質権の留置と優先弁済・・・
質権というのは、債権者がその債権の担保として質権設定者から受け取った債務が弁済されるまで債権者の手許に留置し、もし弁済がなされないときには、その物から他の債権者に優先して弁済を受ける権利のことをいいます。
質権は担保の目的物を取り上げてしまって、手許に留置するという留置的効力を持っています。
質権設定者としては、質物を債権者に引き渡してしまうので、債務の弁済をしないことにはこの質物を返してもらえず、このことは、被担保債権の弁済を債務者側に間接的に強制する作用を果たしています。
質権には留置的作用のほかに、弁済期に被担保債権について弁済がなされないときには、質物について質権を実行して、優先弁済を受けられる優先弁済的効力もあわせ認められています。
質権は質権設定契約によって設定され、質権設定契約を結ぶ当事者は、債権者と質権設定者です。
質権設定者は債務者本人である場合もあり、他の第三者であることもあり、第三者が質権設定者である場合に物上保証人といいます。
質権設定契約は、質物を質権設定者から債権者に引き渡してはじめて効力を発生します。
(質権の設定)
民法第344条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
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債務弁済並びに動産質権設定契約書書式・・・
債務弁済並びに動産質権設定契約書
債権者株式会社山田工業を甲、債務者田中商会株式会社を乙とし、甲乙は本日以下の内容による債務弁済並びに動産質権設定契約を締結する。
第1条 乙は甲に対し、本日現在甲乙間の平成**年**月**日より平成**年**月**日までの間の**商品売買取引より生じた代金***円の未払いの買掛金債務を負担していることを確認する。
第2条 乙は前条記載の買掛金***円を平成**年**月末日限り、甲の本店に持参又は送金して支払うものとする。
第3条 乙が前条記載の弁済期に右買掛金を支払わないときは、乙は甲に対し前条の期日の翌日から支払済みに至るまで年**%の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
第4条 乙は本件債務の支払を担保するため、その所有にかかる次の物件に質権を設定し、甲はこの引渡を受けた。
1 ******
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第5条 前条の質権は、本件買掛金、遅延損害金、質権実行の費用及び質物保存の費用を担保するものとする。
この契約の成立を証するため、本契約書2通を作成し、甲乙各1通を所持する。
平成**年**月**日
債権者(甲)東京都*********
株式会社山田工業
代表取締役 山田太郎 印
債務者権質権設定者
(乙)東京都*********
代表取締役 田中五郎 印
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根質と転質の性質・・・
根質は、継続的な取引関係から生ずる債権を担保するために、担保されるべき枠を定めておき、この枠の範囲内で、ある時期に存在する債権を担保する質権設定契約です。
根質設定契約では、特に根質であることを明確にする必要があります。
債権の担保として質物を取っている場合に、その質物を他の人の債務のために担保し、債権債務を流動化させることがあります。
転質は、質権者が質権設定者から引渡を受け、占有している質物に自らの債務を担保するために、自分自身の債権者に対し、さらに質権を設定することです。
質権者は、この転質を質権設定者の承諾を得てなすこともでき、これを承諾転質といい、質権設定者の承諾を得なくても、自らの責任においてすることもでき、これを責任転質といいます。
転質の成立には質権者から転質権者に対して、質物を引き渡すことが必要です。
転質権の被担保債権の額は、原質権の被担保債権額を超えてはいけませんし、転質権の存続期間は原質権の存続期間内であることが必要です。
転質が成立すると、転質をなした者は転質をしなかったら生じなかったであろう不可抗力による損害についても、賠償すべき責任を負うことになります。
(転質)
民法第348条 質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
転質権者が転質権を実行するためには、自分の被担保債権が弁済期に到達しているだけでなく、原質権の被担保債権も弁済期に達していることが前提として必要です。
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