長年別居の有責配偶者からの離婚・・・

長年別居の有責配偶者からの離婚・・・

夫は妻以外の女性と関係を持ち、子供まで作ってしまいました。

夫は、妻と離婚をしてくれるよう話しましたが、妻が聞き入れず、妻と別居し、女性と同棲を始めました。

夫は、妻へ夫名義の不動産を渡し、妻はその不動産を売却して、その売却代金で実家に帰り生活しました。

夫は、長年この状態で同棲生活を続け、離婚の調停を拒否され続けたため、離婚訴訟を提起しました。

しかし、妻は、裁判でも離婚に同意しませんでした。

婚姻関係が壊れて元に戻らない状態であっても、この原因は夫の不貞行為によるもので、離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は認められないと主張しました。

夫は、婚姻関係が破綻した以上、夫婦関係を続けても無駄であると主張しました。

裁判上の離婚が認められるためには、民法770条の離婚原因が必要です。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

従来、有責配偶者からの離婚請求は認めないという判例でしたが、最高裁ではこれを変更しました。

婚姻を継続しがたい重大な事由の中には、責任ある当事者からの離婚請求を許容すべきではないという趣旨まで入っていないとし、離婚請求は信義誠実の原則に反しないときには容認されることもありえるとして、有責配偶者からの請求について諸事情を考慮して離婚請求を認めました。

夫婦の別居が同居期間との対比において相当の長期間で、その間に未成熟の子が存在しない場合には相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないとしました。

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女性の6ヶ月の再婚禁止期間は憲法違反・・・

民法733条1項は、「女は、前婚の解消又は取消しの日から6ヶ月を経過した後でなければ、再婚することができない」と規定しています。

(再婚禁止期間)
民法第733条 女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 女が前婚の解消又は取消しの前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。

この規定は、憲法などに違反するものなのかどうか、再婚禁止期間の違憲性が問われた事件の判決が出ました。

妻は前の夫との間で離婚の調停が成立し、未成年の子2人の親権者となりました。

妻は他の男性と調停直後から同居して事実上の夫婦として生活しています。

男性は妻の子2人を養子とするため家庭裁判所にその許可の申立をしました。

妻と男性は、婚姻届をしました。

しかし、女については、前婚解消後6ヶ月の再婚禁止を規定した民法733条に違反するとして、届出が受理されませんでした。

また、養子縁組許可の申立も、再婚禁止期間中の養子縁組は、将来婚姻されないままに終わったときに子の福祉に反する結果を生む恐れがあるとして、却下されました。

妻と男性は、再婚禁止期間の経過した直後に婚姻し、子の養子縁組をしました。

妻と男性である原告は、民法733条は憲法と条約に違反するとして、①国会議員又は内閣が民法733条の立法をし、同条を改正又は廃止する立法をしないことが国家賠償法1条の違法行為に当たるとして、②再婚禁止期間中に受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求するとともに、予備的に憲法29条を類推し、損失補償を求める訴訟を提起しました。

憲法第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

裁判所は、原告らの右の訴えを全部棄却しました。

その要旨は、「ある法規の違憲性と当該法規に関する立法行為の国家賠償法上の違法性の問題とは本来異なる」とし、民法733条が憲法等の一義的な文言に違反しているというためには、女性に対して6ヶ月の再婚禁止期間を定めることに一見極めて明白に合理性がないと判断できるような場合でなければならないとし、民法733条は、専ら父子関係の確定の困難を避けることを立法趣旨とし、女性のみが懐胎するという男女の生理的な違いを理由として女性に対して6ヶ月の再婚禁止期間を定めるもので、一見極めて明白な合理性がないとはいえないとしています。

また、国会議員又は内閣の立法行為に国家賠償法上の違法性もないとしています。

さらに、憲法29条3項の類推適用による損失補償も認められないと、判断しています。

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勝手な離婚届出後の夫の急死の離婚無効・・・

夫の浮気に、妻は離婚を請求したが、夫は拒否し続けました。

妻は、2人の子供を連れて実家に帰りました。

夫から音沙汰もないことに腹を立てた妻は、区役所から離婚届をもらってきて、勝手に夫の名前を書き、市販の三文判を押し、子供らの親権者を妻とする協議離婚届を作り、区役所に提出しました。

法律的に夫の真意に基づくものではないので、無効とされる余地はあるのですが、戸籍には協議離婚と記載されました。

夫の急死の知らせを受けたのは、離婚届後27日目でした。

夫の死により、妻の座を放棄したことで、死亡退職金、相続の問題をはじめ、夫の両親、親族関係などに重大かつ決定的な影響を生じ、葬儀の列席さえその場所がありませんでした。

妻のなした離婚届は、夫の離婚の意思、届けを出す意思を欠いているから無効です。

夫である一方が死亡してしまったときは、人事訴訟手続法は、検察官を相手方として訴えることができると定めています。

妻は、離婚無効確認請求の訴えを起こしました。

しかし、裁判所は、あらゆる法律関係の根底にある信義誠実の原則が浮上してきて、文書偽造、公正証書原本不実記載のような不法な手段を講じてまで離婚の結果を作り出しておきながら、今更無効だと主張することは、明らかに信義則に反し、認められないとされました。

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