職場の噂の名誉毀損の損害賠償・・・
職場の同僚にありもしない噂を流されて困っていますが、名誉毀損で訴えることができますか?
職場であっても、不法行為が成立しているなら訴えることはできます。
ただし、職場での発言は仕事に関してなされることも多く、企業内の業務命令権、人事管理権の発動としてされるものもあり、不法行為とできないような場合もあります。
仕事のミスについて、同僚、上司が注意するとき、過去のミスを上げても、直ちに名誉毀損としての不法行為とはいえない場合もあります。
職場は閉鎖社会ですから、そこの誰もが知っている事実であれば、仮にそのことを言っても違法とはならないでしょうし、例えば、遅刻常習者というようなことを言われてもやはり違法とはなりません。
判例では、中学校における繰り返しての誹謗中傷発言が人格権を侵害するとして不法行為の成立が認められています、
この事例で、被告は、述べたとされる各自実は真実と職場では原告に対する評価として定着していたものにすぎないので侵害はないと主張しましたが、判決が認定した事実では、「平気でうそをつく、自分の望みを達成するためには女の武器を使う」とまで言っているので、裁判所は取り合いませんでした。
この事例のように酷い発言ではなくても不法行為は成立し、職場での発言といっても評価は定着しているから責任はないという理屈は認められないとしています。
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大勢の会議で名誉毀損の損害賠償・・・
大勢の人が出席している会議の席上で、意見を異にする人から、事実に反する誹謗中傷を言われましたが、この場合、名誉毀損あたりませんか?
名誉毀損は、名誉毀損罪と不法行為を問うことができます。
(名誉毀損)
刑法第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
名誉毀損罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します。
本件の場合、事実を摘示したことは明らかですし、それが名誉毀損したことも明らかで、問題は「公然」といえるかです。
「公然」とは、不特定又は多数の人が「認識することができる状態」であると考えられています。
大勢の人が出席している会議ですので、多数に当たり、多数の人が聞いているので認識することができる状態ですから、「公然」に該当します。
多数というのは、単に複数では足りず、相当の多数とされるのですが、多数や不特定でなくても、見聞きした者が話せば、多数や不特定の者が知ることになるので、伝播の可能性があれば「公然」だと考えられます。
会議が少数で特定であったとしても、それらの者によって話されて伝わっていく可能性があれば名誉毀損が成立します。
不法行為は、名誉毀損罪が成立する場合には、必ず成立します。
名誉毀損罪が成立しない場合でも、名誉が毀損されるという被害が生じていますから、違法性があり故意又は過失があれば成立します。
違法性については、発言内容が真実であるときは内容が醜悪なものであったり、発言目的がおとしめる目的等である以外は違法性なしとされます。
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前科が新聞に掲載の損害賠償・・・
新聞に前科を掲載された場合に損害賠償請求ができるかについて、前科がプライバシーに該当するかどうかが問題になります。
プライバシーが私生活に関する私事に属する事柄であるのに対し、前科あるいは犯罪事実は私事ではなく社会生活上の事柄と考えられます。
また、時が経過して社会的関心や利害が薄れた場合には社会的なものでなくなるとしてプライバシーなるとの考えもあります。
多くの考えでは、前科はプライバシーとされています。
ですので、前科の公表は不法行為となりますが、判例では、公共の利害に関する事実で専ら公益を図る目的でなした場合は、公表した事実が真実であるかあるいは真実と信ずるのに相当な理由があれば不法行為は成立しないと考えられています。
プライバシーであるなら、それを侵害すれば不法行為となり、不法行為が成立すれば、損害賠償請求は認められます。
前科の有無で人の評価が変わることはあってはなりませんが、現実にはありうるので前科の公表が名誉毀損になる可能性はあります。
しかし、前科は事実の基づくことなので、内容が醜悪で、おとしめるような目的などがなければ、名誉毀損にはならないと考えられます。発信情報の開示の請求の権利も認めており、同法に基づき発信者情報の開示を命ずる判例も出されています。
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会社を新聞で侮辱する記事の損害賠償・・・
会社を侮辱する記事が新聞に掲載された場合、名誉毀損を問うことが考えられます。
会社に対しての名誉毀損の場合に、会社に損害賠償請求を認めた判例があります。
会社の「名誉、信用が・・・著しく毀損されたことは明らかであり」「本件記事によって、具体的計数には積算できないものの、相当の無形の損害を被ったものと認め」「損害賠償の額は500万円とするのが相当である」とした事例があります。
会社も名誉や信用を毀損された場合に慰謝料請求が認められることがあります。
ただし、謝罪広告などの名誉回復を図る措置以外に、慰謝料を必ず請求できるわけではありません。
会社などの法人の場合には、慰謝料が認められるのは特殊な判例です、
判例は、全国的な大会社について、著名な経済人である代表取締役会長についての個人的なことの批判も含めた週刊誌の記事に関するもので、週刊誌も発行部数60万部に及ぶ影響の大きなものであったからとされます。
会社の名誉を毀損された場合には、一般的に謝罪広告を請求することになります。
その記事によって、継続的な顧客から取引を打ち切られた等の具体的な因果関係が立証できる売り上げ減等の実損害があれば、その損害は請求できます。
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