本件手形の受取人欄に自己の氏名を補充してXに白地式裏書により譲渡した。

Xは取立委任の趣旨で本件手形をCに白地式裏書により譲渡したが、支払期日に支払が拒絶されたため返却され、Xが本件手形を所持していた。

ところで「株式会社甲野商店」は、神奈川県藤沢市所在の訴外「株式会社甲野洋服店」が、昭和27年4月30日に商号を変更したものであり、同時にYがその代表取締役に就任したものであるが、当該商号変更・代表取締役就任の登記は、本件手形の振出時はもとより満期当時においてもなされておらず、昭和27年9月15日に至って初めてなされたのであった。

Xは、本件手形取得当時、上記商号変更の事実を知らなかった。

また、XがYを害することを知って本件手形を取得したという事情もなかった。

Xは、株式会社甲野商店なる会社は存在しないとして、Yに対し本件手形の手形金額相当額の支払を求めて本件訴訟を提起した。

原審は「Yは株式会社甲野商店の存在をもって善意のXに対抗し得ないものというべく、したがってYは現実の手形振出人としてその責に任ずべきものといわなければならない」として、Xの請求を認容した。

Yは上告した。

<判決理由>破棄自判、請求棄却

「右のような事実関係から観れば、株式会社甲野商店は、本件各手形の振出、満期の当時並びにXがこれを取得した当時、いまだその商号の変更並びに代表取締役の氏名につき登記をしていなかったとはいえ、株式会社甲野洋服店と、その実質を同じくする会社として、現実に存在していたものとみるのが相当であり、また原判決もそのように認定したものと解される。

しかも、Yはその代表取締役であったというのであるから、本件各手形は、右実在する会社の代表者であるYが、その代表権限に基づいて振り出したものとみるのが当然であって、したがって右各手形を取得したXは、その当然の権利として右会社に対し、本件各手形上の責任を問うことを得べき筋合いであるといわなければならない。

しかるに原判決は、当時同会社はいまだ右商号の変更並びに代表者就任の事実を登記していなかったし、またXも全然その事実を知らなかったのであるから、Yは右会社の存在を以てXに対抗することを得ない筋合いであるとし、同会社が当然に負うべき前記各手形上の責任のほかに本来存在しようのないYの責任を肯定し、Xらの本訴請求を認容するに至ったのは、ひっきょう手形法8条および商法12条の解釈適用を誤ったものであるというべく、この誤りは原判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨はこの点において理由があり、原判決はその余の論旨に対する判断をまつまでもなく破棄を免れないものといわざるを得ない。」

原審の確定した事実によればXの請求は失当であるから、第1審判決も取消して、Xの請求を棄却すべきものとする。

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