抵当権の優先弁済の範囲とは・・・
抵当権者が競売手続の時点で、優先弁済を主張できる範囲としては、被担保債権の元本と、利息、遅延損害金などについても優先弁済を受ける事ができます。
ただし、利息、遅延損害金については、満期となった最後の2年分だけということになっています。
時間の経過で増大していく利息や遅延損害金も、同順位で優先弁済が受けられるとすると、後順位の抵当権者への弁済が受けられなくなったり、一般債権者にも損害を与えてしまいます。
他に後順位抵当権者など他の債権者がいないときには、抵当権者は延滞している利息全額の弁済を受ける事ができますし、そうでない場合も、抵当権者のほうで延滞されている利息などについて、満期後特別の登記をすれば、その事情を後順位抵当権者や一般債権者も知る事ができますので、その延滞利息等についても、登記の時より優先弁済権を取得するとされています。
抵当権者が利息のほかに弁済期経過後の遅延損害金についても、優先弁済を受けようという場合で、延滞利息があるときは、優先弁済を受けられる遅延損害金は、延滞利息と通算して満期となった最後の2年分となります。
根抵当権の場合は、確定時において存在する元本及び利息、遅延損害金、並びに確定後配当時までに生ずる利息、遅延賠償の全部を極度額まで担保しようというものですから、2年分という制度は適用になりません。
極度額の範囲内であれば何年分についてであっても優先弁済を主張する事ができます。
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担保不動産収益執行とは・・・
抵当権は、抵当権者が目的物の交換価値のみを支配し、抵当権設定後であっても目的物は引き続き設定者が手許にとどめ、それが生み出す収益は設定者に委ねられます。
しかし、不動産価格の下落などの影響で、交換価値で換価価値がなくなり、目的物のもつ収益を生み出す価値に着目し、それによって債権回収を図るようになってきました。
最高裁は、抵当不動産が賃貸された場合、抵当権者は物上代位により、賃借人が供託した賃料の還付請求権についても抵当権を行使することができる、と判示しました。
担保不動産収益執行とは、抵当物件における賃料債権等につき物上代位する手法をいいます。
しかし、物上代位では、賃料債権を差し押さえた者だけが債権回収を行いますから、複数の抵当権者がいる場合に、その順位に従った適切な配当がなされることが困難であるなどの問題点があります。
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担保不動産収益執行手続の流れとは・・・
担保不動産収益執行手続の流れとして、申立は、抵当権者のほか、一般先取権者、不動産先取権者、不動産質権者にも認められています。
管轄裁判所は、不動産所在地を管轄する地方裁判所になり、申立には、権利を証明するために登記事項証明書などの文書を提出する必要があります。
申立権者の申立により、執行裁判所は不動産収益執行の開始を決定します。
開始決定において、不動産を差し押さえる旨が宣言され、債務者に対して収益の処分を禁止し、債務者に対して賃料等を支払うべき給付義務者がいるときは、その者に賃料等を管理人に交付すべき旨が命じらます。
執行裁判所は、開始決定と同時に管理人を選任します。
管理人の資格に制限はなく、執行官や弁護士だけでなく、信託会社、銀行その他の法人も管理人になることができます。
管理人は、管理、収益の収受、換価をすることができ、債務者の占有を解いて、自ら不動産を占有することも可能です。
管理人には、管理権限が認められていますので、賃貸借契約の解除、更新等を行うことも、新たに賃貸借契約を締結する事もできます。
収益の種々は、後に収穫すべき天然果実及びすでに弁済期が到来し、または後に弁済期が到来すべき法定果実を対象としています。
法定果実とは、物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物をいい、不動産の賃料などです。
管理人は、賃料等の収益を収受した上、不動産に課される租税その他の公課及び管理人の報酬その他の費用を控除した残額について、執行裁判所の定める期間ごとに、配当等にあてるべき金銭の額を計算して、配当等を実施しなければなりません。
ただし、管理人が配当するのは、配当額について債権者間の協議が調った場合に限られ、協議不調の場合は、管理人がその執行裁判所にその旨を届け出て、執行裁判所が配当を実施する事になります。
配当を受けられるのは、執行裁判所が定める配当金計算期間の満了までに、強制管理の申立をした者、一般の先取特権の実行として不動産収益執行の申立をした者及び不動産収益執行の開始決定の差押登記前に登記された担保権に基づき不動産収益執行の申立をした者になります。
また、不動産収益執行の開始決定前に物上代位による差押、仮差押命令を得ていた者も不動産収益執行手続の中で配当を受けることができます。
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