仮登記担保の精算金後払いの所有権移転・・・

仮登記担保の精算金後払いの所有権移転・・・

山田さんは、金融業者である田中さんから、所有の不動産を担保にし、450万円のお金を借り、次のような契約を結びました。

①山田さんが約束の期日に債務の全部又は一部の支払を怠ったとき、あるいは差押や仮処分などを受けたときには、田中さんはいつでも一方的に代金を500万円として売買を完結することができる。

②この不動のうち、山田さんが占有している建物については、売買予約完結権の行使から1ヶ月以内に明渡す。

③売買完結の場合は、山田さんの債務一切と売買代金500万円とは相殺勘定になり、その結果過不足があれば、清算する。

ただし、山田さんに受取分が生じた際には、不動産の本登記手続きをし、かつ、建物明渡し完了後に受取分を支払う。

との契約でした。

しかし、山田さんは期日に全額を返済できず、田中さんは契約上の支払が遅延しているとし、売買完結権行使の意思表示をし、本登記手続きと建物の明渡しを求めてきました。

山田さんは、一部の弁済をしていること、利息や損害金の定めは、利息制限法に反しているから、弁済金のうち、この超過分に当たる部分を元本に充当すると、予約完結時において元本残は、68万2000円で、遅延損害金は6万3290円にしかないのです。

本件不動産は、時価2500万円はしますから、小額の残存債権の優先弁済を受けるために売買予約完結権を行使し所有権を取得するのは権利の濫用であると、主張しました。

仮登記担保契約に関する法律によれば、代物弁済予約完結の意思表示をするときには、精算金の見積額を同時に通知することとされています。

通知後2ヵ月後にならなければ所有権移転の効力が生じないとこととされています。

所有権移転登記及び引渡しは、清算金の支払と同時履行にしなければならないとされており、これに反する特約は無効であるとされます。

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譲渡担保の不動産を弁済期に売却・・・

山田さんは、所有の不動産を担保にして、事業資金500万円を、田中さんから借りました。

山田さんと田中さんの契約では、その不動産の所有名義を田中さんに移転しておき、500万円の弁済期である1年後に、山田さんが借入金を返済したときは所有名義を山田さんに移すという譲渡担保又は売渡担保方式の担保方法をとりました。

この不動産の時価は2000万円でしたが、1年後の弁済期に山田さんは金策がつかず、1週間ほど遅れて、500万円に利息をつけて田中さんに届けたのですが、田中さんは受け取りを拒否して、第三者に売ってしまったと言いました。

本件に類似の判例では、清算未了の仮登記担保不動産を換価処分として第三者が所有権を譲り受け、本登記を経由したときは、その完全な所有権を取得し、債務者がこれを否定することはできない。

清算が未了である場合には、債権者から第三者対し換価処分としての登記が行なわれるまでは、債務者は債権者に対して債務を弁済して仮登記担保関係を消滅させ目的不動産の完全な所有権を回復することができるのであって、なお目的不動産の所有権は債務者にあると解するのが相当である。

そうすると、第三者が右登記を債務者の意思に基づかない等違法な手続きによって経由した場合には、債務者は、目的不動産を所有しているわけだから、右登記の抹消を求める利益を有するとしています。

この判例は、仮登記担保による場合ですが、譲渡担保方式でも清算をすべきと解され、田中さんが評価清算して山田さんに精算金を支払うまでは、債務全額を弁済して所有権を回復できると解されます。

ただし、既に第三者に所有権を移転し、登記をしてしまっては、実際はこれを回復することは困難で、山田さんは精算金債権を有するに過ぎなくなってしまいます。

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近所の主婦の陰口で損害賠償・・・

花子さんは、近所の主婦3人に盗人扱いなどの陰口を言われるようになっていました。

更には、花子さんの勤務先にも、匿名での誹謗中傷の電話がかかってくるようになり、とうとう花子さんは、会社を辞めざるをえなくなり、転居するまで考えました。

そこで、花子さんは、その主婦3人を相手に、名誉毀損として不法行為に当たるとして、各100万円の慰謝料の請求をするため訴訟を起こしました。

裁判所は、被告ら3人の誹謗中傷の事実を認めた上で、被告らの行為は町内の単なるお茶飲み話の域を超え、原告に対する悪意をもった誹謗中傷というべきものであって不法行為を構成するとし、精神的苦痛に対する慰謝料として被告らにつき各自20万円の支払を命じました。

名誉とは人に対する社会的評価であり、これを低下させる行為が名誉毀損にあたると解されています。

刑法230条の2が、名誉毀損罪につき、名誉を毀損したのが公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的に出たとき、及び公務員又は公選による公務員の候補者に関する真実であることの証明さえあれば違法性が阻却されるとしており、この趣旨は民事責任にも推し及ぼされると解されています。

(公共の利害に関する場合の特例)
刑法第230条の2 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

しかし、純然たる私事・私行に関する場合には、事実が真実であっても社会的評価を低下させた場合は名誉毀損として不法行為になると解されています。

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賃借人の火事で類焼者の損害賠償・・・

山田さんは、アパートの一室を借りて住んでおり、ある時、アイロンをつけたまま出かけてしまいました。

気づいてアパートに帰ったときは、アパートが全焼していました。

幸いにも、焼死者はいませんでしたが、家主と5世帯の借室人に損害賠償請求をされており、どれぐらいの損害賠償をすればよいのでしょうか?

民法709条では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する」と定められています。

(不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

山田さんのアイロンの不始末は、過失に該当します。

ただし、失火については、例外として「失火に関する法律」という特別法があります。

これによれば、「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と規定されています。

民法第709条の規定は、失火の場合には、適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときは、この限りでない。

山田さんの不始末が「重大なる過失」ではなく、単なる普通の「過失」の程度であれば、家主に対しては、賃借物件の返還不能ということで、その損害賠償はしなければなりませんが、それ以外の損害、家主以外の類焼者に対しては損害賠償の義務はないとされるのです。

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