偽造の婚姻届の受理防止・・・

偽造の婚姻届の受理防止・・・

花子さんは、全然結婚の意思のないことをはっきり伝えてあるにもかかわらず、しつこくつきまとっている男性がいます。

男性は、電話で他の男性と結婚できないようにしてやるなどと脅迫しています。

花子さんが一番恐れているのは、男性が勝手に偽の婚姻届を出すのではないかというのです。

これを事前に阻止する方法はないのでしょうか。

当事者の一方が、婚姻届を偽造しても、結婚の意思がない限り、婚姻は無効です。

(婚姻の無効)
民法第742条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
1.人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
2.当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

しかし、たとえ偽造の婚姻届であっても、間違って受理されてしまうと、後の手続きが面倒になります。

そこで、花子さんの場合には、「婚姻届不受理申出書」を、本籍地の市区町村長宛に提出しておくと、偽造婚姻届の受理を防げます。

婚姻届不受理申出書ひな形

この申出書が提出された場合には、6ヶ月間だけ受理を拒んでくれます。

この期間が経過したら、再申出をすることができます。

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親権者を決めない離婚届・・・

夫婦の協議で、離婚することに話がまとまりました。

しかし、子供の親権者を妻とすることや、慰謝料の額などの条件について、まだ合意に達しておりません。

これらの条件については、一応、後回しにして、離婚届だけの届出をしてもよいのでしょうか?

慰謝料については、離婚届と関係なく離婚届を届出後でも決めることはできますが、子供の親権者を決めない離婚届は、受理されません。

離婚届には、子の親権者をどちらにするかの記載をしなければならないからです。

親権者だけは決めて、離婚届を出さなければならないのです。

(離婚の届出の受理)
民法第765条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定及び第819条第1項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
民法第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
2 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
3 前2項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

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差押を免れる離婚届の効力・・・

夫が事業に失敗し、かなりの借金を負っています。

夫婦は、債権者からの差押を免れるため、協議の上で離婚届を出し、夫名義の財産を妻の名義にしました。

しかし、2人は実際には離婚する意思はありません。

仮装の離婚届ですが、このような離婚届は有効でしょうか?

仮装ないし虚偽の離婚届は、刑法上の犯罪になります。

(私文書偽造等)
刑法第159条  行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2  他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3  前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

(偽造私文書等行使)
刑法第161条  前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
2  前項の罪の未遂は、罰する。

(公正証書原本不実記載等)
刑法第157条  公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2  公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
3  前二項の罪の未遂は、罰する。

また、債権者に詐害行為取消権を行使される可能性もあります。

(詐害行為取消権)
民法第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

ただ、離婚届について、市区町村役場に離婚届を出し、これが受理されると離婚が成立します。

その際、提出された離婚届の書類の要件が整っていれば、戸籍係はこれを受理しなければなりません。

実は、その離婚届は、夫の差押を免れる仮装のものであっても、書類の形式が整っている限り、受理しなければなりません。

こうして、戸籍係で受理された離婚届は有効なのです。

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