会社更生申立を知る前の相殺・・・

会社更生申立を知る前の相殺・・・

山田工業は、田中商会に対して商品を納入して、3000万円以上の手形債権を有していましたが、田中商会が会社更生の手続きをするとの噂を聞きました。

会社更生手続きの場合、不渡り発生前に、裁判所が財産保全命令を出して、旧債務の弁済禁止、重要な資産の処分禁止などを行いますから、抜け駆けの債権回収はできなくなります。

山田工業は、主要仕入先の斉藤実業に頼み込んで、田中商会の発行した約束手形を斉藤実業が裏書譲渡を受けてくれるように頼みました。

斉藤実業は、逆に、更生申立会社である田中商会から資材などを購入しており、買掛金債務があることがわかったからです。

この場合、田中商会の斉藤実業に対する売掛債権を仮差押するという方法があるのですが、これは会社更生手続きが開始されたり、田中商会が破産したような場合には役に立たなくなります。

しかし、会社更生申立を知る前に取得した債権での相殺は、債権届出期間までに行使できれば、有効ですので、山田実業としては手持ちの田中商会振り出しの手形を斉藤実業より保全管理人に対し、相殺の意思表示をしてもらったのです。

田中商会の保全管理人は、後に管財人に就任しましたが、この相殺を認めることを渋りました。

更正手続開始の申立を知った後に取得した債権による相殺が禁止されているからです。

知った後の手形の譲渡かどうかが問題なのですが、手形の裏書譲渡の日の特定は困難なため、結局、管財人は相殺を認めざるを得ませんでした。

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動産売買の先取特権の物上代位・・・

山田工業は田中商会に商品を売っていましたが、田中商会は、未払いのまま倒産してしまいました。

山田工業が販売した商品は、斉藤実業に納入され、その売掛債権を回収していないことがわかりました。

斉藤実業に納入されたということは、倒産した田中商会の指示で、商品を届けているので、明確でした。

山田工業は、田中商会の斉藤実業に対する商品代金債権は、山田工業の有する動産売買の先取特権の対象になること、つまり物上代位という権利の行使が可能であることを理由に、仮差押手続きをしました。

(物上代位)
民法第304条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

(動産の先取特権)
民法第311条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
1.不動産の賃貸借
2.旅館の宿泊
3.旅客又は荷物の運輸
4.動産の保存
5.動産の売買
6.種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
7.農業の労務
8.工業の労務

この仮差押は、通常の一般債権に基づく仮差押ではなく、物上代位権行使のための仮差押なのです。

山田工業は田中商会を相手に、先取特権の確認を求める訴訟を起こしましたが、途中で、田中商会が破産宣告を受けることになりましたので、田中商会の破産管財人を相手として、動産売買の先取特権の存在を認めさせましたので、田中商会の斉藤実業に対する売掛債権によって、優先的に弁済を受けることができました。

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債務者と所有財産の調査・・・

債権回収を始める場合には、まず債権が誰に対する債権かを確認する必要がある場合があります。

特に個人企業との取引の場合は、債務者は法人としての会社なのか、社長個人なのかを確認する必要があります。

実質的にはオーナーが会社を動かしているのに、奥さんが名目的に代表取締役となっている場合もあります。

また、双方とも了解のもとで契約書上は別の人が当事者として表示される場合などもありますから、誰に対して請求すべきかを確認します。

次に債務者の財産を調べる必要があり、住所地や本籍地の不動産登記簿謄本を取得して、所有名義を確認します。

これらの不動産に共同担保権が設定されて入れば、共同担保目録も取得して、さらに他に債務者名義の不動産がないかを探します。

法人であれば、商業登記簿謄本を取得して本店所在地や支店所在地を確認し、これらについても、同様に不動産登記簿謄本によって所有名義を調査します。

このとき、代表取締役の住所地も調べておきます。

債務者の預金口座を探すことも必要で、これは契約時の提出書類などから取引銀行と支店名を確認します。

また、債務者の取引先を特定できれば、売掛金を押さえることもできます。

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