接待で飲酒中の災害で労災補償・・・

接待で飲酒中の災害で労災補償・・・

出張中、会社の取引先との接待の最中に酔ってしまい、転倒して骨折してしまったのですが、労災の補償を受けられるでしょうか?

労災保険の対象となる労働災害と認められるためには、業務上の災害であること、「業務遂行性」「業務起因性」が認められることが必要です。

従業員が就業時間中、その所定就業場で、その所定作業遂行中、重大な故意や過失もなく受傷する場合には、労働災害であることは間違いなく、業務上災害と認定されます。

出張中は、労働者は事業主の直接の管理下を離れており、その間食事、睡眠、その他の私的行為をすることもあります。

また、交通、宿泊や取引先との交際など、業務に付随する行為も含まれます。

出張は事業主の命令により行なわれるのであり、全過程が事業主の支配下にあるものとして業務遂行性が認められ、例え私的行為に基づく災害でも、原則として業務起因性が認められます。

接待上の飲酒を伴うような場合にも、使用者が指示し、あるいは慣行化して黙認されるような場合には、飲酒による災害も業務上の災害として認められる可能性はあります。

出張中の災害といっても、出張先に向かう方法が、通常の又は合理的な順路・方法を逸脱していたり、取引先との接待中の飲酒であっても、遊行・泥酔・喧嘩などのように積極的に行なわれた私用・恣意行為に基づく災害であるような場合には、業務遂行性も業務起因性も認められないとされます。

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過重労働の過労死の労災認定・・・

夫は高血圧、動脈硬化の持病がありましたが、仕事が忙しく心配していたところ、勤務中に急性心不全で倒れ、亡くなってしまいました。

夫の死亡について労災の保障を受けることができるでしょうか?

労災の補償を受けるためには、その疾患が業務に起因して生じたことが必要です。

脳出血、急性心不全等の疾患は、長時間労働などの業務に起因する場合のほか、業務とは関係なく個人の素因又は疾病、例えば高齢による動脈硬化、高血圧になどに起因する場合や、両者が複合して発病する場合もあるので、業務に起因するかどうかの認定は難しくなります。

判例は、業務遂行が、基礎疾病と共同原因となって死亡の結果を招いたと認められる場合には、労働者がかかる結果の発生を予知しながらあえて業務に従事する等災害補償の趣旨に反する特段の事情がない限り、業務上の死亡と認め、事故当時における業務の内容自体が、日常のそれに比べて、質的に著しく異なるとか量的に著しく過重でなければならないと解する合理的な根拠はない、として災害性の要件を緩和しています。

また、災害のない単なる疲労の蓄積の結果についても、異常に重い公務の遂行による心身の慢性的疲労状態が誘引となった急性心臓死に公務災害を認めた事例もあります。

本件では、会社が高血圧、動脈硬化等の持病の存在を知りつつ、無理な労働を命じていたような場合には、就労による過労と死亡との因果関係が立証できれば不法行為に基づく損害賠償の請求もできます。

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理由のない解雇の損害賠償・・・

特段の理由もなく、会社を解雇されたのですが、解雇を無効として賃金の請求ができるのでしょうか?

従業員の解雇について、労働契約に期間の定めがあれば、その期間中は原則として解雇はできません。

ただし、やむを得ない事由がある場合には、使用者は直ちに契約を解除することができます。

(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

やむを得ない事由とは、相手方の著しい義務違反など、契約を存続させておくことが一方当事者に酷となるような事情をいいます。

労働契約が期間の定めのないものである場合には、使用者が労働者を解雇する場合には、少なくとも30日前に解雇の予告をしなければならないものとしています。

(解雇の予告)
労働基準法第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

ただし、天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇を行なう場合には予告は不要です。

予告解雇については解雇理由は特に限定されていないので、使用者は、解雇予告をするか、又は予告手当を支払えば、労働者を事由に解雇できるのが原則です。

しかし、一定の場合に法律で解雇制限されている他、労働協約や就業規則により解雇事由を限定列挙されている場合には、それにより解雇も制限されることになります。

労働基準法では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすると規定されています。

また、労働者は解雇の予告をされた日から退職の日までの間において解雇の理由について証明書を請求でき、使用者は解雇理由の明示が義務付けられました。

使用者には、就業規則への解雇の事由の記載を法律上明確に義務付けました。

解雇が合理的な理由を欠くような場合には、慰謝料などの損害賠償も請求できるのです。

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転勤命令拒否で解雇の慰謝料請求・・・

配置転換というのは、職種転換や事業場内の配置換え事業間の転勤をいいます。

使用者の配置転換命令権は労働契約などの職種や場所についての個別的合意や就業規則に基づいて、その合意や就業規則に基づいて、その合意や規定の範囲内で行使されることが必要です。

配置転換は職種や労働場所という重要な労働条件の変更に関係するので、労使間交渉の対象となります。

職種の変更のルールや労働場所の範囲、配置転換の人選の基準、本人との折衝手続きや異議申立て方法などの配置転換の手続きを協定することができます。

組合員個人の労働条件に関する問題として、不当な個別配置転換問題を取り上げることもできます。

交渉がまとまらない場合には、使用者の配置転換命令権の行使の有効性の問題も生じます。

就業規則には、「会社は必要により転種変更、配置転換、転勤を命ずる」旨の配置転換条項がおかれます。

この配置転換規定は、単に使用者の配置転換命令権の発生を意味するにすぎず、具体的な配置転換の範囲は、別個に当該労働者との個別的な労働契約の内容である従業員の入社資格、入社時の事情、会社における地位、職種、会社の規模事業内容、労働慣行など諸般の事情を総合的に勘案して決定されます。

判例では、老母を含む家庭との別居を伴う配点や老親の扶養の代替が可能である配点は権利濫用に当たらないとされていますが、老親や病気障害者を持つ家庭の扶養を担う場合は「通常甘受すべき損度を著しく超える不利益」に当たるとされています。

この場合には、その拒否を理由とする懲戒解雇は無効として、会社に対して従業員の地位を認めることと、慰謝料などの損害賠償の請求をすることもできると考えられます。

育児介護法では、「事業主は、労働者の就業場所の変更を伴う配置の変更の場合には、子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない」とされていることも考慮されます。

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