親権者の決め方・・・

親権者の決め方・・・

夫婦が離婚する際、未成年者の子供がいる場合には、子供の親権者を決めた上でなければ、離婚することができません。

子供のいる夫婦は、離婚に際して親権者を父母のどちらにするかを決めなければなりません。

協議離婚は、夫婦間の話し合いによる離婚ですから、親権者について話し合いで決めることになります。

親権者を決める話し合いがまとまらない場合には、調停、審判、訴訟の手続をとることになります。

審判・訴訟の場合、裁判所が親権者について判断しますが、裁判所は、親の利益や家系の承継・維持等の子以外の事情から親権者を決めることはありません。

裁判所は、子の利益ないし福祉の増進のためにはどのような監護環境が最善であるかを基準に親権者を判断します。

裁判所は父母の事情として、父母の監護能力、精神的、経済的家庭環境、居住環境、教育環境、子供に対する愛情の度合い、従来の監護状況、親族の援助等の諸事情をもとに判断します。

裁判所は、子供側の事情として、子供の年齢、性別、心身の発育状況、兄弟姉妹との関係、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性、子供自身の意向等の諸事情をもとに判断します。

裁判所は、当事者双方の主張や提出した証拠、尋問の結果さらに家庭裁判所の調査官の調査結果等により認定し、認定した事情を総合的に比較したうえで、子供の利益ないし福祉の最善を判断します。

例えば、父に経済的に優れているという事情があったからといって、親権者が父に決まるわけではありませんし、母に子供への愛情が強いという事情が認められても、それだけでは母が親権者になるわけでもありません。

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親権者決定の裁判所の判断・・・

子供が幼児であり、母が監護・教育することが不適切と認められる特段の事情がない限り、母を親権者として、母に監護・教育をさせることが子の福祉に適するされており、これを母性優先の原則といいます。

母性優先の原則とされているからといって、母が監護を続けていく上で問題が多い場合等には、母を親権者とすべきでないとされます。

また、幼児の場合でも必ず母親が親権者となるわけではありません。

子供の現在の監護環境において安定しているのであれば、現在の監護環境を維持することが子の利益ないし福祉の適するとされており、これを現状尊重の原則といいます。

監護環境の変化は、子供に対して心理的な不安定状態を生じさせ、子供に負担をかける恐れがあります。

現状に問題がなく、監護環境を変更しても特段に大きく変わることがないのであれば、現状を尊重した方が子の利益ないし福祉に適すると考えられます。

ただし、単純に現状を追認するわけではなく、無理やり子を連れ去ったような場合には、適用されません。

また、裁判所の判断には、子供の意思を尊重します。

法律上は子が満15歳以上あるときは、家庭裁判所は、親権者変更の審判をする前に、その子の陳述を聴かならないと定められています。

子供の意思を尊重するからといって、子供が幼児の場合には、子供に親を選択させるようなことはしないようです。

裁判所の手続、特に調査官の調査でも、直接的に子供の意思を聴くことはないようです。

子供の様子や周辺事情等から、子供の意思を判断することになります。

また、特段の事情がない限り、兄弟姉妹は同一の親の元で監護されるべきとされています。

父母の離婚に加え、一緒に生活してきた兄弟姉妹とも別れることになれば、子供の精神的負担がさらに大きくなるからです。

子供は両親双方と交流することによって人格的成長を遂げることができるという考えから、面接交渉の許容性のある親を監護者として適しているとされます。

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父が親権者となる事例・・・

父が親権者となる場合が少ないとはいえ、父が親権者となる場合もあります。

例えば、母の監護環境が子供にとって不適切と認められたような場合は父を親権者とすることになりますし、父母の監護環境について優劣がつかない場合でも、現実に父が監護しており、その監護環境に問題がなく、現在の監護環境の継続が望まれるような場合には、父を親権者とした事例があります。

具体例として、2歳になる子供が父と同居しており、父母の監護環境に優劣がつけにくい場合で、母が親権者を自分に指定するように求めた審判事件について、裁判所が以下のような理由を述べて父を親権者とした事例があります。

この事例は、父母の監護環境に双方特段の問題は認められないと認定した上で、次のように述べました。

双方とも子供に対する愛情や努力は十分に認められ、知的能力、生活態度においても子供を監護養育していくについて特に支障があると思われるような点は見受けられず、その差も余りない。

ただ強いて言えば、性格的に母はやや未成熟な依存的なところが見受けられ、困難な問題にあえば混乱し現実的な問題解決能力に不安がみられることと、現在発作がない喘息の持病がありその点が子供の将来の監護養育について支障とならないか不安である位である。

子供については、2歳という年齢からみて母親との接触の必要性ということが考えられるが、父のもとでは父の母、姉に母親としての役割を十分期待できるし、現在の養育状況からみて十分その任務が果たされているものと思われるので強いて考慮に入れる必要はないものと考える。

以上父母の監護、養育能力については特に支障となるべき大きな問題は認められないが、母についての上記2点及び子供は昭和46年5月から父のもとで支障なく養育され元気に成長しており父の家庭の一員として明るく育っている点から考えると母親として母が手許で養育したいという気持ちは理解できるにしても、現状を強いて変更する必要は認められない。

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