離婚の婚氏続称の旧姓への変更許可・・・

離婚の婚氏続称の旧姓への変更許可・・・

離婚に当たり、妻は旧姓に戻るつもりでしたが、4年生の長女が「急に名字が変わるのは恥ずかしい、嫌だ」と言ったため、子供に辛い思いをさせてはならないと思った妻は、不本意でありましたが、「離婚の際に称していた氏を称する届」(婚氏続称の届)をして、婚姻時の名字で実家に帰りました。

妻は、旧姓に戻るために役所に行き、名字を変更するには、家庭裁判所の許可が必要であることを知りました。

妻は、家庭裁判所へ氏の変更申立をして、家庭裁判所は不許可、高等裁判所へ即時抗告した結果、許可されました。

離婚に際しては、旧姓に戻ることを原則としながら、離婚の日から3ヶ月以内に婚氏続称の届出をすれば、結婚中の名字を称することができ、本人の自由意思で決めることができます。

しかし、婚姻中の名字を称すると選択しておきながら、その後、旧姓に戻りたい場合には、家庭裁判所に氏の変更の許可が必要で、それには「やむを得ない事由」が必要になります。

やむを得ない事由は、名前の変更の要件である「正当な事由」よりはるかに厳しい査定を受けます。

しかし、離婚に伴う氏の変更の場合は、やむを得ない事由の基準をある程度緩やかにしてもよいという傾向のようです。

本件の高等裁判所も、婚氏続称の届出が本人の不本意な意思によるものであり、かつ、その使用期間と範囲が比較的短くて社会的に定着せず、旧姓に復しても世間に弊害がほとんどないようなときは、やむを得ない事由があると認めてよい、として緩やかな解釈の立場で変更を認めました。

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勝手に別居した妻の婚姻費用請求・・・

夫は、医師から躁うつ病による入院治療を勧められ、これを拒絶したところ、会社から妻に夫の入院についての同意を要請されましたが、妻は親族と相談しましたが、判断が出せず、同意もしないまま、5日後に長女と二女を連れて、実家に帰りました。

その後、夫は実母を保護義務者として入院し、約5ヵ月後に退院したが、この間、妻は全く面会にも行かず、医師の病歴照会にも応じず、2人の子供と転出手続きをしてしまいました。

夫は翌年職場に復帰した後、妻に電話等で同居するよう話し合いを求めましたが、妻は応ぜず、その後約8年間相互に音信のない状態が続きました。

数年後、夫から離婚訴訟が提起され、妻からは婚姻費用分担請求が家庭裁判所に提起されました。

家庭裁判所では、夫に婚姻費用分担の義務を認めましたが、これを不服として控訴した高等裁判所は、夫婦の一方が他方の意思に反して別居を強行し、その後同居の要請にも全く耳を貸さず、かつ自ら同居生活回復のための真摯な努力を全く行なわず、そのために別居生活が継続し、しかも右別居をやむを得ないとするような事情が認められない場合には、少なくとも自分自身の生活費に当たる分についての婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず、ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまると判示し、妻については権利の濫用にあたるとして、長女と二女の実質的監護費用だけの請求を認めました。

夫婦が別居する場合において、婚姻関係が事実上破綻していても婚姻が解消されない限り婚姻費用分担義務のあるのが原則です。

このような場合でも夫婦の協力扶助義務はなくならないからです。

ただし、別居の原因につき責任のある有責配偶者から請求があった場合について、分担額について考慮する事例と請求そのものを許さない事例に分かれています。

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離婚の財産分与が詐害行為・・・

夫は、事業を営み、妻はその事業を手伝い夫婦協力助け合いの結婚生活でしたが、借金は増えるばかりで、資産を増やしても、次々を担保にかけられ、妻は将来に不安に覚え、4人の子の養育すら心配になっていました。

妻はその旨を夫に話し、2人の結論は、離婚し、夫が財産分与として一部の不動産を妻名義にすることを決めました。

協議離婚届が出され、財産分与を原因とする所有権移転登記が行なわれました。

財産分与を受けたのは、5件ある不動産の1つであるが、資産全体の3分の1でした。

その後、夫は債権者らに連絡をせず、次々と不動産を処分し、そのまま所在をくらまし、倒産してしまいました。

債権者たちはその不誠実に憤慨し、妻に対する財産分与も債権者に対する詐害行為であると主張し、その取り消しと登記を求める訴訟を起こした。

(詐害行為取消権)
民法第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

裁判所は、詐害行為にならないと判決しました。

債権者を害する債務者の法律行為を詐害行為といいますが、この法律行為のうちには、結婚、離婚、縁組。相続放棄など、財産権を目的としない身分行為は含まれません。

養子の債権者は、養親が資産家なのでいずれ相続するからと安心していたところ、縁組を解消してしまったからといって、離縁を詐害行為として取消すことはできません。

しかし、離婚に伴う財産分与は、離婚という身分行為に伴うものであるが、実際には直接財産権を目的とする行為であり、世間では時として財産隠し、執行逃れの手段に悪用する例もあります。

裁判所は、原則として詐害行為とはならないが、財産分与が不相当に過大であって、財産分与を隠れみのとして不当な財産の処分と認められるときは、詐害行為になると述べているが、本件の場合、妻の結婚生活中の貢献度、離婚原因は夫の数年来の不貞行為も原因であること、4人の子供は妻が引き取り養育することなどの事情から、3分の1以上を占める不動産を取得しても、不当な財産処分とはとうてい認められないと、判断しました。

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