銀行預金の担保とは・・・
銀行預金を担保に取る方法としては、質権の設定と譲渡担保とがあります。
預金には、普通預金、当座預金、定期預金、通知預金等、様々な種類があります。
預金額が変動する普通預金や当座預金は、担保として適当ではありません。
逆に定期預金などは変動も少なく、担保として適しています。
しかし、現在では、銀行の預金通帳に記載されている預金規定の文言で、「この預金は当行の承諾なしに譲渡・質入はできません」と書かれています。
これは、銀行が預金証書に譲渡・質入禁止の特約を付しているわけです。
債権者は、預金を担保に取る前に、それについて銀行から承諾を得られるかの確認をする必要があるわけです。
銀行が預金者に貸付を行い、預金者がその銀行に預けている定期預金をすでに担保にしている場合もあります。
このような場合には、銀行がその定期預金を他に担保に入れることを承諾することはないと考えられます。
預金について質権を設定する場合は、質権設定契約を結び、担保差入証を取り付けることになります。
質権設定の効力を発生させ、銀行から質権設定の承諾を取り付ける必要があります。
また、債務者が同一銀行に幾種類かの預金を何口も持っていることがあります。
このような場合は、担保の目的とすべき預金を特定する必要があります。
取扱支店名、預金の種類、証書名と番号、額面、証書の日付、満期日などによって特定します。
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株式の担保とは・・・
株式を担保に取る場合、その銘柄に注意が必要です。
上場株式については、担保として問題はありませんが、そうでないような場合には注意が必要です。
株式を担保に取る方法としては、質権の設定と譲渡担保があります。
株式の質権設定では、質権設定契約を結ぶ事が必要になり、株券発行会社の株式の質入には、さらに株券を交付する事が必要です。
株式についての質権の設定は、略式株式質と登録株式質の2つの方法があります。
略式株式質は、株券発行会社の株式又は振替株式(上場株式等)について認められます。
株券発行会社の株式に質権を設定する時は、当事者間の質権設定契約と株券の交付によって質権設定の効力が生じ、それを第三者に対抗するためには、株券の占有継続が必要です。
この場合には、株主名簿への記載等を行わないので、発行会社に質権設定の事実がわかりません。
振替株式に質権を設定する時は、質権設定契約と振替先口座の質権者欄の記載・記録によって質権設定の効力が生じますが、株式発行会社への総株主通知の際には、質権設定者である株主のみが通知されるので、この場合も会社は質入の事実がわかりません。
株式登録質は、略式質の要件に加えて、株主名簿に質権者の氏名、住所を記載・記録する事になるので、質権者は、会社から直接に剰余金の配当、残余財産の分配等を受ける事が可能になります。
株式の譲渡担保は、担保の目的のもとに株式を譲渡するものですが、この場合は原則として当事者間の譲渡担保契約の締結で効力を生じますが、株券発行会社の株式を対象とするときは、株券の交付が必要となります。
振替株式には、総株主通知の時に、加入者の申出に基づいて特別株主である譲渡担保権設定者を会社に通知する方法があり、これが譲渡担保にあたります。
非上場の中小企業では、定款で株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨を定め、株式の譲渡について制限をしています。
このように譲渡が制限されている株式を譲渡担保にとるには、担保設定の時点で会社に譲渡承認請求の手続をとっても、その承認が得られない場合に、会社又は別の第三者を譲渡の相手方に指定されると、債権者に株式の名義を移す事ができません。
定款で譲渡が制限されている株式を譲渡担保にする場合は、担保実行の段階で会社に譲渡承認の請求をすることとして、譲渡担保契約の段階では、債務者に会社に対する株式譲渡承認請求に必要な書類を作成させ、その交付を受けておく必要があります。
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公社債の担保とは・・・
公債とは、国や都道府県などの地方自治体が発行するもので、国の発行するものを国債、地方自治体が発行するものを地方債といいます。
社債とは、株式会社が発行します。
これらは全て発行者が資金調達をするために発行します。
これらをまとめて公社債といいます。
公社債は株式に比べると担保価値の変動が少なく、担保としては安定しています。
公社債の担保方法としては、質権設定と譲渡担保があります。
国債の発行については国債券は発行されなくなっており、質権の設定は、口座管理機関・振替機関の質権欄に記載・記録することで効力が生じ、それと同時に第三者に対抗できることになっています。
無記名社債は、質権設定契約の締結と社債券の引渡しで効力が生じますが、動産とみなされますので、社債券の占有の継続が質入の対抗要件となります。
記名社債は、質権設定契約と社債券の交付により効力が生じますが、会社その他の第三者に対抗するためには、社債原簿の質権欄に記載・記録し、かつ債権に氏名を記載しなければなりません。
振替社債の場合は、国債と同様に、振替の手続をしてはじめて質権の効力が生じ、かつ対抗要件が備わります。
譲渡担保の場合、無形名社債であれば、譲渡担保権設定契約の締結と社債券の引渡しが効力要件、社債券の占有継続が対抗要件となります。
記名社債では、譲渡担保権設定契約と社債券の交付で効力が生じますが、対抗要件を充たすためには社債原簿の記載・記録が必要です。
国債や振替社債の場合には、口座管理機関・振替機関の記載・記録が効力要件と同時に対抗要件となります。
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手形の担保とは・・・
債務者がその取引先などから売買代金等の支払のために受け取っている手形を、債権者が担保のためにとることがあります。
これを手形の担保といいます。
これは、債権者が自己の取引先に債務の支払のために手形を振り出させて、これを受け取っている場合とは異なります。
手形を担保に取る方法は、譲渡担保と質入があります。
譲渡担保の場合には、譲渡担保の合意をし、債権者に担保手形に裏書譲渡をします。
裏書によって債権者は手形上の権利者となり、手形債権者に対して手形上の権利を行使することができます。
手形を質入させる場合には、普通の裏書方式に「質入のため」「担保のため」など、質権の設定を示す文言を記載する事が必要です。
そのうえで、債権者は手形の交付を受けます。
被裏書人である質権者は、手形の振出人、裏書人など手形債務者に対し、手形上の権利を行使することができます。
このほかに、隠れた質入裏書というものもあります。
これは、実際は質入の目的を持ちながら、形式上、譲渡裏書をすることをいいます。
手形としても、譲渡裏書として取り扱われ、質入の目的でなされたことは、当事者間にとどまります。
手形を担保に取るときは、その手形の手形要件に欠けるところがないか、裏書が連続しているかなども注意する必要があります。