嫁と姑の喧嘩で離婚請求・・・
夫婦は、結婚後、夫の両親と同居することにしました。
しかし、妻と姑の仲は日を増すたびに悪くなり、その喧嘩は、夫へも伝染していきました。
妻は別居するようになり、3年が経過し、夫は離婚の訴訟を起こしました。
嫁と姑の対立が離婚となる原因として、夫が母親の肩を持つ場合が多いようです。
この夫の離婚請求に対し、裁判所は、本件夫婦の対立は主として夫の責任であること、有責性は両方であるが夫の側に強くあること、結婚4年目に別居し、それから本件判決まで、まだ3年しか経っておらず、夫婦関係が完全に破綻したとはいえないこと、妻は反省しており、夫のところに戻る希望を持っていること、以上の理由からして、夫からの離婚請求は認められないと判決を下しました。
これは、有責者からの離婚請求は認めない制限的破綻主義に立った判決であるが、最近では、夫婦関係が壊れてしまっていれば離婚を認める破綻主義の傾向が強くなっています。
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生活保護を受けるための離婚の取消し・・・
都会に出稼ぎに出ていた夫は、病に倒れ帰郷したが、長期療養を必要とする身となり職に就くことができず、収入の途を断たれました。
やむなく生活保護の申請をして生活保護金の支給を受けることになりました。
しかし、育ち盛りの子供を抱えた生活は大変苦しく、妻は兄の経営する会社にパートで雇ってもらい、生活保護金の半額程度の収入を確保した。
しかし、働き出たことが少しも家族の福祉に結びつかないばかりか、収入状況を調査した役所の福祉係員は、妻の収入は生活保護金から差し引くと言うのです。
夫は、思い余った挙句、妻とは別れたと答えました。
係員は、1ヶ月もするとまたやってきて、別れたら離婚届を出さなければならない、そうしないと不正受給になり詐欺罪になると、忠告しました。
離婚届を出しても夫婦、親子で力を合わせることを約束して、離婚届を出し、生活はそのままでした。
ところが半年後容態が急変した夫は、亡くなってしまいました。
妻は、離婚は抹消しなければならないと考え、離婚は無効であることの確認を求めて裁判を起こしました。
夫妻は、不正受給した生活保護の返済を免れ、かつ引き続き従前と同額の生活保護金の支給を受けるための方便とするため、納得づくで離婚届を出しましたが、このような場合、届け出る意思はなかったかも知れないが、離婚の意思があったといえるかどうかが問題になります。
また、離婚届を出さないでいると詐欺罪になる、生活保護金のカットとどちらを取るかという形で迫ることは強迫にはならないか、強迫であるなら取消せないか、など考えられます。
しかし、妻は一審も控訴審も敗れました。
裁判所は、とにかく法律上の夫婦関係を解消しようという意思の合致に基づいて届けを出したのだから、離婚は有効に成立するし、福祉課係員の言動は生活保護法の定めを告げたもので、違法性が強いと認めることができず、夫婦の意思決定の自由を拘束してもいないから強迫とはいえない、と判断しています。
最高裁も、離婚の意思というものについては、本心別れようという形式面の2つであるが、法律上の婚姻関係を解消しようという意思があれば足りるとしています。
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新興宗教で家事育児しない妻へ離婚請求・・・
夫婦は結婚して10年経ち、円満に暮らしていました。
ところが、最近になって、妻が新興宗教にはまり、その布教活動に熱心のあまり家事や育児が疎かになってしまいました。
また、夫の親類にまで布教活動をするようになったために、夫やその親類との間の折り合いが悪くなってきました。
妻は無断で新興宗教の本山に参拝するため家を空けることも再三あり、家事や育児を全くしなくなりました。
4人の小さい子供は、夫の両親が面倒を見るようになりました。
夫は、離婚の訴訟を提起しましたが、妻は離婚する気はなかったようであり、謝罪して共に生活したい旨を述べたのですが、裁判所は両者の離婚を認め、夫婦の婚姻関係には、これを継続しがたい重大な事由が存在するとしました。
離婚には、当事者間の合意による協議離婚と当事者間で合意ができないために裁判によってなされる裁判離婚があります。
裁判離婚が認められるのは、次の原因があります。
①不貞行為
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④強度の精神病で回復の見込がないこと
⑤婚姻を継続しがたい重大な事由があること
(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
抽象的離婚原因については、最終的に裁判官の自由裁量によって決定されることになります。
この夫婦の場合は、妻が新興宗教にこって家事・育児を顧みなかったことが原因ですが、憲法では、信仰や宗教活動の自由が保障されています。
しかし、その自由が原因で家庭を壊したということになれば、問題です。
妻が家を空けて、小さな子供の面倒を見なくなったことで、裁判所は婚姻を継続しがたい重大な事由ありと判断したのであり、宗教活動と夫婦関係における和合との調和について具体例を出したものです。
また、裁判所は親権者を夫と定めました。
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