婚姻外の男女関係解消の慰謝料請求・・・
離婚の事案
妻と夫(実際は結婚していない)は、交際をし、夫が妻の家に泊まることもあったが、同居をしたことはなく、生計も全く別で、共有する財産もなかった。
夫が出産に関する費用及び子供の養育について全面的に責任をもつという約束をしたうえで、妻は夫との間の長女を出産した。
そして、子供が法律上不利益を受けることがないように、長女の出生の日に婚姻届をなし、すぐに協議離婚届をした。
長女は、夫の母が養育した。
夫と妻は、妻が子供の養育についての負担を免れること等を内容とする取り決めをしたうえで、妻は夫との間の長男を出産した。
妻と夫は長男の出産の際も長女と同様に婚姻、離婚届をした。
そして、長男は夫に引き取られた後、施設で養育された。
妻と夫はその後も一緒に旅行したり、夫が妻の仕事に協力したりしていた。
夫は、妻との関係を解消して、違う女性と婚姻届出をした。
妻は、夫に対して、夫が突然かつ一方的に両者の間の「パートナーシップ関係」の解消を通告をし、女性と婚姻したことが不法行為に当たるとして、500万円の慰謝料を請求する訴訟を提起した。
離婚の判例
①一審は、妻と夫との関係は、法律上の夫婦同様の関係であるとまではいうことができないうえ、終生、相互に協力し、扶助する義務があり、一方当事者の意思で解消することができない永続的な関係であると解することはできず、その関係の継続を夫に強制できるものではなく、妻の精神的苦痛に対する法的な賠償を夫に求めることはできないとして、妻の請求を棄却した。
②控訴審は、夫が妻との格別の話し合いもなく、突然、関係を一方的に破棄し、それを破綻させるに至ったことについては、妻における関係継続についての期待を一方的に裏切るものであるとして、100万円の慰謝料の支払を命じた。
③上告審は、夫と妻との間の上記関係については、婚姻及びこれに準ずるものと同様の存続の保障を認める余地がないことはもとより、上記関係の存続に関し、夫が妻に対して何らかの法的な義務を負うものと解することはできず、妻が上記関係の存続に関する法的な権利ないし利益を有するものとはいえない。
そうすると、夫が長年続いた妻との上記関係を前記のような方法で突然かつ一方的に解消し、他の女性と婚姻するに至ったことについて妻が不満を抱くことは理解し得ないではないが、夫の上記行為をもって、慰謝料請求権の発生を是認しえる不法行為と評価することはできないとして、控訴判決を取消し、一審判決を支持して妻の請求を認めなかった。
スポンサードリンク
不貞相手へ未成年の子から慰謝料請求・・・
離婚の事案
夫は、銀座でホステスをしていたある女性と親しくなり、数ヵ月後に情交関係をもった。
女性は、夫との間に女児をもうけ、自分で育てていた。
夫は、その子を認知した。
妻は夫と女性の関係や子が生まれていることを知り、夫を厳しく非難した。
夫は妻の非難に嫌悪して、家を出て、女性と暮らしている。
不法行為に基づき、女性に対して、妻は500万円、その長女は200万円、その二女と三女それぞれ100万円の慰謝料請求の本件訴訟を提起した。
離婚の判例
①一審は、妻に300万円、その長女に30万円、二女及び三女に各50万円の慰謝料を認容した。
②控訴審は、以下のように述べて、妻らの請求を棄却した。
夫と女性とは、夫の誘いかけから自然の愛情によって情交関係が生じたものであり、女性が子供を産んだのは母親として当然のことであって、夫に妻子があるとの一事でこれらのことが違法であるとみることは相当ではなく、また、夫と妻の婚姻生活は、妻が夫と女性との関係を知り、夫が別居した昭和39年6月に破綻するに至ったものと認めるのが相当である。
そして、この別居は夫が妻に責められ愛情を全く喪失したため敢行されたものであって、女性が夫に同棲を求めたものではなく、女性に直接の責任があるということはできない。
そして夫と女性が同棲生活に入ったのは、前記認定のとおり、夫と妻との婚姻生活が既に破綻した後であって、しかも夫の方から女性にのもとに赴いたものであって、これをもって女性に違法があるとすることはできない。
また、夫が女性と同棲して以来子供である長女らは夫の愛情養育を受けられなくなったわけではあるが、これは一に夫の不徳に帰することであって、女性に直接責任があるとすることはできない。
③上告審は、以下のように述べて、原判決中妻に関する部分のみを破棄して差し戻した。
夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。
妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が妻子のもとを去った右男性と同棲するに至った結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもって父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。
けだし、父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によって行うことができるのであるから、他の女性との同棲の結果、未成年の子が事実上父親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被ったとしても、そのことと右女性の行為との間には相当因果関係がないものといわなければならないからである。
スポンサードリンク
不貞行為の慰謝料の消滅時効・・・
離婚の事案
夫は、ある女性と情交関係をもち、同棲し、子ができ生み、引き続き同棲生活を続けた。
妻は、女性に対し、慰謝料として5000万円の支払を求める本件訴訟を提起した。
離婚の判例
①一審は、女性に対して500万円の支払を命じた。
②控訴審では、女性は、消滅時効の抗弁を主張したが、判決は、継続した同棲関係が全体として妻に対する違法な行為として評価されるべきで、日々の同棲を逐一個別の違法な行為として把握し、これに応じて損害賠償義務の発生及び消滅を日毎に定めるものとするのは、行為の実質にそぐわないものであって、相当ではないから、本件損害賠償義務は、全体として女性と夫との同棲関係が終了した昭和62年12月から消滅時効が進行すると判断して、女性の消滅時効の抗弁を排斥した。
そして、一審が昭和41年から昭和62年までの間の慰謝料として算定した500万円は相当であると判示した。
③最高裁は、以下のように述べて、控訴審判決を破棄して差し戻した。
夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者の同棲により第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当である。
けだし、右の場合に一方の配偶者が被る精神的苦痛は、同棲関係が解消されるまでの間、これを不可分一体のものとして把握しなければならないものではなく、一方の配偶者は、同棲関係を知った時点で、第三者に慰謝料の支払を求めることを妨げられるものではないからである。
妻が女性に対して本訴を提起したのは、記録上、昭和62年8月31日であることが明らかであるから、同日から3年前の昭和59年8月31日より前に妻が女性と夫との同棲関係を知っていたのであれば、本訴請求に係る慰謝料請求は、その一部が既に時効より消滅していたものといわなければならない。
スポンサードリンク