子の引渡しの直接強制・・・

子の引渡しの直接強制・・・

強制執行を行なうためには、子供の引渡しを命じる内容の確定判決、調停調書、確定審判などの権利の存在を公に証明する債務名義が必要です。

夫婦間の約束で子供を引き渡す約束をしていたのに相手が約束に反して応じてくれないといった場合には、子の引渡しを求める調停などを申し立てて、子供の引渡しを命じる調停調書や審判書などを取得しておく必要があります。

調停調書などの書類がある場合には、子供の住所地を管轄する地方裁判所の執行官に対し、子供の引渡しを求める強制執行の申立を行ないます。

子供の引渡しの直接強制では、引渡しの対象が人格を持った子供ですから、子供の福祉に適した執行方法をとる必要があります。

特に、子供が通常所在する場所や監護の状況、現に監護をしている者の性格や行動傾向、執行を実施した場合の相手方及び子供の予想される反応等は、執行を実施するのに不可欠な情報ですので、申し立てた側から執行官に対して情報提供する必要があります。

また、執行が行なわれた場合、子供は相手方の支配下から権利者の監護下に迅速に移す必要がありますから、執行当日は子供を引き取る権利者が立ち会えるようにあらかじめ執行官と執行日時を打ち合わせておきます。

子供を引き取る権利者は、執行後の子供の連れ去り方法、衣服、持ち物などについてもあらかじめ準備しておく必要があります。

直接強制が可能になったといっても、執行の現場で子供の引渡しを実行することが現実的に困難となった場合には、執行不能として子供の引渡しが行なわれないまま終了することもあります。

例えば、相手や他の同居者が子供を抱えて引き渡さない場合や子供が逃げ出すなどして権利者に引き取られることを拒否する場合、相手が子供を連れて執行場所以外の場所に逃げ込み出てこない場合などには、執行不能となる場合もあります。

執行不能とするかは、現場での執行官の判断に委ねられていますが、引渡しの対象が人格を持った子供であることから、引渡しを強制することが子供の福祉に反するような場合には、子供のためにも、その場で引渡しをあきらめざるをえなくなります。

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別居中の面接交渉権・・・

子供を監護していない方の親が、その子供と個人的に面接したりして交渉することを面接交渉といいます。

親権者あるいは監護者とならなかった親が、その子供と面接交渉する権利が面接交渉権です。

子供の監護に当たらない親を非監護親といいますが、非監護親が子供が順調に成長していく姿を子供と会うなどして交渉し見届けるのは当然のことです。

子供の健全な成長にとっても、一般に両親との交流が必要と考えられています。

家庭裁判所は、面接交渉を認めることが子の福祉に適合するかどうかという観点から、面接交渉を認めるか、制限して認めないかを判断します。

面接交渉権は、子供に会いたいという親のとしての心情を満たすものであり、親の権利として認められるものですが、親の要望よりも子の福祉を第一に考えられます。

別居中、非監護親も離婚が成立するまでは、子供を育てている監護親とともに共同親権者という立場にあり、親権の一内容として当然に子供と面会できます。

ですので、別居中の非監護親にも面接交渉権が認められます。

最高裁判所も、婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある子と同居していない親と子の面接交渉について家庭裁判所が相当な処分を命ずることができるとしています。

別居に至った原因が、相手の暴力や浮気などの場合に、別居して子供と暮らしている親としては、面接交渉を拒否したい感情は否めません。

実際に、子供の福祉を害する場合には、面接を拒否することも必要ですが、いたずらに拒否することは、夫婦間の紛争、対立状況を激化させ、両親の葛藤の中に子供を巻き込んだり、実力による奪い合いを招くなど、子供の利益、福祉を害することもありますので、考慮が必要です。

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面接交渉の調停と審判・・・

夫婦間の話し合いで面接交渉の合意が成立しないときは、家庭裁判所から子の監護に関する処分として面接交渉を命じてもらうため、面接交渉を求める調停又は審判の申立をします。

家庭裁判所では、子の監護に関する処分としての面接交渉を審判で求めても、まずは調停手続において、当事者間の話し合いがなされます。

調停では、調停委員などが間に入り、面接交渉について当事者間で協議されます。

調停手続の中では、現在の子供の状態や申し立てた親と子供との関係を調査するために、家庭裁判所において面接交渉の場が設けられることもあります。

調停委員などが強く説得しても監護親が強く拒む場合には、強制的に面会を行うことはできません。

家事審判官の判断により家庭裁判所調査官が、相手方の家を訪問するなどして、現在の子供の状況や、子育ての現状について調査することもあります。

家庭裁判所調査官は、試行的な面接交渉のときの様子や、面談した結果を、必要に応じて家事審判官に書面等で報告することになります。

手続の結果、当事者間に面接交渉について合意が成立すれば、その合意の内容が、家庭裁判所の調停調書とされます。

合意が成立せず、調停が不調になった場合には、自動的に審判に移行し、必要に応じて、審判のための期日が開かれます。

申し立てた側から面接交渉の必要性を述べた書面を、相手方からは面接交渉に応じられない理由などを述べた書面をそれぞれ提出し、家事審判官が当事者双方から事情を聴くなどして、最終的に家事審判官が、面接交渉を認めるかどうかについて審判を下します。

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