子供の養育費・・・
養育費は、子供の監護・教育に必要な費用です。
離婚しても親として子供を扶養する義務は影響を受けないため、子供が親と同じ程度の生活ができるように費用を負担する義務を負います。
養育費の負担については、離婚の際に子の監護についての必要な事項として、協議し、協議が成立しなかったり、協議ができないときには、家庭裁判所に調停又は審判を申立て、最終的には家庭裁判所が定めます。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
民法第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
2 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
3 前2項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
離婚の際に定めなくても、離婚後、必要になった時点で、養育費の支払を求めることができます。
子供が成人するまで、特に金額や時間に制限はありません。
養育費の負担について、協議が成立しなかったり、協議ができないときには、家庭裁判所に調停又は審判を申し立てます。
他の手続き同様、調停が成立しなければ、自動的に審判に移行します。
離婚成立前の養育費の請求について、夫婦は、婚姻費用の分担として、生活費を負担することになっていますので、この婚姻費用の中に養育費が含まれています。
(婚姻費用の分担)
民法第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
離婚成立前に、別居している夫婦の子供の養育費は、婚姻費用の分担として、子供と暮らしていない他方の親に支払を求めることができます。
協議で話がまとまらない場合には、家庭裁判所に婚姻費用の分担の調停又は審判の申立をします。
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養育費の算定・・・
養育費の金額の算定方法については、法律で定められているわけではありません。
裁判所の養育費の算定基準としては、原則として、養育費・婚姻費用の算定方式・算定方法に基づいて養育費が決められています。
算定表では、子供を監護していない親(義務者)と子供を監護している親(権利者)の双方の実際の吸入金額を基礎として、子供が義務者と同居していると仮定した場合に、子供にあてられる生活費を計算し、これを義務者と権利者の基礎収入の割合で按分し、義務者が支払わなければならない養育費の金額を定めることとしています。
①義務者と権利者の総収入の認定
給与所得者の場合は、源泉徴収票の支払金額となります。
自営業者の場合は、確定申告書の課税される所得金額です。
ただし、現実に支出されていない費用(青色申告控除、支払がされていない専従者控除など)を課税される所得金額に加算して総収入を認定します。
総収入の実額がわからないときは、厚生労働省の賃金センサスなどの統計資料から金額を推計することになります。
この場合は、給与所得者として考えます。
婚姻費用を請求する妻などが、働けるのに働いていない場合にも統計資料によって収入額を推計することがあります。
②義務者・権利者の基礎収入の認定
総収入から、公租公課、職業及び特別経費を控除した基礎収入を認定します。
給与所得者の基礎収入は、おおむね総収入の42~34%(高額所得者の方が割合が小さい)の範囲内、自営業者の基礎収入は、総収入の52~47%の範囲内となっています。
③生活費の指数
子の標準的な生活費の指数を、親を100とした場合、年齢0歳から14歳までの子について「55」、年齢15歳から19歳までの子について「90」とされています。
④養育費算定の計算式
基礎収入=
(給与所得者の場合)総収入×0.35~0.43
(自営業者の場合)総収入×0.49~0.54
子の生活費=
(子の指数)義務者の基礎収入×55または90
(義務者の指数+子の指数)義務者の基礎収入×100+55又は90
義務者の養育費分担額=
子の生活費×義務者の基礎収入
子の生活費×義務者の基礎収入+権利者の基礎収入
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養育費の算定の注意点・・・
養育費の算定表により、養育費を算定するにあたり、権利者の収入が義務者の収入より高額な場合は、権利者と義務者の収入額が同額である場合に義務者が支払うべき費用を、養育費の限度額としています。
義務者の基礎収入が最低生活費を下回る場合でも、養育費の支払い義務は免れません。
算定表では、それぞれの家族の個別の事情は考慮せずに作成されています。
そのため、算定表によることが著しく不公平となるような特別の事情がある場合には、個別の事情を考慮することになります。
特別の事情が存在する場合には、裁判所では、算定表で標準的な養育費を計算した上で、特別な事情について検討し、標準的な養育費の金額を増加したり、減額したりしています。
支払義務者が、その人の名義の不動産について住宅ローンを負担している場合、その不動産が最終的には、支払義務者の資産になるので、特別の事情として考慮されません。
支払義務者の自動車のローンなど、養育費に優先して返済することが相当でない債務も、特別な事情として考慮されません。
算定表では、公立学校の授業料等を基準に作成され、子供が私立学校に通う場合の入学金・授業料などは考慮されていません。
そこで、養育費の支払義務者が子供が私立学校に入学することを承諾していて、義務者に私立学校の費用を負担させることが相当と判断される場合は、算定表の養育費の金額に、義務者が負担しなければならない私立学校の費用を加算することが考えられます。
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