譲渡担保で所有権だけを移転・・・

譲渡担保で所有権だけを移転・・・

譲渡担保とは、取引上の債務はそのままにしておいて、債務者の財産の所有権を無償で債権者に移転し、債務を弁済したら所有権を戻し、担保物権はその間債権者から債務者が借用するということにし、債務を弁済しないときに担保物権の処分して返済に充てる担保をいいます。

譲渡担保は、担保物の所有権を債権者に移転するので、債権者としては、他の債権者に対する限り、先取りしていますが、いつでも自由に処分できるわけではなく、債務が返済されれば所有権を戻さなければなりません。

所有権を一時預けても、担保物権を引き続き手許において利用できるので、所有権を移さなくても物件を引き渡してしまわなければならない質権に比べると都合がよく、抵当権のつけられない動産に利用されます。

また、質権の対象としにくい倉庫や店頭の商品でも、刻々販売・購入・出庫・入庫して流動するにもかかわらず、内部の商品を一括して集合物として把握し、これを譲渡担保とすることができ、判例でも、構成部分の変動する集合動産についても、その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなど、何らかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、1個の集合物として譲渡担保の目的となりうることを認めています。

スポンサードリンク

集合動産の譲渡担保の判例・・・

集合動産の譲渡担保において、譲渡担保の目的物は債務者の手許にありますから、他の債権者が差押えたり競売にかける可能性があります。

そのような場合、譲渡担保で所有権を取得したものであると主張して、第三者異議の訴えを起こし、競売手続きの排除を求めるためには、目的物を特定し、第三者に対する対抗要件を備えておかなければなりません。

A社は、取引先B社に対して取得する現在及び将来の一切の債権を担保するために、B社の倉庫内及びそれらの敷地内に所在する一切の在庫商品を根譲渡担保として、その所有権を取得し、占有改定の方法で引渡しを完了しました。

(占有改定)
民法第183条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

B社が将来、目的物件と同種又は類似の物件を製造又は取得したときは、原則として全て前記の保管場所に搬入保管し、自動的に譲渡担保の目的物件となることも約定しました。

B社は、C社から材料を購入しして前記の保管場所に搬入しましたが、C社に対する代金未払いのため、C社は動産売買の先取特権に基づいて、C社の売った材料の競売を申し立てました。

(動産売買の先取特権)
民法第321条 動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。

A社は譲渡担保契約により、右材料はA社の所有であるとして、第三者異議の申立を起こしました。

C社は、A社の譲渡担保契約は、目的物が特定していないから無効であることを主張し、対抗要件を具備していないと主張しました。

裁判所は、目的物の種類は包括的なものですが、その所在場所が客観的に明瞭な特定場所の指定であり、右の所在場所にある一切の在庫商品としてその量的範囲が一義的に指定された全部譲渡方式が採用されているから、譲渡担保契約の目的物の範囲の特定は、それだけで既に十分であるとして、A社の譲渡担保契約を認めました。

また対抗要件は、動産先取特権との関係についても、A社は集合物譲渡担保の設定に基づいて、その構成部分である目的物件に譲渡担保権を取得するとともに、占有改定による引渡しを受けてその対抗力を備えたものということができるとして、動産先取特権の追及力を制限しました。

スポンサードリンク

譲渡担保の実行・・・

譲渡担保の実行について、債務者が期限までに債務を弁済しなかったときは、担保を実行することになるのですが、この場合、所有権自体は既に債権者に移っていますので、競売などの法的手続きは必要ありません。

譲渡担保を実行する際に考えることは、債務者に使用させておいた担保物権の引渡しと精算金支払いになります。

判例では、不動産の譲渡担保の場合、債務者が期日までに弁済をなさないときは不動産は確定的に債権者の所有に帰する旨の合意があっても、債権者は右不動産を換価処分するか適正評価して被担保債権に充当し、残額を債務者に支払うべきであり、目的不動産引渡しの訴えは、右支払と引換にのみ認容されるとしています。

目的物件の適正評価、評価額の債権額との差額の確認、差が不足するときは残債権として残り、剰余ができたときは債務者に精算金を支払うという手続きが必要なのです。

また、目的物件を債権者の所有に確定的に帰属させるのではなく、債権者の方で、第三者に売るなどの処分をして、その代金を債権の回収に充てることもできます。

この場合は、目的物件の引渡しが先になり、特に動産は先に引渡しを受けないと処分できませんから、精算金の支払が後になります。

どちらにしても、担保物権の価額が債権額を上回るときは、差額を債務者に精算金として支払う必要があります。

スポンサードリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする