債務名義で動産執行と動産競売・・・

債務名義で動産執行と動産競売・・・

動産執行は債務名義に基づいて債務者の所持している動産を執行し、動産競売は担保権に基づいて動産を競売にかけて執行することをいいます。

登録されている自動車や登記されている建設機械などは、動産ではありますが、準不動産執行として強制競売の手続になります。

株券や国債や手形などの裏書が禁止されていない有価証券については動産執行の対象となっています。

動産については、差押禁止財産が認められ、個人の住宅内にある動産類などは、ほぼ全て差押禁止財産とされ、職人の道具のような生業維持のための財産も差押禁止財産です。

現金があっても66万円までは差押禁止です。

動産執行・動産競売の申立は裁判所ではなく執行官に行います。

動産執行の場合には執行文のある債務名義正本と送達証明を添付します。

動産競売で、動産先取特権に基づく場合には、先取特権のあることを証明する書類を提出しますが、先取特権者・質権者で競売にかけたい動産を持っている場合には、占有していること自体が担保権の証明になるので法定文書などの提出は不要になります。

執行官の便宜のために執行場所の地図や、目的動産が特定されている場合にはその写真なども併せて提出します。

動産執行の特徴は、具体的に動産を特定しなくてもよく、差押えたい動産のある場所だけを申立書に記載すれば足りるとされます。

執行官は、申立書に記載された場所に出向き、差押可能な動産があればそれらの差押をします。

貴金属や現金などは執行官が保管しますが、それ以外の動産については債務者にそのまま保管させておきます。

差押えた動産については、1ヶ月以内に執行官が競り売りをします。

手形小切手などの有価証券は動産執行の対象となりますが、その証券を差押えるだけで、現金化までしてくれるわけではなく、証券の債権が保証されているわけでもありません。

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動産不動産の引渡し執行・・・

強制執行の中には金銭の回収を目的とせず、特定の物の引渡しを求める手続もあります。

例えば、契約解除後も居座る賃借人へ建物の明渡しなどで、譲渡担保を設定させた建物から債務者が退去しない、所有権留保売買した動産を債務者が返却しない、などの場合には、それらの物の引渡しを求めることが必要になることもあります。

引渡しを求める動産・不動産の所在地を管轄する裁判所の執行官に対して「建物明渡強制執行申立」「動産引渡強制執行申立」などを提起します。

執行力のある債務名義正本と送達証明などを添付し、執行官が現地確認をできるように住宅地図などの図面類も併せて提出します。

執行は、執行官が債権者に対して不動産・動産を現実に引き渡すことが必要なので、必ず債権者が立ち会わなければなりません。

また、不動産の引渡し・明渡しの場合には、執行官が任意の履行を催告し、その1ヵ月後に現実の執行をすることになります。

ほとんどの債務者はこの間に不動産の引渡しを・明け渡しを任意に応じます。

動産の場合には、執行官が強制的に目的不動産を債務者から取り上げて、その場で債権者に引渡しをしますが、執行の場所に債権者がいなくても執行は実施されます。

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債務者の財産開示請求手続・・・

強制執行によって、裁判所が債務者の財産を換価し、債権の回収をしてくれるとっても、債務者に財産がなければ何もできません。

担保権者は抵当権を設定させた不動産などを把握していますが、一般債権者は勝訴判決をとっても執行する対象財産が見つからないままであることはよくあることです。

本当に債務者が財産がなければしかたがありませんが、意図的に資産を隠しをしているような場合もあります。

そこで、債務者に対してその所有している財産を法的に開示させることができ、これを財産開示手続といいます。

これについて、一般先取特権者も申立ができますが、債権回収を前提として申立ができるのは債務名義をとった債権者になります。

ただし、この債務名義には、「仮執行宣言付判決」「仮執行宣言付支払督促」「公正証書」は含まれません。

強制的に債務者の財産を開示させるため、訴訟・調停手続で債権が確定している債権者だけに限定されています。

和解調書、調停調書、確定判決があれば、財産開示手続ができます。

また、財産開示手続の申立をするには、次の要件があります。

①強制執行・担保権実行における配当等の手続をしたが、債権の完全な弁済を得られなかった。

ただし、申立日から6ヶ月以上前に終了したものは除きます。

②債務者の知られている財産に対して強制執行・担保権実行をしても、債権の完全な弁済を得られないことを疎明した。

財産開示手続で債務者が自己の財産について陳述したことがある場合には、それから3年以内は財産開示手続を実施してもらえません。

ただし、3年以内に行われていた財産開示手続で、債務者が一部の財産の開示をしていなかった、その後新たな財産を取得した、その後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき、のいずれかの事情があれば実施してもらえます。

申立は債務者の住所地の管轄地方裁判所が原則です。

申立書には、申立のできる債権者であることや、なぜ申立をするのかなどの理由とその証拠を記載して提出します。

裁判所が財産開示手続実施決定を出しますので、呼び出された債務者は財産開示期日までに財産目録を作成して裁判所に提出します。

期日には債務者が自分の財産に何があるかを陳述し、事前に提出された財産目録に従って申立債権者も質問することができます。

債務者には財産開示期日に出頭して陳述する義務があり、これに違反すると過料が科されます。

しかし、債務者に対する過料は30万円でしかないため、過料制裁を覚悟されて資産の隠匿をされればどうしようもなくなります。

また、財産開示の対象となるには、その財産開示期日現在の財産でしかありませんから、期日の直前に処分された財産に関しては開示が必要なくなってしまいます。

また、財産を開示させることから、債務者の保護も図られており、財産開示手続で得た債務者の財産状況を第三者に漏洩するなどの目的外の情報利用は禁止されており、これに違反すると過料の制裁を受けます。

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