公正証書で代金供託前の差押・・・

公正証書で代金供託前の差押・・・

山田建設は仲間の斉藤実業から頼まれて、前の請負人である田中商会が中途で現場放棄した建築工事を斉藤実業の下請けとしてやり遂げました。

しかし、斉藤実業はお金がないと言い、山田建設は斉藤実業に工事代金債務を確認させ、1ヵ月後に支払うという執行認諾約款付公正証書を作成させました。

一方、田中商会の方は、工事代金の未払い分があるとして、山田建設が下請けとして完成させた斉藤実業の工事代金債権に仮差押をかけてきたのです。

これを知った山田建設も、同じく斉藤実業の工事代金債権を公正証書で差押し、二重の差押が執行されました。

山田建設の差押は、公正証書を作っていたため、仮差押の保証金の供託もなく、低費用で差押できたのです。

第三債務者である建築主は、二重の差押に対して、民事執行法156条に基づき、建築工事代金を供託して、事情届を裁判所に提出しました。

(第三債務者の供託)
民事執行法第156条 第三債務者は、差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。次項において同じ。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。
2 第三債務者は、次条第1項に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令、差押処分又は仮差押命令の送達を受けたときはその債権の全額に相当する金銭を、配当要求があつた旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。
3 第三債務者は、前2項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

山田建設は、公正証書の金額に応じて配当を受けることができました。

しかし、山田建設が建築主が供託してしまった後に強制執行した場合には、民事執行法により、配当は受けられなかったのです。

(配当等を受けるべき価権者の範囲)
民事執行法第165条 配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる時までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者とする。
1.第三債務者が第156条第1項又は第2項の規定による供託をした時
2.取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時
3.売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時
4.動産引渡請求権の差押えの場合にあつては、執行官がその動産の引渡しを受けた時

建築主である第三債務者は、すぐに債務額を供託する傾向にあり、供託されてしまった後は、他の債権者は、これに配当要求できませんので、手早く仮差押又は差押をなした債権者は、単独で、全額の配当が受けられるのです。

ここらへんが、公正証書で債務名義をとっておく最大の利点なのです。

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倒産会社の債務者から相殺・・・

取引先の会社が倒産した場合、自社若しくはその関連会社などにあたって、倒産会社に対して、債務を負担している会社を探します。

その債務は、手形債務ではなく、買掛金債務、借入金債務、未払い金債務などの指名債務を探し、これを発見した場合に、次の手続きが考えられます。

①倒産会社の有する指名債権の仮差押、若しくは本差押です。

他の債権者の仮差押、差押と競合すると、請求債権額に按分比例して配当がなされます。

仮差押手続きには、保証金が必要になります。

②倒産会社の債務者に話をつけて、倒産会社に対する債権を譲り受けてもらい、相殺してもらいます。

相殺の交渉がうまくいけば、独占的な回収ができます。

倒産会社の債務者への債権の移転は、売掛債権の場合は、債権譲渡通知を内容証明郵便で行います。

倒産会社に対する債権が、手形債権の場合は、単に裏書譲渡をすればよいことになります。

このような相殺は、倒産会社の銀行へ話をつけて行うことも考えられ、その銀行で倒産会社の発行した手形を割り引いてもらいます。

当座預金が不足して、その手形が不渡りになった場合にも、当分は買戻しもせず、倒産会社が持っている定期預金と相殺してもらうのです。

これは、定期預金があり、かつ、銀行がその倒産会社に貸し込んでない場合ですので、倒産するような場合にはこのような相殺は難しいといえます。

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倒産会社の商品の引揚げ・・・

取引先の会社が倒産した場合、倒産会社の商品の引揚げは慎重にする必要があります。

たとえ、自社の納入品でも、無断で引揚げれば、窃盗になってしまい、あくまでも、同意、納得を得て行う必要があります。

商品の引揚げで重要なのは、その事後処理で、自社の納入品の場合は、返品処理がもっとも一般的な方法です。

その返品が、商品に何か不都合があるとか、規格違いとかの名目が立てば、詐害行為とはならないと考えられるからです。

他者の納入商品の引揚げは、詐害行為として取消しの対象とされる可能性もあるので注意が必要です。

自社の納入した商品が倒産会社の手元にあり、しかも、引揚げを拒否された場合には、先取特権という優先権のある担保物権に基づき、納入先である債務者の占有する商品の競売を申し立てます。

(動産の先取特権)
民法第311条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
1.不動産の賃貸借
2.旅館の宿泊
3.旅客又は荷物の運輸
4.動産の保存
5.動産の売買
6.種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
7.農業の労務
8.工業の労務

この場合、動産競売についての許可を裁判所から得る必要があります。

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