子が嫌がる面接交渉の間接強制・・・
監護親が、面接交渉をさせようとしても、子供が強く嫌がっていて、会わせることができない場合には、間接強制は認められません。
ただし、子供の意思に反するかどうかは、慎重に判断する必要があります。
事例として、離婚訴訟において和解により非監護親である夫と未成熟の長男と毎月1回の面接交渉の条項が定められたものの、妻がその条項を履行しなかったことから、非監護者である夫は間接強制を申し立てました。
この申立に対して裁判所は、「妻は、毎月第二土曜日の午後の4時間、夫に両名間の長男と単独で面接交渉させよ。妻が本決定送達の日以後に到来する毎月第二土曜日に前項の債務を履行しないときは、妻は夫に対し、1回につき、金30000円を支払え」との決定をしました。
これに対し、妻は、子供本人の意思に反するとして争いました。
この事案では、長男は4歳半のときに、夫婦不和により妻に連れられて夫の家を出ており、以後夫と母及びその祖父を含めて離婚をめぐる激しい葛藤の中で、常に妻らによって一方的な見方を教え込まれ、夫に対する嫌悪と恐怖、憎悪の念を抱かざるを得ない状況に置かれてきたとのことです。
高等裁判所は、4歳半のときから引き続き前示のような環境に置かれてきた現在7歳の長男が、今、夫との面会を望まないとしても、そのことを子供が真にそに自由意志に基づいて夫との面接交渉を拒否しているとはいえないと判断しています。
この事案では、裁判所は、妻やその祖父らが、離婚紛争時以来の夫に対する「強い嫌悪や不信感から、その支配下にある子供の意思を尊重することに名を借りて、子供と父親との面接交渉を妨げている」と判断し、母親の主張を認めませんでした。
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子供と離婚訴訟・・・
調停で、離婚の合意が成立しない場合には最後の手段として、家庭裁判所に離婚の訴訟を提起することになります。
離婚の訴訟を起こすには法律が定める離婚原因がなければなりません。
(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
訴訟を提起した後に、裁判手続中に話し合いによる和解手続がなされ、当事者間で離婚の合意が成立した場合には、その内容を書面にすれば、和解による離婚が成立します。
訴訟の手続き中に和解もできず、裁判所が法律の定める離婚原因があるかどうかを調べた結果、離婚原因があるときには、判決によって離婚が認められることになります。
離婚訴訟の判決の際には、裁判所は夫婦のどちらか一方を親権者と定めます。
(離婚又は認知の場合の親権者)
民法第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
監護者の指定、養育費の決定、面接交渉などの子の監護に関する処分については、当事者が申立をすることにより、裁判所が判決で定めます。
この申立の時期には制限がなく、判決言渡しの手続が終結した時まですることができます。
離婚訴訟の中で、子の監護者の指定や養育費、面接交渉などの子の監護に関する処分又は親権者の指定についての裁判をするにあたっては、子供が15歳以上であるときには、家庭裁判所はその子供の意向を聴取しなければならないことになっています。
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離婚後の子供の名字と戸籍・・・
結婚した時に名字を変えた母親は、離婚すると法律上当然に結婚前の名字に戻ることになります。
両親が離婚しても、子供の名字は、両親の結婚中の名字のままです。
子供が生まれる前に両親が離婚した場合も、両親の結婚中の名字のままです。
(子の氏)
民法第790条 嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
2 嫡出でない子は、母の氏を称する。
子供の名字を変えるためには、「子の氏の変更許可の申立」を家庭裁判所にする必要があります。
また、子供は、戸籍も結婚中の戸籍に残ります。
学校に通っている子供がいる夫婦が離婚するときに、母親が離婚によって親権者となる場合、卒業するまでの間に名字が変る子供の影響を考えて、母親は、離婚の日から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」をして、結婚中の名字をそのまま続けて名乗る婚氏続称(こんしぞくしょう)を選択することができます。
しかし、この場合でも、続称を選択した母親の名字と子供の名字は、同じ「山田」でも、法律上は別の名字です。
それは、母親は名字が「山田」の新戸籍を作り、子供は従前の父親の「山田」の戸籍に入ったままだからです。
夫婦が離婚しても、親子関係が切れることはありませんが、子供の戸籍が別れた夫に戸籍にあるのを不都合と感じる場合には、家庭裁判所に「子の氏の変更の許可」を申し立てて許可を受けることにより、法律上も母と同じ名字に変更すれば、母親の戸籍に入籍することができます。
子の氏の変更許可手続
申立人 | 15歳以上の場合は本人
15歳未満の場合は親権者 |
申立の場所 | 住所地を管轄する家庭裁判所 |
必要書類等 | 申立書
子の戸籍謄本 子が入る予定の親の戸籍謄本 収入印紙 郵便切手 |
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裁判所の許可
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入籍届
届出人 | 15歳以上の場合は本人
15歳未満の場合は親権者 |
提出の場所 | 子の本籍地又は子・親権者の住所地の市区町村 |
必要書類 | 届書
家庭裁判所の氏の変更許可の審判書謄本 |
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