抵当物件を滅失した場合・・・

抵当物件を滅失した場合・・・

抵当物件の所有者が第三者に損害賠償の請求権を有するときや、火災保険金の請求権を有するときなどは、抵当権者としてはこの損害賠償権や保険金を差押さえることができます。

ただし、そのためには保険金が支払われる前に差押をすることを要します。

そのため、抵当権設定契約の際に、抵当権者が火災保険金請求権上に質権の設定を受けておくと、火災になったときに質権を実行して回収することができます。

担保提供者である債務者が、抵当物件を故意に毀損した場合は、債権者はこの債務者に対して、不法行為責任を追及することもできますし、このようなことをなした債務者は期限の利益を失いますから、被担保債権につき当初約定していた弁済期が到来していなくても、全額を返還請求できます。

抵当物件を第三者が取り壊したのであれば、それは抵当権の侵害となりますから、抵当権者としてはその第三者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求できます。

抵当権設定契約の際に、当事者間で抵当物件が毀損、滅失したときやその価値が減少したときは、代わり担保あるいは増担保を提供することを約定している場合は、抵当権者は抵当物件の毀損や滅失が見られたり、価値の低下がみられる場合は、この代り担保や増担保の提供を求めるよう交渉します。

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譲渡担保動産の債権者の表示・・・

譲渡担保の目的物は債務者など担保提供者のもとにおいて、その使用を担保提供者に許します。

動産が譲渡担保の目的物の場合は、債権者がその目的物を占有改定の方法によって引渡しを受ければ、それで対抗要件をそなえたことになります。

(占有改定)
民法第183条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

しかし、第三者がその動産を譲渡担保物件で、既に債権者の所有になっていることを知らずに、しかも無過失で譲り受けることがないわけではありません。

何も事情を知らない第三者が譲渡担保目的目的物を譲受け、引渡しを受けてしまうと、即時取得によってその第三者が所有権を取得してしまいます。

(即時取得)
民法第192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

こうなると、譲渡担保物権としてはその目的物を取り戻すことができなくなります。

譲渡担保の債権者としては、その物に「所有者山田太郎」や「本件物件は債権者株式会社山田工業の譲渡担保物件となっている」などの表示をつけておきます。

少なくとも、善意ではなくなりますので、取り戻すことができます。

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抵当土地上に新築建物・・・

土地について抵当権を設定した後に、その抵当権設定者だけでなく、第三者によってその土地の上に建物が建てられたときは、抵当権者はその土地とともに地上の建物も併せて競売することができます。

ただし、この場合の優先弁済権は土地の代価についてだけしか認められません。

(抵当地の上の建物の競売)
民法第389条 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

また、抵当権設定の時点で、すでに土地の上に建物があり、両方とも同一人の所有に属し、その土地、建物の一方だけに抵当権が設定されていた場合、競売になったときには、抵当権設定者は建物のために土地に地上権を設定したものとみなすことにしています。

(法定地上権)
民法第388条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

また、土地と建物両方に抵当権を設定した場合にも、抵当権者が両方を別々の機会に競売するときは、法定地上権を設定したものとみなすべきだとしています。

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抵当物件の増築や売却・・・

抵当権の目的となっている建物が増築されても、併せて1個の建物とみられるものである場合には、抵当権の効力はそのまま増築部分に及びます。

増築部分がそれ自体、建物として独立性をもつときは、抵当権の効力は増築部分に及ばないと考えられますが、この場合には、建物所有者は増築部分を独立した建物として登記する必要が出てきます。

そして、このような場合には、当然には抵当権は及びません。

また、抵当不動産が処分された場合はどうなるのでしょうか?

抵当権設定者は、抵当権設定後も、その目的物を他に売却することができます。

抵当物件について第三取得者が出現しても、抵当権の効力に影響はありませんが、第三取得者には抵当権消滅請求権をもっていて、第三取得者から抵当不動産の価額を抵当権者に弁済することにより抵当権を消滅させることができます。

(抵当権消滅請求)
民法第379条 抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

(抵当権消滅請求の手続)
民法第383条 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
1.取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
2.抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
3.債権者が2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第1号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面

抵当権者としては、その第三取得者の提示する金額が低い場合には、競売をするしかなくなります。

普通は抵当権設定契約では抵当権設定者に抵当物件の使用、管理などについて、義務を課していますが、第三取得者が抵当物件を買い受けてしまうと、この抵当権設定者の管理上の義務や約定はこれを第三取得者が引き継いでくれるとは限りません。

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