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代理出席を含む全員出席総会の決議の効力・・・
最判昭和60年12月20日(敷金返還請求事件)
民集39巻8号1869頁、判時1180号130頁、判夕583号68頁
<事実の概要>
X社は、株主数10名の株式会社である。
昭和47年の設立以来、その代表取締役はYであり、取締役はYとAを含めて6名であった。
昭和48年の最初の任期満了後も、後任者が選出されないまま、前商法258条1項及び261条3項により、それぞれの代表取締役・取締役としての権利義務を引き続いて有していた。
昭和50年6月、X社はYとの間で、本件土地建物に関する賃貸借契約を締結し、Yに敷金を交付した。
同年8月、Aは取締役会(①会議)を招集し、Yを代表取締役から解任してAを新たな代表取締役とする決議を行った。
そして、Aは、X社を代表してX・Y間の賃貸借契約を合意解約し、Yに対して本件土地建物を明渡し、敷金の返還をするよう催告したが、Yがこれに応じなかったため、AはX社を代表し、敷金返還を求めて提訴した。
Aが行った合意解約及び敷金返還の催告は、原審ではAには①会議を招集する権限がないことを理由に役員選任決議が不存在であり、Aは代表取締役とは認められないため無権代理行為と評価されている。
第1審継続中の昭和56年5月に、Aは、役員選任決議等を会議の目的と定めたX社の株主総会(②会議)を招集したが、その際、会議の目的たる事項を了知して委任状を作成しこれに基づいて選任された代理人を出席させた株主も含め、X社の株主10名全員が開催に同意し、出席した。
この会議において、Yを除いたAらを取締役に選任する旨の決議がなされ、選任された取締役により開催された取締役会(③会議)でAが代表取締役に選任された。
この後、Aが行った合意解約及び敷金返還催告が追認され、X社がYに対して追認の意思表示をした。
第1審ではX社が敗訴したが、原審では、①会議の取締役会決議を無効としつつ、②会議は全員出席株主総会として有効として、③会議における選任決議の効力を認め、Aの代表権を有効なものと判断した上で、請求を認容した。
Yは上告した。
<判決理由>上告棄却。
「商法が、231条以下の規定により、株主総会を招集するためには招集権者による招集の手続を経ることが必要であるとしている趣旨は、全株主に対し、会議体としての機関である株主総会の開催と会議の目的たる事項を知らせることによって、これに対する出席の機会を与えるとともにその議事及び議決に参加するための準備の機会を与えることを目的とするものであるから、招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であっても、株主総会の権限に属する事項につき決議をしたときには、右決議は有効に成立するものというべきであり・・・、また、株主の作成にかかる委任状に基づいて選任された代理人が出席する事により株主全員が出席したこととなる右総会において決議がされたときには、右株主が会議の目的たる事項を了知して委任状を作成したものであり、かつ、当該決議が右会議の目的たる事項の範囲内のものである限り、右決議は、有効に成立するものと解するべきである。」
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総会開催禁止の仮処分違反の効果・・・
浦和地判平成11年8月6日(株主総会決議不存在確認、取締役会決議無効確認等請求事件)
判夕1032号238頁、金判1102号50頁
<事実の概要>
Xは、Y株式会社の株主であり取締役である。
Aは平成10年12月12日、臨時株主総会招集請求書により、Xらを取締役から解任しBらを選任することを会議の目的とする臨時株主総会を招集するよう、Y社に求めた。
AはY社が同日から6週間以内の日を会日とする株主総会招集通知を発せず、公告もしていないことを理由に裁判所に臨時株主総会の招集を申請し、平成11年3月11日に、4月30日までに株主総会を招集することを許可する決定を受けた。
そこでAは同年3月23日付招集通知及び同月25日付の全国紙に掲載した案内によりY社株主に対し、同年4月9日に臨時株主総会を開催する旨の通知をを行ったが、株主名簿の閉鎖ないし基準日設定の手続がとられていなかったため、多くの株主に招集通知が発送されなかった。
そこでXらは、この臨時株主総会につき、同月29日に裁判所に開催禁止の仮処分命令を申立て、4月2日に禁止の仮処分決定(第1回仮処分決定)が下された。
第1回仮処分決定の後、Aは、期日を変更する旨の同月7日付の葉書及び同月13日付の全国紙に掲載した案内により、同月30日に本件臨時株主総会を開催することを通知したが、この葉書には招集通知に添付されるべき参考書類が添付されていなかったことに加え、株主名簿の閉鎖ないし基準日設定の手続がとられていなかったため、多くの株主に対して、招集通知がなされていない。
そこでXらは同月9日、本件臨時株主総会につき裁判所に開催禁止の仮処分命令を申立て、同月19日に本件臨時株主総会の開催を禁止する決定がなされた(第2回仮処分決定)。
ところが、Aは、4月30日に開催場所を変更した上で、本件臨時株主総会が開催され、Xらが取締役から解任された上で、Bらが取締役に選任されたことを伝えた。
そして、同日に開催された本件取締役会において、Aが代表取締役に選任されたと主張している。
以上の事実関係のもとでXは、①平成11年4月に開催された株主総会におけるXらの取締役解任及びBらの選任決議について、主位的にはその不存在を、予備的にはその無効確認ないし取り消しを求めるとともに、②同日に開催された取締役会における代表取締役Aの選任決議の無効確認を求め提訴した。
<判決理由>請求認容。
請求①について「株主総会開催禁止の仮処分は、取締役もしくは株主総会招集権者に対する違法行為の差止請求権を被保全権利として、株主総会開催の禁止を命じるものであるが、右仮処分が、仮処分債務者に対して単純な不作為義務を課すものにとどまるものと解するならば、仮処分決定に違反しても、会社に対する義務違反の責任を生じるだけであって、開催された株主総会における決議に効力は左右されないということになる。
しかしながら、右仮処分は、疎明によって発せられるものであるとはいえ、株主総会が法令若しくは定款に違反し又は著しく不公正な手続によって開催されることにより会社が不利益を受ける恐れがある場合に、右株主総会の招集権者にその開催の禁止を命じることによって、会社が右不利益を受けることのないようにし、改めて右のおそれのない状態で株主総会が開催されるべきであるという会社の意思決定の本来的な在り方を実現させようというものであって、これにより会社の利益の保護を図ろうとする趣旨のものであるから、右仮処分の実効性を担保するためには、右仮処分は、これにより仮処分債務者である株主総会の招集権者の当該権限を一時的に剥奪する形成的効力を有するものと解するのが相当である。
そして、右仮処分は、右説示したとおり、会社の利益のために命じられるものであるから、その効力は、仮処分債務者のみならず、会社に対しても及ぶものと解すべきであって、右仮処分に違反して開催された株主総会は、結局、無権限者により開催されたものといわなければならない。
したがって、そのような株主総会における決議は、他の瑕疵の如何にかかわらず、法律上不存在であると評価されるべきものである。」
請求②について「本件株主総会決議は法律上存在しないから、本件取締役会は、その構成員のうちBら7名は取締役ではなく、出席した取締役はA1名にとどまり、これでは、およそ正当な取締役会を構成するものとはいえず、その決議には著しく重大な瑕疵が存在するから、本件取締役会決議は無効というべきである。」
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株主提案権・・・
札幌高判平成9年1月28日(株主総会決議取消請求控訴事件)
資料版商事法務155号107頁
<事実の概要>
商法特例法上の大会社であるY株式会社が招集した平成7年の株主総会に先立ち、Xらは株主提案権を行使して、Y社の収益見通しが不明確であり株主にとって不利益な投資が考えられるため、内部留保を減らして配当を増やすべく、1株当りの配当を7、5円とするべき旨の議案を総会の目的となすことを請求した。
提案理由は本文と別表からなるが、双方の字数を合わせると、参考書類規則4条1項1号(前商法施行規則17条1項1号)に定められた400字以内という字数制限を超過していた。
そこでY社は、別表部分を除いてその余の提案理由部分をほぼそのまま招集通知添付の参考書類に記載した。
これに対しXは、①400字以内という字数制限は「参考書類」の範囲内の限定的部分であり、別表部分は「招集通知」の範囲内にある説明部分であるから字数制限を受けないにもかかわらず、別表部分を削除したことが前商法230条の2に違反すること、②Y社が、取締役会決議に基づいて提案された議案を「会社提案」と記載したことは、単なる取締役会の提案にすぎないものを会社全体の総意として提案された善の提案であり、これと区別して記載された株主提案は悪の提案であるかのような印象を与えてこれを不利に扱いその賛否に影響を与えるものであるから著しく不公正な記載というべきこと、③Y社が、賛否の記載のない議決権行使書面について、取締役会提案の議案については賛成、X提案の議案については反対として取り扱ったことは全議案を平等に取り扱うべき参考書類規則7条(前商法施行規則25条)に反しており違法であること、などと主張して、招集手続及び決議の方法に瑕疵があることを理由に総会決議取消の訴えを提起した。
第1審は請求棄却。
Xは控訴した。
<判決理由>控訴棄却。
①について「Y社は、本件総会の招集通知本文にXらの提案の議題を記載したが、その提案理由は字数が400字を超えていたので本来招集通知添付の参考書類に記載する義務はなかったものの、別表部分を除いてその余の提案理由の部分を本件請求書面の記載に沿ってほぼそのまま記載したものであるところ、右方法による要約により提案理由の趣旨が損なわれたということはできず、Y社が招集通知の参考書類として右別表部分を記載しなかったことをもって招集手続に瑕疵があり違法であるということはできない。」
「Xの当審における主張の趣旨は必ずしも明確ではないが、前記別表は株主提案議題の包括的説明部分であるから参考書類に記載されるべきものではなく、招集通知そのものに記載されるべき性質のものであり、議案の要領を招集通知に記載することは法的に強制されているから、字数の制限は受けないとの主張と解することができるとしても、右別表は、1株当り配当金を7、5円とする旨のXその他の株主の提案の理由をXら株主が説明する中で、その主張を根拠に付ける事実を表す形式で記載して引用するために添付された書面であって、提案理由の一部をなす資料と認められるものであること、XはY社に対する株主提案を請求した書面において議案の要領を議案の内容と提案理由に分けて記載し、別表はこれを提案理由の一部として記載していることを考慮すると、右別表は参考書類規則4条1項1号(前商法施行規則17条1号1項)所定の字数の制限を受ける提案理由に該当するというべきである。」
②について「取締役会で株主総会の議案として提案することを決定されたものを会社提案と表現することは、会社提案という記載を取締役の提案の趣旨で用いる用語例が一般に行われており、本件総会において議長は会社提案の意味について取締役会の議決を得て提案した旨答弁していることを合わせ考えると、右の記載が株主に対して誤った情報を与えるとか右用語自体により株主提案の賛否に影響を与えるとは考えられないから、株主総会における決議の取消事由になるような瑕疵ということはできない。」
③について「参考書類規則7条(前商法施行規則25条)によれば、議決権行使書面には、賛否の記載のない場合、各議案について、賛成、反対、棄権のいずれかの意思表示があったものとして取り扱う旨記載することができることとされており、全議案について同一の取り扱いをすべきことまでは要求されているわけではないから、本件において議案ごとに異なる取り扱いをしたからといって違法ということはできない。」
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議決権行使の代理人資格の制限・・・
最判昭和43年11月1日(株主総会決議無効確認請求事件)
民集22巻12号2402頁、判時542号76頁、判夕229号154頁
<事実の概要>
Y株式会社は昭和2年設立の同族会社であり、「株主は代理人をもって議決権を行使することを得、但し代理人は当会社の株主に限るものとす。」と定款で定めている。
昭和24年にY社は解散し、清算人にAが就任したが、昭和32年、株主XはAに対し、Aの解任及びその後任清算人等の事項につき、Y社の株主総会の招集を請求し、Y社本店で臨時株主総会が招集された。
ところが、同総会は紛糾の末、外形上、Xを議長とする甲総会と、Bを議長とする乙総会の2つに分裂した。
甲総会では、Aを清算人から解任し、その後任にCを選任する旨が決議された。
他方乙総会では、Aの辞任を承認して解任は付議されず、その後任にBを選任する旨が決議されたが、乙総会に出席したのはAの代理人D及びBらであり、これらの者全員が株主ではなかった。
Xは、乙総会で議決権を行使したBらは株主ではなく決議に関与した株主はAのみであり、そのAも、株主ではないDに議決権を代理行使させており、これが上記定款に違反するとして、乙総会決議に法令・定款違反の瑕疵があると主張し、決議の不存在・、無効の確認及び決議取消を求めて提訴。
原審は、乙総会決議はY社の株主ではない者及びY社の定款の規定上代理人として議決権を行使する資格のない者によってなされたものであり、このような決議は、その方法が法令又は定款に違反すると判断し、決議取消につき請求認容。
Y社は、議決権行使の代理人を株主に限る旨の定款規定が前商法239条2項(判決時3項)に違反すると主張して上告した。
<判決理由>上告棄却。
商法239条3(2)項は「議決権を行使する代理人の資格を制限すべき合理的な理由がある場合に、定款の規定により、相当と認められる程度の制限を加えることまでも禁止したものとは解されず、右代理人は株主にかぎる旨の所論Y社の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、右商法239条3(2)項に反することなく、有効であると解するのが相当である。」
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