妻帯者の結婚を口実の貞操侵害・・・

妻帯者の結婚を口実の貞操侵害・・・

ピアノ伴奏者の花子さんは、放送局のディレクターである太郎さんと、番組の出演で知り合い、関係を持つようになりました。

太郎さんは、花子さんに、事実上離婚状態だから、いずれ別れて結婚したい等を度々言っていました。

結局、太郎さんは、花子さんとその両親から5000万円の損害賠償請求の訴えを起こされました。

しかも、勤務先の放送局まで共同被告にされてしまいました。

妻と別れて結婚するから、といって女性を口説くのは、妻帯者の殺し文句ですが、あまり上手に欺くと貞操侵害として、不法行為となり、損害賠償義務が生じます。

しかし、妻のある男性との情事ですから、公序良俗に反しますから、女性側が救済される例は少ないのです。

本件でも、花子さんの年齢や経歴、その他から不法行為の成立は否定されました。

放送局が使用者責任を追及して共同被告とされた点について、放送局側は、いち早く他局にかぎつかれ、新聞、週刊誌に取りざたされるのに先手を打って、訴訟を起こされたことを、花子さんの実名入りで放送したのです。

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輪姦の幇助で告訴なしの起訴・・・

強姦罪は親告罪であり、強姦の被害者である女性が警察や検察に告訴しなければ、罪状明白な事件であっても検事はこれを起訴することはできず、もし間違って告訴がないのに起訴をしたら、裁判所はこれに対し、公訴棄却という裁判をすることになっています。

女性にとっては、強姦されたというだけでも大変な被害である上に、これが裁判沙汰になれば強姦の被害が明るみに出ることによって、二重の被害を受けることになります。

しかし、同じ強姦であっても、1対1の場合ではなく、2人以上の男性による輪姦の場合には、親告罪の扱いをせず、被害者が告訴をするか否かにかかわらず、検事はこれを起訴してもかまわず、裁判所は告訴の有無にかかわらず有罪の判決が下せます。

では、2人の男性が女性を強姦しようとしているときに、それを幇助した男性、実際に強姦に加わることはしていませんが、誘い出したりして幇助した男性には告訴が必要なのでしょうか。

一審では、現場にいない封所犯を起訴するには、告訴が必要であると判断して、親告罪の場合と同じ取り扱いである公訴棄却という裁判をしました。

二審では、一審を取消して、告訴がなくても幇助犯を起訴してよいと判断し、有罪の判決を下しました。

最高裁は、二審の判決を支持し、正犯につき刑法180条2項の適用がある以上、その幇助犯が現場に居合わせたか否かを問わず、これを訴追するについて告訴を要しないと解すべきであると判定しました。

現場にいない幇助犯も輪姦の一役をになう非親告罪として扱われるのです。

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妻子ある男性と知った不貞の慰謝料請求・・・

19歳の花子は、会社の上司である妻子のある太郎と関係を持つようになりました。

関係をもつようになったきっかけは、太郎が妻とは別居状態であり、近く離婚するという話からでした。

関係が1年近く続き、花子さんは妊娠してしまいました。

花子さんは妊娠したことを告げ、早く結婚して欲しいことを告げたところ、太郎さんは花子さんと会うのを避けるようになり、男の子を生むとばったり花子さんのところに来ないようになりました。

騙されたと気づいた花子さんは、太郎さんに対して、慰謝料の請求をしました。

男性の妻のあることを知りながら情交関係を結んだ女性が、男性に対し慰謝料を請求できるかどうかについては、難しいところです。

男性に妻があることを知って情交関係を結んだ女性は、たとえ男性が、妻と離婚して結婚するからと欺罔した場合であっても、その情交関係は、公序良俗に反する行為だから、法律上の保護を受けられず、女性が男性に対し、慰謝料を請求することは、民法708条の趣旨からみて許されないとの判例があるからです。

(不法原因給付)
民法第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

しかし、最高裁は、女性の側の動機が、主として男性の詐言を信じたことに原因している場合で、女性側の不法性に比し、男性側の違法性が大きいときには、貞操侵害を理由とする慰謝料請求も許されると判示しました。

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