共同抵当の配当方法・・・

共同抵当の配当方法・・・

債務者の1つの不動産では債権の担保として不足しているときや、土地と建物などのように一体として担保にとらなければ意味がないときなどには、複数の不動産をまとめて共同抵当を設定します。

登記簿をみて、「共同担保目録(ち)第****号」と記載され、その不動産が他の不動産と共同担保になっているものです。

共同担保目録を取寄せると、どの不動産が共同で抵当権設定されているか調べることができます。

共同抵当の抵当権者は、どれか特定の不動産だけを競売にかけて回収を図る異時配当も、一度に全ての不動産を競売にかけて回収を図る同時配当もできます。

同時配当の場合として、債権額が5000万円である債権者が、6000万円の物件と4000万円の物件に共同抵当を設定していると、按分しますから、6000万円の物件からは3000万円の回収、4000万円からの物件からは2000万円の配当を受けます。

債権額5000万円の1番抵当権の債権者

共同抵当物件 6000万円→3000万円回収

共同抵当物件 4000万円→2000万円回収

異時配当の場合として、債権者が6000万円の物件からだけ回収すると、6000万円の物件の2番抵当以下の債権者は、1番抵当の債権者が5000万円を回収しますから、1000万円しか回収できないことになるのです。

債権額5000万円の1番抵当権の債権者

共同抵当物件 6000万円→5000万円回収

共同抵当物件 4000万円→0万円回収

これでは、下位抵当権者は上位抵当権者の選択いかんで回収に大きな影響を受けてしまいます。

そこで、もし同時配当をしていたならば、6000万円の物件からは1番抵当権者は3000万円を回収しますから余力が3000万円残り、2000万円回収できるはずだったわけですから、この限度で4000万円の物件には抵当権を設定していない2番抵当権者以下は、4000万円の物件から回収できるのです。

債権額5000万円の1番抵当権の債権者

共同抵当物件 6000万円→5000万円回収

共同抵当物件 4000万円→0万円回収→2番抵当権者以下2000万円回収

これは、抵当権を譲渡するような形になります。

しかし、共同抵当に入っている物件が、いずれも債務者本人が担保に提供しているものに限られます。

例えば、6000万円の物件は債務者本人の物件、4000万円の物件は債務者ではない担保提供者である物上保証人の場合には、できません。

これは、共同抵当になっている物件に担保提供者である物上保証人の不動産が含まれているときは、同時配当でも、まず債務者所有の不動産から配当を受け、それでも不足したときに物上保証人の不動産から配当させるとされているのです。

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抵当権の注意点・・・

1億円の土地建物に抵当権を設定しようとする時、第1順位に銀行が6000万円、第2順位に他の債権者が5000万円を設定していると、この土地建物に抵当権をつける意味はありません。

ただし、第1順位の銀行の6000万円は住宅ローンである可能性があり、その場合、登記簿上の債権額どおりの残額が残っているとは限りません。

上位抵当権者がいるときは、その残債を確実な資料から判断して担保価値が残っているかを調べることが必要です。

上位抵当権者が根抵当権の場合、最終的には極度額まで担保されるので、現時点の残債務を調査しても、変動している可能性があります。

なお、抵当権の順位は契約の日時ではなく、登記の日時で決まります。

抵当権は、不動産以外でも設定でき、自動車抵当法や工場抵当法によって定められています。

また、借地権そのものに抵当権を設定することはできませんが、建物に抵当権を設定するような場合には、建物だけでなく借地権についても抵当権が及びます。

この場合、建物自体より借地権のほうに価値があることがあり、建物を担保に取る場合には、建物所有者がきちんと地主に賃料を支払うよう義務付けるなどして、借地権が消滅してしまうことのないようすることが必要です。

また、裁判所が行う競売を妨害すれば、強制執行妨害罪や競売妨害罪という刑事犯罪行為になります。

抵当権の設定登記よりも後に設定された賃借権は競売による代金納付から6ヶ月以内に建物を明渡さなければなりません。

競落人は6ヶ月待てば引渡命令によって賃借人を追い出すことができることになります。

しかし、それでも占有するような場合があります。

このような場合には、保全処分命令によって債務者に担保不動産の価値下落行為を禁止させたり、執行官に建物を保管させることで占有を防止させることができます。

また、抵当不動産が抵当権のついたまま第三者に売却されることもあります。

その第三者から抵当権者に対して「いくら支払うから抵当権を抹消しろ」という抵当権消滅請求がされてくることもあります。

条件がよければ承諾すればよいし、納得がいかないようなら提示を受けてから2ヶ月以内に競売申立てをする必要があります。

競売申立てをしないと、抵当権消滅請求を承諾したことになります。

また、駐車場などの更地に抵当権を設定させたところ、抵当権設定者が土地を第三者に売却して、その新所有者が自宅を建ててしまったなどの場合には、土地と建物を一括して競売申立てできます。

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質権の性質・・・

質権は、被担保債権の回収を担保するために債務者又は第三者の物を占有することをいいます。

民法上の質権では流質契約は認められませんが、商取引の質権は商事質で、流質契約もできます。

質権は、動産・不動産・権利に設定できます。

債権質とは、抵当権を設定させた建物などの火災保険金に質権を設定するとか、金銭消費貸借の担保のために預金に質権設定することなどをいいます。

動産質の場合、完済するまで返還しないという留置的効力を利用して返済を担保することになります。

質権者は質権を有する間は、その動産から優先的に弁済を受けられます。

競売手続による換価が原則ですが、企業取引の場合には流質契約に基づいて自ら売却処分して代金を弁済の充当できます。

代物弁済させることも特約でできます。

債権質の場合には、質権設定させた債権の債務者である第三債務者に直接取り立てをすることができます。

第三債務者の債務が先に弁済期になってしまったときには、後日、質権を行使するために供託を求めることができ、供託金に質権が存続することになります。

質権では、貸金債権の元本・利息・違約金だけでなく、質権実行の費用や質物の保管に要した費用、質物の隠れた瑕疵によって被った損害賠償金も質物から担保されます。

ただし、質物は善管注意義務をもって保管しなければならず、いい加減に保管していたため質物が毀損してしまったような場合には、損害賠償請求を受けることになります。

債権質の場合には留置的効力は意味は無いのですが、証書があるときは証書の交付を受けなければ効力が発生しません。

第三者に質権を主張するためには債権譲渡と同じく確定日付のある通知・承諾が必要になります。

通常、質権設定の承諾書を質権設定した債権の債務者に提出してもらうようになります。

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