債務者の支払延期の申入れがあったとき・・・

債務者の支払延期の申入れがあったとき・・・

債務者の支払延期の申入れは、資金詰まりの兆候です。

こうした状況で、債権者は債務者からいかに全額を回収するかを考えなければなりません。

そして、そのためには、債務者が何とか完済しようという気持ちを持ち続けなければなりません。

例えば、身内に保証人になってもらったり、分割返済にしたりなども考える必要があります。

債務者は支払が難しくなると、借金の整理を考えます。

借金の整理には、自己破産、民事再生、特定調停があります。

こうした借金整理が申立により行われると、債権者は支払をほとんど受けられなくなります。

こうしたことから、うまく回収していくには、支払延期の申入れを承諾するのも仕方の無いことかもしれません。

ただし、延期を承諾するには、よく事情を聞き、再度の支払の延期が無いようする必要があります。

支払延期の申入れがあった場合、全額の延期ではなく、一部は支払ってもらったり、延期で約束の期日に支払われない場合のことも考えておく必要があります。

延期をする場合には、次の条件をつけて延期するのがより良いです。

①契約書を公正証書にする

②利息がなければ利息をつける

③違約金を定める

④保証人を立ててもらう

⑤担保を提供してもらう

⑥商取引では、延期した日を支払日とする手形を振り出してもらう

また、支払い延期を拒否するか承諾するかの判断としては、次のことを考えます。

①相手に資産がない場合には、延期の申入れを承諾し、少しでも支払ってもらうようにする。

②資産があるのに延期の申入れをしてきた場合は、断固として拒絶し、法的な強硬手段等をとる。

③商取引では、今後の取引をどうするかなどを考える。

④破産されないように、条件をつけて支払い延期をする。

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交渉による債権回収とは・・・

支払がなされない場合、電話に出ないなど、相手と連絡が取れない場合があります。

このような場合、とにかく相手に会いに行くことが大切です。

個人であれば自宅、会社であれば会社に出向きます。

ただ、債務者の勤め先に行く場合には、営業妨害にならないように気をつける必要があります。

債務者に会えるようなら、事情を説明させ、支払について交渉する必要があります。

交渉による債権回収方法は次のようになります。

①支払金の一部だけでも支払ってもらう

債権回収はお金が無い者からは取れないのが原則です。

ただし、全額の支払はできなくても一部の支払はできる場合もあります。

相手の事情を聞き、残りの支払は新たな期日を決めておけば、時効中断にも効果的です。

②資産があるのに払わない相手には、圧力をかける

債務者の調査や話し合いで、資産があるのに支払わない感触を得たなら、強行に全額の支払を主張する。

支払延期の対応によっては、支払をダラダラと先延ばしにされる危険性があります。

支払がなければ、早急に法的手段を取る旨を主張する必要も出てきます。

③債務者に債権があれば譲渡してもらう

債務者に何らかの第三者に対する債権がある場合もあります。

このような場合、その債権を譲渡してもらえばその第三者から支払を受けることができます。

ただし、債務者からの第三者に対する確定日付のある通知または承諾書が必要です。

④債務者に借金があれば相殺する

取引などで、双方が債権と債務を持っている場合があります。

このような場合には、相手が支払わない場合、自分の債務と相殺することができます。

ただし、相殺するには、相殺適状にあることが必要です。

なお、時効にかかった債権でも相殺は可能です。

⑤売掛金の回収では、収めた商品は早急に引揚げる

支払がない場合、商品が残っていれば商品を引揚げることも可能です。

これは、倒産した場合などになされますが、注意点としては相手方の承諾が必要です。

法律は、相手が約束の支払をしないからといって、相手の家に押しかけて貴重品を持ってきたりする自力救済を禁止しています。

ですので、承諾がないと窃盗に問われる場合があります。

また、承諾があれば、他の会社の商品の持ち出しも可能です。

⑥告訴

商品の取り込み詐欺の疑いがあれば早急に告訴します。

⑦仮処分の申立

財産を身内に移す動きなどあれば、仮処分の申立をして、相手の資産を凍結します。

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債権回収の法的手段とは・・・

貸金や売掛金の支払遅延では、まずは催告をすることが必要です。

催告は、「**日までに支払うこと」などの文言を入れ、その最後には「本書面到達後1週間以内に支払がない場合は、法的手段を取ります。」などの文言をいれるのが通常です。

また、催告は時効中断事由にもなります。

貸金や売掛金は、何もしないと時効で消滅してしまいますので、時効を中断するのに催告をします。

これは、通常証拠を残すために、配達証明つきの内容証明郵便でします。

この催告で、反応が無かったような場合には、法的手段を取ることを検討することになります。

債権回収の法的手段は次の方法になります。

①支払督促の申立

支払督促は、債権者の簡易裁判所への申立により、申立書記載の請求が理由あると認められるときは、裁判所書記官が債務者の言い分を聞くことなく支払督促を発するというものです。

債務者への送達後2週間以内に異議がなければ、30日以内に債務者の申立によって仮執行宣言が付されます。

ただし、異議の申立があれば訴訟に移行するしかなくなります。

②民事調停の申立

民事調停は、簡易裁判所で行う話し合いによる解決をいいます。

貸金や売掛金の調停では、調停委員において双方が債務について話し合い、合意に達したら調停調書が作成されます。

ですので、全額を支払ってもらうことは難しくなります。

特定調停を含む民事調停は、支払えない場合の債務者からの申立がほとんどです。

③訴訟の提起

訴訟は判決で決着をつけることをいいます。

貸金や売掛金の回収では、債務の存在は確定しているのに、なぜ訴訟をするのかといえば、訴訟による判決がなければ強制執行をすることができないからです。

ただし、金銭債権等は公正証書があれば執行できます。

ですので、訴訟を提起し、勝訴判決を得て、この確定判決を債務があることを証する書面である債務名義として強制執行することになります。

④担保権の実行

契約で質権や抵当権の設定がしてあれば、この担保権の執行をすることができます。

なお、担保権の執行では、抵当権を設定している不動産の地代や家賃などの収益である担保不動産収益が新設されています。

⑤強制執行の申立

強制執行は、訴訟における債務があることを証する書面である債務名義として、地方裁判所で執行文の付与をしてもらい、強制執行の申立をして行います。

動産の執行は裁判所内の執行官が行います。

⑥その他

手形の不渡りの場合は、手形訴訟をします。

債務者が財産を売却や隠匿する恐れがある場合は、仮処分や仮差押の保全処分手続をします。

債務者が行方不明の場合には、公示送達の方法によります。

*、債務名義とは

①執行認諾文言のある金銭債権の公正証書を作っている場合は、この公正証書を債務名義として、訴訟をすることなしに強制執行ができます。

②簡易裁判所に支払督促の申立をし、仮執行宣言付支払督促を得れば強制執行ができます。

③調停調書、和解調書、判決書を債務名義として、強制執行できます。

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