家事審判の不服申立と履行の確保・・・

家事審判の不服申立と履行の確保・・・

家庭裁判所の審判に不服がある場合には、即時抗告という不服申立手続をとらなければなりません。

審判前の保全処分の不服の場合も同様です。

この即時抗告は、審判の告知を受けた日から2週間のうちに申立をしなければなりません。

例えば、平成23年9月1日に審判書を受け取って審判の告知を受けた場合には、その翌日の2日から2週間後の9月15日までに即時抗告しなければなりません。

即時抗告された事件について高等裁判所は、決定という裁判をします。

これには、申立の却下、棄却、原審判の取消があります。

高等裁判所の決定に対して不服がある場合には、原則として不服申立はできません。

例外として、憲法違反がある場合には特別抗告が、過去の裁判例に違反しているなどの法令解釈の重要な事項がある場合に高等裁判所が決定で認める許可抗告があります。

また、家庭裁判所において、調停や審判で相手の養育費の支払や面接交渉に応じる義務が認められたにもかかわらず、相手がその義務を果たさないときには、権利者が家庭裁判所に申し出て、家庭裁判所が審判や調停で定められた義務の履行状況を調査し、義務違反者に対して、その義務の履行を勧告してもらうことができます。

養育費の支払など財産上の支払い義務を怠った場合には、権利者が家庭裁判所に申し立てると、家庭裁判所から、相当の期限を定めてその義務の履行をすることを命じてもらうことができます。

これを履行命令といいます。

これらの制度を利用しても、履行されない時は、強制執行の手続によります。

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別居中の子の引渡し・・・

離婚に至っていない夫婦の場合には、双方に親権があり、この親権は婚姻中は夫婦が共同して行うこととされます。

親権の一内容である子供を監護・養育する権利、子供を住まわせる場所を決めたり、子供にしつけや教育をしたりする権利も夫婦が共同で行ないます。

別居の間、子供をどちらが育てるかについて十分な話し合いや合意をしないまま別居をしてしまうと、子供を監護をしていない側の親から、子供の監護をしている側の親に対し、子供の引渡しを求める請求など起こりえます。

離婚に至っていない夫婦間に子供の監護に関する紛争が生じた場合について、民法に定められておらず、裁判所の実務上、家庭裁判所に子供の引渡しを求める手続きを申し立てることができます。

家庭裁判所に「監護者の指定」と「子の引渡し」を求める調停や審判を申し立てる方法があります。

「監護者の指定」とは、別居の間、子供を監護する監護者を自分に指定するよう求める手続きです。

「子の引渡し」とは、監護者に指定されたことを前提として、監護権に基づいて子供の引渡しを求める手続きです。

別居中は、未だ共同親権の状態にあるため、このような監護者に指定されないと、夫婦の一方に対して子供の引渡しを求めることができません。

調停とは、家庭裁判所で調停委員に間に入ってもらって話し合いを行なう手続です。

審判とは、家庭に関する争いについて家庭裁判所の審判官が結論を下す手続です。

調停で話し合いがまとまらなかった場合は、自動的にこの審判手続に移行しますが、調停を申し立てずに審判を申し立てることもできます。

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緊急時の子の引渡し請求・・・

調停も審判も、家庭裁判所の手続には、結論が出るのに相当の時間がかかります。

調停の申立をしてから最初の調停期日まででも、大体1ヶ月かかります。

調停や審判の結論が出るまで待っていては、調停や審判を申し立てた意味がなくなってしまう場合や、関係者の生活に困難や危険が生じたりする場合があります。

例えば、妻子に暴力を振るう夫から逃げ出したところ、夫に居場所がばれて子供を連れ去られた場合などには、子供に取り返しのつかない危害が加えられてしまうことになります。

緊急性の高い場合の手続としては、審判前の保全処分という制度があります。

審判前の保全処分とは、審判申立後、審判の結論が出るまでの間に、将来の審判内容の実効性を確保するために子供の引渡しを仮に命じてもらう制度です。

離婚に至っていない夫婦間でもこの審判前の保全処分で子供の引渡しを仮に命ずることができるとされています。

また、不当に奪われている人身の自由を司法裁判により迅速かつ容易に回復されることを目的として定められた人身保護請求があります。

ただし、別居中の夫婦間の子供の引渡しには、人身保護請求の利用を制限しています。

また、調停や審判では子供の引渡しまで時間がかかること、またこのような手続では子供の引渡しが認められない可能性があることなどから、子供を実力で連れ去るような事例があります。

このような事例では、妻と離婚係争中の夫が、別居中に妻の監護養育下にある2歳の子を実力行使で連れ去った行為について、未成年者略取罪とされました。

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