郵便局員の配達ミスで差押不能・・・

郵便局員の配達ミスで差押不能・・・

山田さんは田中さんに1000万円を貸していました。

田中さんは、最初は分割で返していたのですが、その後、返済が滞るようになり、とうとう返済しなくなり、山田さんの再三の督促にも音沙汰もなく、連絡もとれなくなりました。

そこで、山田さんは、利息を含めた残金700万円について、裁判で判決を得て、田中さんの取引先の銀行の預金の差押手続きを行ないました。

裁判所は、山田さんの主張を認め、差押命令を銀行宛に特別送達で送りましたが、郵便局員のミスで銀行宛の通知が送れてしまいました。

その間に、田中さんは銀行にあった730万円を全額引き出してしまったため、山田さんは差押ができなくなりました。

山田さんは、差押ができなくなったのは、郵便局員のミスが原因だから、国が700万円を賠償するべきだと主張しました。

しかし、郵便法では、国が賠償するのは、次の場合であると定めています。

①書留郵便や小包を紛失した場合などに申出があった書留の実損額だけとされていること。

②賠償請求ができるのは郵便の差出人と受取人だけとされていること。

であるから、差出人でもない山田さんはは請求できず、払う義務もないと反論してきました。

そこで、山田さんは、上記の賠償範囲を制限した郵便法の規定は、公務員の不法行為で受けた損害は国に請求できると定めた国家賠償請求権を保障した憲法17条に反すると、訴えました。

この事例のように、判例は、債務者の預金や給料を差押えようと、債権者である金融会社が裁判所に申立手続をし、裁判所が差押命令を銀行と債務者の勤務先に特別送達で出したところ、郵便局員のミスで銀行に届くのが遅れてしまい、そのために債務者が預金約790万円を全額引き出してしまったという事例があります。

金融会社は、当然、国に賠償請求したが、国は郵便法の規定を楯にその支払を拒絶したため、裁判になりました。

一審、二審とも敗訴した金融会社が上告し、事件は最高裁まで争われ、郵便法の規定には違憲・無効の部分があると認めています。

判決では、「郵便法が賠償制限や免責を定めたのは正当」としたが、「紛失や破損以外で損害が出た書留について、郵便局員の故意や重大な過失により発生した損害まで国を免責とするのは合理性がなく、違憲」と認めました。

その上で、とくに特別送達は、「軽過失でも国は賠償責任を負うべき」と指摘しました。

スポンサードリンク

スキミングで信販会社から被害金額請求・・・

ガソリンスタンドでバイトをしていた山田さんは、客のクレジットカードをスキミングをしていました。

スキミングとは、クレジットカードの磁気情報を磁気読み取り装置などを使って盗み取る手口をいいます。

専門店や通販でカードリーダーを手に入れ、カード情報を読み取り、それを悪い仲間に3万円で売っていました。

その仲間はその情報を使って偽造カードを作り、電化製品などを買っては、すぐに換金していることは知っていましたが、その割の良いバイトをやめることはできませんでした。

その後、偽造グループが摘発され、山田さんも取調べを受けたのですが、「悪仲間からカード客の利用状況を調べるために必要だと言われて、それを信じてデータをスキミングしただけで、まさか偽造カード作りに使われるなんて知らなかった。」と言い張り、刑事責任は免れました。

平成13年、クレジットカードの偽造、偽造カードの所持や譲渡、スキミングなどによるカード情報取得を禁止する改正刑法が施行されました。

これは、支払用カードのデータをスキミングした者も、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が課されます。

山田さんが刑事訴追を免れたのは、この規定がなかったからです。

しかし、刑事責任を問われないからといって、民事責任まで免れることはできません。

スキミングによりクレジットカードの情報を盗み出し、第三者にデータを売った男性に対し、信販会社が損害賠償を請求した事例があります。

第三者が、このデータをもとに偽造カードを使用、電化製品等を購入したため、信販会社はその代金約2600万円を各販売店に立替払いしており、その立替金を支払うようにスキミングした者に求めました。

裁判所は、信販会社の主張を認め、被告に対し、約2600万円を支払うように命じました。

スポンサードリンク

騒音被害の禁止命令と慰謝料・・・

山田さんは住宅地にあるスーパーの隣に住んでおり、スーパーの冷暖房に使う室外機の騒音で悩まされていました。

そこで、スーパーに再三にわたり、文句を言ったのですが、全く聞く耳を持ってくれず、山田さんはやむなく区役所の公害課に相談すると、区の担当者が来て、騒音値の測定だけはしてくれました。

それによりますと、深夜の騒音は、約60~65デジベルに達するとのことで、これは走っている乗用車の車内の音並みの騒音で、もちろん区の騒音排出基準45デジベルを大きく上回っています。

そのデータをもとにスーパーに改善を要請したところ、スーパーは謝罪と騒音の少ない室外機への改善を約束してくれたのですが、その後、のらりくらりと言い逃れして改善してくれませんでした。

そこで、山田さんはスーパーを相手取り、騒音禁止と慰謝料請求をしました。

一般的に、各自自体の条例の規制値を越えた騒音は、受忍限度を超えたものだとして、その禁止を求め、場合によっては騒音被害について損害賠償を請求できます。

東京都公害防止条例では、夜間午後11時から午前6時までの騒音について、第一種・第二種の低層住宅専用地域では30~40デジベル、その他の住居地域でも40~50デジベルと、その上限が決められています。

本件の場合は、60~65デジベルの騒音が測定されているので、このスーパーの室外機の騒音は条例違反の騒音を出しており、騒音防止の措置を取らなければなりません。

このような事例で、スーパー側に一定以上の騒音を出すことを禁止し、また約170万円の賠償を命ずる判決がでました。

また、飲食店のカラオケ騒音などは、自治体の騒音排出基準を超えていれば、話し合いで決着がつかない場合、自治体にその違反行為を告発して行政処分を求めるととともに、カラオケ装置の使用差止めを求める仮処分を裁判所に求めることができます。

スポンサードリンク

臭気被害で慰謝料請求・・・

山田さんの住むマンションの向かいのビルの1階に、居酒屋が入り、焼き鳥や焼き魚を焼く臭いがマンションに流れ込んでくるようになり、臭いと煙で窓を開けてはいられず、またベランダに干した洗濯物には臭いがこびりついたりするのです。

それは、ビルの換気扇の排気口がマンション側に出ているためです、

居酒屋に何とかしてくれと頼んでも、耳を貸してくれず、市役所の環境保全課に相談に行くと、悪臭や大気汚染に関する市の規制基準を超えていれば、その店に改善命令を出せるとのことを教わりました、

その測定の結果、いずれも規制基準を超えることがわかり、市は排気口の位置を変更するなどの改善措置を取るよう勧告したのですが、居酒屋はその勧告を無視し続けたため、裁判に訴えました。

悪臭防止法では、住民の責務として「何人も住民が集合している地域においては、飲食物の調理、愛がんする動物の飼養その他日常生活における行為に伴い悪臭が発生し、周辺地域における住民の生活環境が損なわれることのないように努めると共に、国又は地方公共団体が実施する悪臭の防止による生活環境の保全に関する施策に協力しなければならない」と定めています。

都道府県知事は、住宅街など住民の生活環境を保全するため悪臭を防止する必要がある規制地域を定め、市町村長はその規制地域内で規制基準を超えた悪臭を排出する事業者には、改善勧告や改善命令ができることになっています。

神戸市の住民が焼き鳥チェーン店を相手取り「焼く鳥の臭いで快適な生活環境を妨げられた」として、防臭対策と損害賠償を求めた裁判で、一審では「店の臭気は通常許される受忍限度を超えている」と認め、被告チェーン店側に臭いを規制基準値以下に抑える措置を取るように命じたほか、総額72万円の損害賠償支払を認容しましたが、二審では「排気ダクトの延長後は臭気の酷い時に限られ、臭気濃度が規制基準を超えているが受忍限度内」として、一審判決を取消し、住民側の請求を退けました。

スポンサードリンク