代物弁済予約の仮登記の必要性とは・・・

代物弁済予約の仮登記の必要性とは・・・

不動産について代物弁済の予約を結んだ場合は、代物弁済予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記をするべきです。

仮登記をしないでいると、その不動産に他の第三者の抵当権が設定されたり、あるいは、第三者への所有権移転登記がなされてしまう危険性があります。

代物弁済の予約は、所有権移転請求権保全の仮登記ができることになっているわけですから、やっておくべきです。

仮登記をしておけば、後日、代物弁済によってその不動産の所有権を取得した時に本登記をすれば、その本登記の順位は仮登記の順位になります。

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仮登記担保権の実行通知とは・・・

代物弁済の予約は、債権者が予約完結の意思表示を相手方に対して行わなければなりません。

後日の立証のために証拠に残る形で行います。

内容証明郵便で配達証明付で行う方法が、通常です。

仮登記担保法は、債権者が仮登記担保契約によって目的不動産の所有権を取得しようとするとき、債権者において、あらかじめ債務者又は物上保証人に対し、仮登記担保権の実行通知をし、その通知が債務者らに到達した日から2ヶ月の清算期間が経過しなければ債権者は目的不動産の所有権を取得する事ができないとされています。

債権者は、この実行通知で、精算金の見積額と、清算期間が経過した時の土地等の見積価額、債権、債務者が負担すべき費用で債権者が代わって負担したものの額をあきらかにしなければなりません。

仮登記担保の実行通知は、予約を完結する意思を表示した日、停止条件が成就した日その他のその契約において所有権を移転するものとされている日以後に、債権者がなすべきものとなっていますので、代物弁済予約完結の意思表示をした同じ日に仮登記担保権の実行通知をしてもよいわけです。

予約完結の意思表示の通知と仮登記担保権の実行通知と2回の通知が必要なように思われがちですが、必ずしも各別に通知する必要はなく、債権者は予約完結の意思表示と実行通知とを同一の書面により行えば、要件を満たすことになります。

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仮登記担保と利害関係人・・・

債権者は、債務者等に仮登記担保権の実行通知をしなければなりませんが、目的不動産につき、債権者の仮登記がなされた後に先取特権、質権、抵当権又は担保仮登記の担保権の登記を受けている後順位の担保権者がいる場合は、債務者等への仮登記担保権実行通知後、遅滞なく、これら後順位担保権者等に対し、一定の事項を通知しなければなりません。

後順位担保権者に通知すべき事項は、債務者等に担保の実行通知をしたこと、その通知の到達日、及び債務者等に通知したのと同一の事項です。

後順位担保権者が通知を受けた精算金の額に不満がないとき、後順位担保権者は、債務者等の有する精算金請求権について物上代位し、優先弁済を受ける事ができます。

この場合は清算金の払い渡しがある前に差押をしなければなりません。

この物上代位をすることができる権利者の中には後順位の担保仮登記の権利者も含まれます。

後順位担保権者が債権者の見積額に不満があるときは、目的不動産について、清算期間内に競売の請求をすることになります。

ただし、後順位の担保仮登記の権利者については、清算金額について物上代位をすることはできますが、競売の請求をすることまでは認められていません。

競売手続に進んだ場合は、その手続に仮登記権利者の参加を求め、仮登記担保権者にも抵当権と同じように優先弁済権を認めて、配当手続を通じ、各債権者の利害が調整されます。

競売手続で配当要求の終期が定められると、裁判所から仮登記権利者に対し、その仮登記が担保仮登記であるかどうか、担保仮登記であるときはその旨並びに債権の存否、原因、額を届け出るよう催告してきます。

この催告があったときは、債権者は届出をする必要があります。

競売の手続に入りますと、仮登記担保権者も目的不動産の所有権を取得する事ができなくなります。

ただし、競売手続で、担保仮登記の権利者は、その権利を抵当権とみなされ、その担保仮登記がなされたときに抵当権の設定登記がなされたものとみなされ、債権の優先弁済を受ける事ができます。

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仮登記担保権の清算義務・・・

債権者は、仮登記担保権の実行通知が債務者等に到達後2ヶ月の清算期間を経過した時、目的不動産の所有権を取得する事になりますが、その場合、その時点における目的不動産の価額と債権額とを対比して、不動産の価額が債権額を超えているときは、債権者は債務者等に対し、その越えている額に相当する金銭を精算金として支払って、清算を行わなければならないことになっています。

債権者のこの精算金支払いの債務と債務者等の目的不動産の所有権移転登記、引渡しの債務とは同時履行の関係になり、債権者としては清算期間経過後に清算の支払いと引き換えに目的物件の引渡しと所有権移転本登記手続を求める事が必要です。

これらの定めに反する特約を当事者の間で結んでも、債務者等に不利なものは原則として無効とされます。

債権者の精算金支払債務は、実行通知到達後に支払う事になります。

将来の債務であるため、清算期間が経過するまでは債務者等も精算金請求債権を他に譲渡したり、処分する事はできないことになっています。

債権者も期限が到来しないのに精算金を支払う事は認められません。

債権者が清算期間経過前に精算金の支払をしても、債権者はその支払を、後順位の抵当権者等に対抗する事はできません。

仮登記担保権の清算と受戻権・・・

債務者等は、債権者から仮登記担保権の実行後の精算金支払を受けるまでは、債権等の額に相当する金銭を債権者に提供して目的不動産の所有権の受戻しを請求する事ができます。

債権等の額というのは、債務者の債務が仮登記担保権の実行によって消滅しなかったとすれば債務者が支払うべき金額の事であり、元金、利息、遅延損害金のほか債務者の負担すべき費用がある場合には、その費用も含みます。

債務者等によるこの受戻権の行使は、精算金が支払われた後に、これを行うことができません。

また、清算期間が経過した時から5年を経過した時、及び第三者が目的不動産について所有権を取得した時もこれを行使できなくなります。

代物弁済予約完結と清算等の通知書のひな形とは・・・

平成**年**月**日

住所 ************
株式会社****
代表取締役 **** 殿

住所 ************
****株式会社
代表取締役 **** 印

通知書

当社は、貴社当社間の平成**年**月**日付金銭消費貸借等契約書に基づき、貴社に対し、同日、金***万円を、弁済期平成**年**月**日、利息年**%、遅延損害金年**%の約定で貸し渡し、貴社は、上記債務を弁済期に弁済することができないときは、後記不動産(以下「本件不動産」という。)をもって代物弁済とする旨の予約をされました。そして、当社は同年**月**日、本件不動産につき、**法務局**出張所受付第**号をもって、上記代物弁済予約に基づく所有権移転請求保全の仮登記を終了しました。

しかしながら、貴社は、弁済期日が経過したにもかかわらず、いまだに上記債務を弁済されませんので、当社は、上記代物弁済の予約契約に基づき、本件不動産の所有権を取得すべく、ここに代物弁済予約完結の意思表示をいたします。

なお、本書到達の日から2ヵ月後における本件不動産の見積価額及び当社が貴社に対して有する債権額は、次の通りです。

本件不動産の見積価額 金***万円

債権額 合計 金***万円

内訳

(1)元本 金***万円

(2)未払い利息 金***万円

(3)遅延損害金 金***万円

したがって、本件不動産の価額は、債権額よりも金**万円超過することになりますので、上記金額を精算金として、本書到達の日から2ヶ月経過後、直ちに本件不動産の引渡並びに本件不動産についての所有権移転の本登記手続と引き換えにお支払いたします。

以上

不動産の表示

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根担保仮登記とは・・・

根担保仮登記とは、債権確保のための代物弁済の予約や停止条件付代物弁済契約を結ぶときに、被担保債権が取引の継続で債権の額の増減があるような場合の仮登記担保契約をいいます。

根担保仮登記はその効力において通常の担保仮登記と異なり、強制競売や担保権の実行としての競売において、この根担保仮登記は効力を有しません。

破産手続や会社更生手続においても、効力を有しません。

後順位の仮登記担保権者は、債務者等の有する清算金額請求権に対して物上代位する事もできません。

先順位の仮登記根担保権者が債権額を超えるものを代物弁済で得た場合、清算手続きによって価額の超過分を債務者に返還しなければなりませんが、その返還される金銭を後順位の仮登記根担保権者が差し押さえる事はできません。