売掛金の支払の遅延などの保全・・・
売掛金の支払いを請求した場合に、資力がなく支払えない取引先には、期限の猶予を与えたり、分割払いで支払わせたりする必要が出てきます。
しかし、期限の猶予を与えたり、分割払いを認めても、次回の期日に、また支払ができないと言ってきては意味がありません。
このような約束をする際には、まずは猶予を与えたり、分割払いを認める代わりに、担保を入れるよう交渉したり、保証人をつけるよう交渉します。
債権の保全で、最も大切なのは、担保をつけたり、保証人をつけることです。
また、同時に公正証書による契約にする交渉もしておくと、裁判で判決をもらうことなく、強制執行をすることができます。
公正証書にする内容は、売掛債務の確認をいれ、債務の支払い方法を記載し、保証人などをつけてもらえるなら、連帯保証してもらえる旨を規定します。
そして、強制執行認諾約款を入れます。
これが、公正証書で定めた金銭債務を履行しないときには、債務者、保証人はその財産に対して強制執行を受けてもよいという条項です。
これは、当然に入るの条項ではなく、債務者の承諾のもとに規定するもので、これがなければ強制執行できなくなります。
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根抵当権として担保できる債権・・・
商人間の取引は継続的なものが多く、そのため取引によって発生する債権も増えたり減ったりして不特定です。
このような不特定な債権を担保するために不動産上に設定される権利を根抵当権といいます。
しかし、民法は商人間に発生する債権の一切を担保するという包括根抵当は認めていないのです。
根抵当は一定の範囲に属する不特定の債権を担保するもので、次のようなものに限られます。
①債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるもの
②債務者との一定の種類の取引によって生ずる債権
③特定の原因によって債務者との間に継続的に生ずる債権
④手形上もしくは小切手上の請求権
被担保債権の範囲を一定の種類の取引と定めて根抵当権を設定すれば、根抵当権設定以前の商品の売掛金も担保されることになります。
根抵当権というのは、「一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度で担保する」というもので、抵当権のように特定の債権のみを担保するものとは異なります。
担保される債権は特定のものでなく、根抵当権実行時に特定できればよいのですから、被担保債権は「一定の範囲に属する不特定の債権」ということになるのです。
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根抵当権の譲渡・・・
取引先のA社の注文が多くなり、売掛金が増えてきたので、A社の不動産に根抵当権を設定したいのですが、B社が1番順位に3000万円の根抵当権をつけていたのですが、現実には取引額が500万円ぐらいしかないようなのですが、これを利用することはできますか?
民法では、根抵当権の譲渡を認めています。
根抵当権は、その譲渡があった場合には、根抵当権譲受人と債務者間において定められた被担保債権の範囲に属する債権を、債権極度額を限度として担保することになり、根抵当権譲渡人の債権は担保されなくなります。
根抵当権の譲渡とは、担保の枠を譲渡することをいいます。
根抵当権は分割して譲渡することもでき、債権極度額3000万円の根抵当権者が、このうち1000万円を債権極度額とする根抵当権と、残りの2000万円を債権極度額とする根抵当権とに分割して譲渡することができます。
この場合は、根抵当権が2つ別々のものになります。
根抵当権の譲渡や分割譲渡は、元本の確定前ならいつでもできますが、根抵当権者が根抵当設定者の承諾を得てしなければなりません。
根抵当権者が根抵当物件の所有者の承諾を得れば譲渡や分割請求ができ、後順位の根抵当権者その他の担保権者の承諾は不要です。
また、根抵当権者が既に設定していた被担保債権の範囲が同一でない場合には、取引内容に従って被担保債権の内容を変更しなければなりません。
また、根抵当権の一部譲渡という方法があり、この場合は根抵当権の分割譲渡と異なり、根抵当権は1個であって、これを譲渡人と譲受人が共同で所有するという準共有の関係になります。
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