所有権留保の性質・・・
売買の目的物を引渡はするものの、所有権を買主に移転させず、売主に留保する特約で売買代金の支払を担保する方法を所有権留保といいます。
代金支払が分割払いになっている場合に、代金が完済されるまでは所有権は売主に残したまま、買主に目的物を利用させることになります。
買主が売買代金の支払を怠ったときなどには売主は売買契約を解除して売買目的物の引渡を求めることができます。
ただし、目的物を引揚げる場合には、その目的物の価値と受領済みの代金とを清算処理することが必要になります。
また、買主が任意に返還に応じない場合には仮処分などの法的手続きをとる必要があり、その場合には、損害賠償を請求される可能性もでてきます。
所有権留保の場合には、目的物の引揚げのためには売買契約を解除することが必要になります。
また、動産の場合には即時取得が認められますので、買主が代金を完済しない間は第三者に売却処分できないように所有権が売主に留保されていることを明示する公示札を貼り付けておく必要があります。
ただし、リース契約と同視されるような場合には、買主が破産したときに取戻権を否定され、目的物の引揚げができなくなる場合もなります。
高額商品の場合には、完済前に火災や盗難被害によって目的物が焼失した場合に備えて、買主に火災・盗難保険をかけさせてその保険金について質権設定をすることもできます。
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代物弁済による仮登記担保の性質・・・
返済を遅延したら債務者の不動産で代物弁済させるという予約や条件によって、不動産の所有権移転の仮登記を設定する担保手段を、代物弁済予約による仮登記担保といいます。
仮登記担保は、仮登記後に設定された担保権や差押に優先して弁済を受けます。
代物弁済は、債務者の債務不履行があると、代物弁済によって担保不動産の所有権を取得するのが原則ですが、この場合、債権額を担保物から全額回収できないときには、残額は無担保債権として残ります。
また、仮登記担保権者自身では競売申立てはできません。
しかし、他の抵当権者や一般債権者が競売申立てをしたときには、競落代金の中から配当を受けることになります。
この場合、仮登記担保権者は抵当権者と同じ扱いになりますので、担保不動産から優先配当を受けます。
仮登記担保による代物弁済は、その不動産の丸取りになる可能性もあり、制限が設けられています。
実行に際しては必ず債務者と後順位抵当権者がいるときには後順位抵当権者に、実行の通知をします。
通知には、担保不動産の適正な評価額と残債務金額を明確にして、清算金の額を明示しなければなりません。
清算金の支払は必須で、特約でも排除することができません。
清算期間は法律上2ヶ月となっており、この期間満了日又は清算金があるときには清算金の支払を受けるまでは、債務者は債務を弁済して担保不動産の所有権の取戻しができ、これを受戻権といいます。
受戻権の行使もなく、担保権者からの競売申立てもなければ、不動産の明け渡しを受けて本登記をすることができます。
ただし、債務者に清算金を支払うのと引換でなければなりません。
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相殺の性質・・・
相手方に対して持っている債権と、相手方に対して負っている債務とを同額で差し引きして決済するのが相殺です。
相手方に対する債権である自働債権が500万円あり、相手方が自分に対して有する債権である受働債権が300万円あるときは、同額の300万円を相殺できますので、その限度で事実上優先して弁済を受けることができます。
相殺は、相手方に対する一方的な意思表示ですることができます。
相殺の事実が明確になるように相殺通知書を送付して行い、相殺をすれば、自動的に双方の債権が同額で消滅しますので、それ以外の特別な手続きは不要です。
相殺をできるのは、相手方の債務が履行期になっている場合です。
自分の債務については自ら期限の利益を放棄して弁済すれば双方の債権が弁済期到来となり相殺適状となります。
しかし、契約書に履行遅滞や手形の不渡りがあったときなどには、期限の利益を喪失させる合意を入れておくとすぐに相殺できます。
相手方が反対債権を債権譲渡したり、あるいは第三者が反対債権を差押しても、それ以前に自働債権を持っている場合には相殺することができるとされています。
ただし、差押をした第三者が転付命令をとると、相殺をできなくなりますので、相手方に信用状態の変化が見られたら、早急に相殺通知をして相殺することが大切です。
相殺による回収は破産手続き上も保護されていますが、倒産状態になっているのを知っていて相手方と契約して自働債権を取得したり、第三者の相手方に対する債権の債権譲渡をうけた場合などには相殺できません。
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