養育費の履行勧告と履行命令・・・
履行勧告は、人事訴訟事件や家事審判・家事調停事件において定められた金銭の支払義務などの履行を怠っている義務者に対し、家庭裁判所が権利者の申出に基づいて、必要な調査をした上で、その履行を勧告する制度です。
家庭裁判所への履行勧告の申出の方法は、書面、口頭、電話のいずれの方法でもよいとされています。
申立の手数料、郵便切手も必要ありません。
申出の際には、養育費の支払等が定められた調停調書や審判書を用意して、そこに記載されている調停・審判の事件番号、事件名、成立年月日、権利者・義務者の住所、氏名、電話番号、勤務先、勤務先の電話番号、現在の住所や電話番号が分かる場合には、それらを、さらにこれまでの支払状況、支払が遅れている状況等の申出の内容を、家庭裁判所に伝えます。
家庭裁判所では、これらの申出を受けて、家庭裁判所調査官などが、義務者に対して、電話や書面などで勧告します。
履行勧告によっても、義務者が財産上の義務の履行に応じないなどの義務の履行を怠っている場合には、家庭裁判所は、権利者の申立により、義務者に対して、相当の期間内にその義務を履行するよう命令することができます。
この履行命令に正当な理由なく従わない者は、過料に処せられることがあります。
履行命令の申立は、養育費などの金銭の支払義務を定めた調停や審判、判決をした裁判所に対してします。
申立を受けた家庭裁判所は、命令を出す前に、義務者の陳述を聴くことになっています。
履行命令は強い効果を有する制度ではありませんが、申立により、家庭裁判所調査官による相手の説得などの活動により目的を達することもあります。
履行勧告又は履行命令によっても支払がなされない場合には、相手の財産を差押える強制執行の手続きをとることになります。
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養育費の強制執行・・・
強制執行は、債務を負担している人から国が国家権力によって強制的に債務の履行を実現させる手続きです。
金銭の支払を内容とする債務の場合は、債務者の財産を差押えて、支払に充てます。
強制執行をするためには、相手に財産があることが前提となり、手続きの前にその財産を特定しなければなりません。
養育費の場合には、何ヶ月も滞ったとしても、月額が比較的低額のため不動産などの高額な財産は強制執行に適しません。
養育費には、預貯金、給料の差押が適しています。
養育費の支払がなされず、支払義務者の給料や預貯金などの財産を差し押さえる手続きの申立は、必要書類を用意して、義務者の住んでいるところを管轄する地方裁判所で行ないます。
養育費のように毎月一定の日を支払期限とする定期的な債権が不履行になっているときは、まだ期限が来ていない将来の月の分についても、一括して、相手の給料など継続的に支給を受けることができる債権に対して、差押をすることができます。
ただし、差押の対象となるのは、請求する債権である各定期金債権について、その期限の到来後に弁済期が到来する給付にかかる債権にかぎられます。
差押ができる金額についても、養育費については、債務者の給料債権等に対する差押が2分の1に相当する部分までとすることができます。
ただし、税金等控除後の給料額の2分の1の額が33万円を超えるときは、税金等控除後の給料額から33万円を控除した額が差押えられることになります。
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養育費の間接強制・・・
養育費などの扶養義務等に関する金銭債権についての強制執行は、給料や預貯金の差押による直接的な強制執行のほかに、間接強制の方法によっても行うことができます。
間接強制とは、一定の日時までに債務の履行をするように債務者に求め、それまでに履行をしないときは一定額の金銭の支払をせよと命じて、債務者を心理的に圧迫して、債務者自ら履行するように仕向ける強制執行をいいます。
養育費の間接強制は、債務者が、お金がなくて金銭債権に関する債務を弁済することができないときや、その債務を弁済することによって自分の生活が著しく困窮するときはできません。
間接強制の場合の間接強制金を定めるときは、執行裁判所は、債務不履行により債権者が受けるべき不利益とあわせて、債務者の資力及びそれまでの債務の履行の態様を特に考慮しなければならないとされます。
事情の変更があったときは、執行裁判所は、債務者の申立により、間接強制決定を過去に遡って取消すことができます。
債権者が、養育費を毎月支払ってもらうことになっているのに、相手がその一部の支払をしないときは、将来分の養育費のうち6ヶ月以内に支払期限が到来するものについても間接強制の申立をすることができます。
養育費の支払が滞ったときに、強制執行として、給料などの差押をするか、間接強制にするかは、債権者が選ぶことができます。
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