子の監護者指定で面接交渉の審判・・・

子の監護者指定で面接交渉の審判・・・

離婚の事案

妻と夫は、婚姻し、長男、長女が生まれた。

夫は、養父、養母の養子で幼い頃から養父母に育てられ、妻らは婚姻後、養父母の住居の隣に居住していた。

長男が生まれたことから養母が長男の育て方について口を出すようになり、対立が生じるようになった。

夫の転勤に伴って、養父母も妻らと同居し、夫と養母の争いは拡大し、妻は、養母に同調する夫にも不信感を抱くようになり、夫婦関係も悪化した。

離婚調停申立をなし、そのころ養母及び夫が子らの学校に赴き、子らを北九州市内の養父母宅に連れ帰った。

その後、夫、養父母が子らと岡山市の社宅で生活を始め、妻は、社宅を出て北九州市の実家で生活するようになり、薬剤師として働いている。

なお、上記離婚調停は、不成立となった。

妻は、妻と夫が別居を解消するまで又は離婚するまでの間、子らの監護者を妻と定め、子らを妻に引き渡すことを求める審判申立をした。

離婚の判例

①裁判所は、以下のように述べて、夫は、妻との別居解消又は離婚成立に至るまで、子ら両名の学校の夏季休暇中の7日間並びに春期休暇及び冬期休暇中の各3日間、子らを妻肩書き住所地に宿泊させて、妻と面接させよ、との審判を下した。

夫婦が離婚していない状態で、家庭裁判所が子の監護者の指定等の処分をなしうるかどうかについては、見解の分かれているところである。

しかし、夫婦は互いに協力する義務を有するのであるから、子の監護、養育についても協力する義務を有するのであって、その協力の内容等について協議ができないときは、家庭裁判所が、民法752条、家事審判法9条1項乙類1号により、子の監護に関する事項を定めることができると考える。

(同居、協力及び扶助の義務)
民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

また、家庭裁判所の定める内容については、家庭裁判所は申立の趣旨に拘束されることなく、子の福祉のために最も望ましい内容を定めれば申し立ての趣旨に拘束されることなく、子の福祉のために最も望ましい内容を定めれば足りると考える。

現状では、長男及び長女とも、妻に対する反発が極めて強く、しかも、夫及び養母らとの生活の中で安定し、かつ、その生活の継続を強く希望しているのも疑いのない事実である。

このような状況下で、あえて子らの監護者を妻と定め、妻との生活を命じることは、未だ十分な判断能力を有しているわけではない子らに対し、大きな動揺を与え、混乱をもたらすことになり、子らに与える負の影響が懸念される。

したがって、少なくとも、当面は、子らの監護者を妻と定め、子らに妻の下で生活することを命じることは、相当ではないといわざるをえない。

子らが、今後長期的にみて、真に健全な心身発達を遂げ、年齢に応じた健全な人格形成を図っていくためには、子らと実の母親である妻の間の心的な信頼関係を回復することが不可欠である。

そのためには、当面、子らと妻との間の面接交渉を実施し、これを通して意思の疎通を図っていくことが肝要である。

本件においては、子らの時間的、物理的及び心理的負担を少なくし、かつ、子らが実の母親と心的信頼関係を回復していくという面接交渉の趣旨を実現するためには、当面、子らが学校の長期休暇期間中に一定期間妻方に宿泊し、特に養母が立ち会わないよう形で面接を重ねていくことが適当であると考えられる。

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乳児院入所中の子と面接交渉・・・

離婚の事案

妻と夫は、婚姻し、長男、長女の双子が生まれた。

子らが生まれてから、妻ら家族は、妻の実家で妻の父と共に生活した。

育児と家事の疲れた妻は、子らを父に託して、単身家出をした。

妻の父は、妻を実家に連れ戻したが、子らは夫の実家に引き取られた。

その後、妻と夫は、やり直すため、子らを連れて自宅に戻ったが、妻と夫の母とうまく行かず、妻は、また子らを残して父のもとに帰った。

妻は産後の疲労による精神不安定と診断された。

夫は、妻に対して、夫婦関係円満調整調停申立をし、子らを乳児院に預けた。

妻は夫に対して面接交渉の調停申立をしたが、夫が面接交渉を拒んだため、調停は不成立となり本審判に移行した。

夫は、妻に対して離婚訴訟を提起し、子らの親権者を夫とするよう主張した。

妻も夫に対して離婚の反訴を提起し、子らの親権者を妻とするよう主張した。

離婚の判例

①原審判は、以下の条件で面接交渉を認めた。

夫は、妻が下記条件のもとに、未成年者両名と面接することを妨げてはならない。

1、面接回数

月1回

2、面接の日時

月曜日から金曜日までの間のいずれかの午前中。

妻は、具体的な面接日、時間の設定につき、予め乳児院と協議して定める。

3、面接場所

乳児院内

4、面接方法

弁護士及び乳児院の職員1名が同席する。

②抗告審は、以下のように述べて原審判を次のとおり一部変更した。

妻は、子らが乳児院入所中、予め乳児院と具体的な面接日、面接時間を協議の上、毎月1回月曜日から金曜日までの間のいずれかの日の午前中、同乳児院において、同乳児院の職員1名の同席のもとに子らと面接することができる。

夫は、妻が上記のとおり子らと面接することを妨げてはならない。

子らのような幼児について、父母、特に母親との交流を図ることは、幼児の健全な発達を促進するものであるから、できるだけこれを認めるのが相当であり、また、そうすることが長期的には子らの福祉に適うというべきである。

したがって、子らに一時的な動揺がありうることを理由に妻と子らの面接交渉を否定することは許されない。

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離婚無効確認訴訟中の面接交渉・・・

離婚の事案

夫と妻は、同棲し、夫が前妻との協議離婚した後、婚姻した。

長女と長男が生まれた。

妻は、子らを連れて両親の家へ転居し、夫と別居した。

夫は妻の下から未成年者らを連れ出し、保育園に入れ、その後、長女を養護施設に、長男を乳児院に入れた。

未成年者らの親権者を夫定めて協議離婚をしたが、その後妻から離婚無効確認請求が提起され、係属中である。

妻が申し立てた人身保護請求事件について、夫は妻に未成年者らを引き渡す旨の合意が成立し、妻の未成年らが引き渡され、未成年者らは妻と同居している。

夫は、妻に対して未成年者らの養育費を支払うことは拒否している。

夫は妻に対し、未成年者らと面接交渉を求める本件審判の申立をした。

離婚の判例

裁判所は、以下のように述べて、夫の申立を却下した。

面接交渉権の性質は、子の監護義務を全うするために親に認められる権利である側面を有する一方、人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育の享受を求める子の権利としての性質を有するものというべきである。

上記に述べた面接交渉権の性質に加えるに、未成年者らの年齢、夫の離婚歴や妻との別居・離婚に至った経過、夫及び妻の生活状況、現在夫と妻との間で離婚無効訴訟が係属中であることその他諸般の事情を考慮すると、今直ちに夫が未成年者らと面接交渉することを認めるのはやや時期尚早であり、籍すにしばらく時をもってし、未成年者らがあと数年成長後に夫を慕って面接交渉を望む時期を待たされることとするのが、未成年者らの福祉のため適当であると解される。

蛇足ながら、妻においても、夫と離婚無効訴訟の結末がどうなるかにせよ、未成年者らの父は夫のほかになく、かつ、その健全な成長のためには、夫の愛情も妻のそれに劣らず必要であることに思いをいたし、未成年者らの監護養育について関心を寄せる夫の心情も理解し、時に応じ未成年者らの発育状態について自発的に信書又は写真を夫に送付するなど、きめ細かい配慮をすることが望ましい。

夫がこれに応えて未成年者ら及び妻を励まし、適切な助言協力を惜しむべきでないことは言うまでもない。

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