方便の離婚解消の意思・・・
離婚の事案
夫は、妻と妻を戸主とする入夫婚姻をした。
長男が生まれたが、戦死した。
妻の継父は、婚姻後30年近くになるのに、夫が妻を戸主としてその下に従属しているたちに同情し、夫を戸主とする方法はないかと村役場の戸籍係に相談したところ、夫を戸主とするためには、法律上一旦夫と妻が離婚した上改めて夫を戸主とする入夫婚姻の届けをするしかないと教えられた。
そこで、夫と妻は協議離婚届をなし、夫を戸主とする入夫婚姻届をした。
その後妻は死亡した。
夫は、長男の遺族扶助料の支給を受ける権利があるが、戸籍上協議離婚の記載があるため、その支給を受けることができなかった。
夫は、検事総長を被告として離婚無効確認請求の訴えを提起した。
離婚の判例
①一審は、夫の請求を棄却した。
②控訴審も夫の控訴を棄却した。
夫と妻は、右離婚の届出によって事実上の婚姻関係を解消する意思は全くなく、単に戸主権を妻から夫に移すための方便として離婚の届出をなしたものというべきであるが、事実上の婚姻関係丈では法律上婚姻といえないことから明らかなように事実上の婚姻関係を維持しつつ法律上の婚姻関係を解消することはもとより可能であって、たとえ方便としてであっても夫や妻がその意思に基づいて法律上の婚姻関係を一旦解消することを欲した以上離婚の意思なしということはできないとした。
③上告審も夫の上告を棄却した。
夫及びその妻は判示方便のため離婚の届出をしたが、右は両者が法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてなしたものであり、このような場合、両者の間に離婚の意思がないとは言い得ないから、本件協議離婚を所論理由をもって無効となすべからざることは当然であるとした。
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生活保護受給の離婚の意思・・・
離婚の事案
夫は病気で倒れ収入の途が断たれたので、生活保護の申請をし、生活扶助等を受給していた。
夫は、福祉担当者から、妻が収入を得ているにもかかわらず、その届出をせず、また妻と別れたといっても離婚届を出していないと、不正受給になるから処罰される旨を告げられた。
そこで、夫と妻は、離婚届を出せば、今までの不正受給額の返済を免れ、引き続き従前と同額の生活保護金が支給されるものと思い、協議離婚の届出をした。
妻は、離婚届後も実質上は夫と夫婦であると思い、夫が死亡した後も、同人の債務を支払い、遺骨を引き取り、その法要も主宰した。
妻は、夫の死亡から約6年後に検察官を被告として、離婚無効確認の訴えを提起した。
離婚の判例
①一審は妻の請求を棄却した。
②控訴審も妻の控訴を棄却した。
妻と亡夫とは、不正受給した生活保護金の返済を免れ、かつ引き続き従前と同額の生活保護金の支給を受ける方便とするため、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいて本件届出をしたものであるから、右両者間に離婚意思があったというべきものであり、また右に認定した諸事情があるからといって、本件離婚が法律上の離婚の意思を欠くものとして無効であるということはできないとした。
③上告審も妻の上告を棄却した。
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件離婚の届出が、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてされたものであって、本件離婚を無効とすることはできないとした原審の判断は、その説示に徴し、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はないとした。
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不貞行為の本訴と婚姻破綻の反訴・・・
離婚の事案
妻は、三味線の教授をし、男性と知り合った。
夫と妻は、不仲になり、家庭内離婚の状態になった。
夫は、男性に対して妻との不貞関係を詰問したところ、男性はこれを認めた。
そこで夫は男性に慰謝料として1000万円を要求し、男性はこれを払った。
夫は、妻に対して、妻の不貞行為及び婚姻の破綻を理由に、離婚と500万円の慰謝料請求をなし、妻は、夫に対して婚姻の破綻を理由に、離婚と500万円の慰謝料、自宅不動産の財産分与を求める反訴を提起した。
離婚の判例
裁判所は、夫と妻の離婚、夫から妻への自宅不動産の3分の1の分与を認め、夫妻双方の慰謝料請求を棄却した。
本件においては、夫は、本訴において妻の不貞及び婚姻の破綻を理由に離婚を求め、妻は、反訴において婚姻の点において双方の意思は一致しており、婚姻の継続が望めないことは明らかであるから、協議離婚制度を採用する法の趣旨に則って考えてみると、特段の事情のない限り、夫婦関係の内容に立ち入って判断するまでもなく、婚姻を継続し難い重大な事由があるものとして、本訴、反訴とも離婚請求を認容することができると解するのが相当である。
右の理は、たとえ妻の不貞が認められ、妻が有責配偶者といえる場合でも同様である。
ただし、有責配偶者からの離婚請求が排斥されるのは、婚姻の継続を望む有責でない配偶者の利益を保護しようとする信義則上の理由に基づくものあるから、当該配偶者が離婚の意思を明らかにしている以上、有責配偶者の離婚請求を排斥する根拠が失われるからである。
したがって、本件においては、その余の点について判断するまでもなく、本訴及び反訴に基づき、夫妻の離婚を是認することができるというべきである。
判決は、妻と男性との不貞行為は認めたが、夫の慰謝料請求については、夫が既に男性から1000万円の慰謝料を受領しているから、夫の慰謝料については共同不法行為者の一方から既に全額補填済になっているとして、これを棄却した。
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