債権に質権を設定する債権質・・・

債権に質権を設定する債権質・・・

質権という担保権は、債権者が質権設定者から受け取った物を債務が弁済されるまで債権者の手許に置き、弁済がなされなかったら、その物から債権者に優先して弁済を受ける権利をいいます。

債権質を設定するにあたり、債権者と質権設定者との間で債権質権設定契約を結ぶことが必要で、債権証書がある場合には、これを引き渡さなければならないと思われますが、引渡は必要ないとされています。

ただし、記名社債、記名国債など、譲渡にあたり証書の交付が必要なものについては、その交付がなければ質権設定の効力が生じません。

(債権質の設定)
民法第363条 債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。

債権者がこの取得した債権質を第三債務者その他第三者に対抗するためには、債権譲渡に関する民法467条の規定に従い、質権設定者から第三債務者に対し、質権設定を通知するか、又は第三債務者から承諾をえることを要します。

(指名債権の譲渡の対抗要件)
民法第467条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

(指名債権を目的とする質権の対抗要件)
民法第364条 指名債権を質権の目的としたときは、第467条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。

質権設定者からの第三債務者への通知や第三債務者の承諾は、これを確定日付ある証書によって行わなければ、第三債務者以外の第三者に対抗できないとされています。

第三債務者への通知は配達証明付きで内容証明郵便によって発信し、承諾については承諾書を公証役場へ確定日付を押印してもらいます。

スポンサードリンク

金銭消費貸借並びに債権質権設定契約書書式・・・

金銭消費貸借並びに債権質権設定契約書

債権者株式会社山田工業を甲、債務者田中商会株式会社を乙とし、甲乙は、本日、以下の内容による債権質権設定契約を締結する。

第1条 甲は、乙に対し、本日、次の約定のもとに乙の事業運転資金として金***円を貸し渡し、乙はこれを受領し、借用した。
1 弁済期 平成*年**月*日
2 利率 年**%
3 利息の支払方法 毎月末日に限り当月分を支払うこと
4 遅延損害金 年**%
5 弁済方法 甲の本社に持参又は送金して支払う

第2条 乙が次の各号の一つに当てはまる場合は、乙は、期限の利益を失い、直ちに前条本文の金員の残金のほか、期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みに至るまで前条4号の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
1 他の債務につき仮差押、仮処分又は強制執行を受けたとき
2 他の債務につき競売、破産又は和議の申立を受けたとき
3 本契約に違反したとき

第3条 前条の場合、甲と乙は、甲乙間の取引によって生じる甲の乙に対する債務と本契約上の乙の甲に対する債務とを、対等額において相殺することができる。

第4条 乙は、本件債務の履行を担保するため、次の債権の上に質権を設定し、債権者甲は、その債権証書を受領した。
1 債権者 乙
2 債務者 株式会社斉藤実業 代表取締役 斉藤一郎(第三債務者)
3 債権の種類と額 平成**年**月**日付の乙と株式会社斉藤実業との間の売買契約により、同日、乙が株式会社斉藤実業に販売した商品**の商品売買代金(代金支払時期平成**年**月末日)、金***円也

第5条 乙は、前条2号記載の第三債務者に対し、本契約締結後遅滞なく前条の質権設定を通知するか、又はその承諾を得なければならない。
二 前項の通知又は承諾は確定日付のある証書をもってしなければならない。

第6条 第4条記載の質権は、本件債権の元本、利息、遅延損害金及び質権実行の費用を担保する。

本契約の成立を証するため本書2通を作成し、各1通を所持するものとする。

平成**年**月**日

(甲)東京都*********
株式会社山田工業
代表取締役 山田太郎 印

(乙)東京都*********
田中商会株式会社
代表取締役 田中五郎 印

金銭消費貸借並びに債権質権設定契約書書式WORD

スポンサードリンク

金銭債権の譲渡担保と代理受領・・・

金銭債権を譲渡担保にとることも行われており、債権者と譲渡担保設定者との間の債権譲渡契約によって成立しますが、債権者において、譲渡担保の目的となっている債権を譲り受けたことを第三債務者をはじめ、その他の第三者の対抗するためには譲渡人から第三債務者に対し、債権譲渡の通知をするか、又は第三債務者の承諾を得ることが必要です。

(指名債権の譲渡の対抗要件)
民法第467条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

また、実際の取引の上では、担保方法ではありませんが、代理受領という方法があります。

債権者が債務者の第三者に対して有する債権について、債務者からその債務を受領する権限の授与を受け、第三債務者からその弁済を受けて、これを債務者の債権者に対して負担する債務の弁済に充てます。

債務者が第三債務者に対して有する債権について、債権者においてあらかじめその債権取立てをの委任を受けておき、それに基づいて第三債務者から債務の支払を受けます。

債権者が第三債務者よりその弁済を受けたときは、これを債務者の債権者に対する債務に充当するかたちで回収します。

スポンサードリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする