相殺で債権回収する・・・
相殺というのは、債権者と債務者とが、お互いに債権を持っている場合に、一方の意思表示によって、対等額だけ双方の債権を消滅させるものをいいます。
債権者が債務者に対して100万円の売掛金を持っており、債務者が債権者に対して200万円の売掛金を持っているという場合に、債務者の売掛金債権の支払期日が過ぎていれば、相殺の通知を出すだけで100万円について相殺する事ができます。
相殺というのは、通知一本で債権回収できる決済方法ですが、相殺を行うには、いくつかの条件があります。
債権者と債務者とがお互いに同種の債権を所持していなければなりません。
また、相殺をするには、相殺の禁止されていない債権であることが必要です。
相殺禁止に当たるものは、不法行為による損害賠償請求権、賃金債権、差押禁止債権、抗弁権の付いている債権などです。
また、双方の債権が相殺できる状態にあることが必要です。
これを相殺適状といいます。
要するに、両債権が弁済期になければならないわけです。
ただ、弁済期前でも、支払う意思があるのであれば期限の利益を放棄して相殺をする事ができます。
そして、相殺の通知はしなければなりません。
例えば、取引先と相殺の予約をしたような場合を考えます。
相殺契約は個々の債権債務について、当事者間において、相殺して債務を消滅させる合意をいいます。
これを将来発生する債権を相殺しようという合意が相殺予約契約です。
このような予約契約をしておくと、相殺適状になるのを待たずに、どんどん相殺して、第三者からの差押に対して、相殺を主張して対抗できます。
民法505条(相殺の要件等)
一 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対等額について相殺によってその債務を免れる事ができる。
ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りではない。
二 前項の規定は、当事者が反対の意思表示した場合には、適用しない。
ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することはできない。
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債権譲渡で債権回収する・・・
債権譲渡とは、債務者の所有している債権を、債務者の弁済として受け取る方法をいいます。
債権は自由に誰に対しても譲渡できますので、債務者は債権者に対して、債権譲渡をすることができます。
債権譲渡の場合には、債権の譲渡人が譲り渡す債権の債務者に譲渡の通知をするか、または債務者が債権譲渡の承諾をしたときに、債務者や他の債権者などに譲り受けた権利を主張できる事になっています。
この通知や承諾は、確定日付のある証書によって行うことが必要です。
債権譲渡について、債権を一括して担保として活用する「集合債権譲渡担保」などもあります。
この集合債権譲渡担保は、判例で認められています。
債権譲渡は、個別に債務者の承諾や通知を確定日付のあるものでしなければなりませんが、平成10年に制定された「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」では、登記所の債権譲渡の登記ファイルに登記をすれば、当該債権の債務者以外の第三者については、確定日付の通知があったものとみなされ、また、この登記事項証明書を債務者に通知し、債務者が承諾した場合も債務者に対抗できるようになりました。
担保の設定に必要な事項は次になります。
①債務者の所有する債権の特定(指名債権で複数の債権も可能)
②特定されたそれぞれの指名債権の金額の確定
③第三者への対抗要件として債権譲渡登記ファイルへの登記(登記日が確定日付になる)
④債務者が譲渡する債権の債務者に対して「登記事項証明書」を交付し通知する。
民法466条(債権の譲渡性)
一 債権は、譲り渡すことができる。
ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
二 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。
ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
民法467条(指名債権譲渡の対抗要件)
一 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗する事ができない。
二 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗する事ができない。
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債務者の取引先へ債権譲渡する・・・
債務者の取引先を調査し、取引先が債務者から債務を負っている場合には、債権を譲渡してその取引先に相殺してもらう方法があります。
問題は、債務者に対して債務を負っている取引先が、債権を買うほどの資金的余裕があるかどうか、見ず知らずであるにもかかわらず交渉に応じてくれるかどうかです。
例えば、債権を多少なりとも低い価格で譲渡すれば、交渉に応じてくれるかもしれません。
回収の困難な債権を、法的な手段によって回収する事は時間も費用もかかります。
債権譲渡を受け入れてくれるなら、すぐにでも回収ができるわけですから、多少割り引く事も損ではありません。
債権の譲渡は、当事者の合意だけで効力を生じますが、債務者に対して譲渡の効力を主張できるためには、譲渡のあったことを債権者から債務者へ通知するか、債務者に承諾してもらう事が必要です。
債権譲渡を債務者以外の第三者に主張できるためには、通知や承諾が確定日付のある証書によることが必要です。
ただ、あらかじめ譲渡しない特約がある場合や恩給権や扶養請求権などの一身専属権は債権譲渡ができません。
また、二重に通知が出されているような場合には、確定日付の早いほうが優先します。
確定日付のある通知が、同時にその債権の債務者に届いたときは、先に払ってもらったほうが有利になります。
債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律4条(債権の譲渡の対抗要件の特例等)
法人が債権(指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限る。以下同じ)を譲渡した場合において、当該債権の譲渡につき、債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、民法467条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。
この場合においては、当該登記の日付をもって確定日付とする。
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