先取特権の種類・・・

先取特権の種類・・・

先取特権とは、賃金や売買代金などを相手方の財産から優先して弁済を受けることができる権利をいいます。

一般先取特権とは、債務者の総財産から優先的な弁済を受けられるもので、小口の債権に限定されて認められており、未払賃金の支払いを従業員に求められるような場合です。

(一般の先取特権)
民法第306条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
1.共益の費用
2.雇用関係
3.葬式の費用
4.日用品の供給

動産先取特権は、債務者の特定の動産から優先的に弁済を受けられるものです。

しかし、動産先取特権は、債務者がその動産を誰かに売却してしまうと行使できなくなります。

また、優先配当を受けるには、動産競売の手続きを経なければなりません。

動産売買の先取特権は、他の先取特権より優先順位が低くなっており、一般取引における担保としては実用的ではないといえそうです。

(動産の先取特権)
民法第311条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
1.不動産の賃貸借
2.旅館の宿泊
3.旅客又は荷物の運輸
4.動産の保存
5.動産の売買
6.種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
7.農業の労務
8.工業の労務

不動産先取特権は、不動産の売買代金、工事代金を優先的に回収するために規定されていますが、その主張には登記が必要で、これも実用的ではないといえそうです。

(不動産の先取特権)
民法第325条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
1.不動産の保存
2.不動産の工事
3.不動産の売買

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抵当権の性質・・・

抵当権は、債務者や保証人の所有している不動産を担保として、債務不履行などがあると競売によってその不動産を売却した代金から回収し、あるいは収益執行によって、その不動産が生み出した賃料等の収益から回収をします。

抵当権は、物を抵当権設定者のもとにとどめて自由に使用させ収益を上げさせることができるものです。

抵当権は担保提供した不動産が第三者に売却されても消滅することなく、常にその物の価値を支配し続けます。

そのため、不動産登記簿に抵当権を設定したことを登記する「公示」をしなければ第三者に対して対抗できないとされます。

抵当権には、通常の抵当権と根抵当権があり、設定の仕方として共同抵当と物上保証とがあります。

抵当権は、それによって担保される債権があって初めて設定が認められます。

元となる金銭消費貸借契約や準消費貸借契約があり、その後で債務者所有の不動産などを担保提供させるような場合には、抵当権を設定するためだけの抵当権設定契約を締結します。

抵当権を設定するときには、どの債権を担保するのか、金額や利息・損害金を登記に記載しなければなりません。

一度、抵当権を設定すれば、1000万円の貸金債権が残り10万円になっても不動産全体に対して抵当権を持ち続けることになります。

また、一度1000万円で設定した抵当権の債権額を増加させることもできず、改めて抵当権を設定しなおすか、別の物件への抵当権設定を追加させなければなりません。

改めて抵当権を設定する場合、後順位抵当権者がいると、さらに下位順位でしか抵当権を設定できない場合があります。

抵当権では利息・損害金は最後の2年分のみしか担保されません。

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根抵当権の性質・・・

抵当権では、その債権を担保するのかを確定させなければならないので、継続的な取引によって日々債権額が変動するような場合には、そのつど抵当権を設定しなおす必要があります。

このような継続的な取引などには、一定の極度額の範囲で担保させる根抵当権が利用されます。

最初の貸付金については残額はなくても、その後発生した貸付金の担保のために根抵当権をを使い続けることができるのです。

根抵当権では、どんな債権でも担保できるのではなく、範囲をある程度特定しなければなりません。

根抵当権の被担保債権の範囲

被担保債権 種類 具体例
取引上の債権 特定の継続的取引契約から生ずる債権 商品売買基本取引契約
特定の「契約」の存在が必要
債務者との一定の種類の取引から生ずる債権 銀行取引、工業機械売買取引
基本契約の存在は必要なく、「取引」の種類が特定されていればよい
取引外の債権 特定原因に基づき債務者との間に継続して生ずる債権 損害賠償請求権
手形・小切手上の請求権

被担保債権の範囲は根抵当権の設定の際に登記簿に記載されます。

また、現時点では具体的な取引をしていなくても、近い将来行うこととなる取引についてはあらかじめ被担保債権の範囲に記載しておくこともできます。

根抵当権では極度額という枠は固定していますが、実際の債権額は常に変動し続けています。

この債権額を確定させてしまうのが元本確定で、確定すると、以後は通常の抵当権と同じ状態になります。

元本確定するのは、あらかじめ契約で定めていた「確定期日の到来」だけでなく、「根抵当権者による競売・収益執行の開始」「債務者・根抵当権設定者の破産宣告」や、確定期日を定めていない場合に根抵当権設定者が根抵当権設定から3年経過後にできる「元本確定請求」をしてから2週間が経過したときなどがあります。

これらについては特約などで排除することができません。

債権者は、元本確定されてしまうと、それ以降の債権を根抵当権で担保させることができなくなります。

元本の確定前までは、新たに加わった継続的取引契約や取引の種類を追加するなどの被担保債権の範囲の変更ができますし、極度額についても変更ができます。

ただし、極度額の変更は、下位担保権者に影響を及ぼしますので、これらの利害関係人の承諾が必要になります。

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