公正証書とは・・・
◇公正証書とは
公証人が公証人法に基づいて、法律行為、その他私人間の権利・義務に関する事実について作成した文書を公正証書といいます。
公正証書に債務不履行の場合は強制執行をされても異議がない、という執行受諾文言が記載されていると確定判決と同じく強制執行することができます。
この執行受諾文言が記載されている公正証書のことを執行証書といいます。
執行証書には、金銭消費貸借契約、売買契約などの契約公正証書と債務弁済契約公正証書の2種類があります。
このうち多いのが、金銭債務の履行を主たる目的とする債務弁済契約公正証書です。
契約の金額がいくらでも200円の印紙税を納付すれば足りるからです。
公正証書は、下記の理由で利用されます。
①一定の金額の支払いなどに関するもので、執行受諾文言がある場合には、執行証書として債務名義になります。
②法律の専門家である公証人が作成することにより、その契約内容はしっかりしています。
③真正な公文書と推定されるため、証拠として強い証明力を有することになります。
将来の紛争の予防的作用があります。
④その作成日付が確定日付としての効力を持ちます。
確定日付とは、その日付について完全な証明力があると法律上認められる日付をいい、第三者への対抗力として効力を有することがあります。
◇公正証書の作成方法
当事者本人が公証人役場に出頭します。
実印と印鑑証明または免許証などにより本人を確認します。
公証人は、当事者双方の言い分を聞いて公正証書を作成します。
公正証書が作成されると、公証人は、当事者双方に読み聞かせ、または、閲覧させて承認を取り、署名捺印してもらいます。
作成された公正証書の原本は公証人が20年間保管し、同一内容を記載した正本、謄本が作成され、正本を債権者に、謄本を債務者に交付されます。
実際には、当事者の代理人による作成もできます。
その場合、実印を捺印し、印鑑証明書を添付した委任状の提出が必要です。
印鑑証明書は、作成前6ヶ月以内に発行されたものでなければなりません。
◇公正証書作成の注意事項
①債権者として公正証書を作成する際には、将来公正証書の効力を争われないように、その趣旨を債務者、代理人によく説明し、納得してもらうことが必要です。
②執行受諾文言が入っているかの確認をします。
③執行受諾文言が入っていても、条項が、「債務があることを確認する」という表現であれば強制執行することができません。
「債務者は・・・を支払う」という給付文言にしておく必要があります。
④期限の利益喪失条項を入れておきます。
⑤送達を行っておくこと
強制執行を開始する前に執行証書謄本が債務者に送達されていることが必要です。
公証役場で公正証書を作成したときに、債務者が本人出頭の場合は債務者に謄本を手渡すことにより送達できます。
しかし、債務者の代理人が出頭している場合にはこの方式による送達はできません。
公証人役場から郵便による送達が必要になります。
公正証書を作成すると同時に債務者に対して、公証人に郵便による送達申立てを行っておきます。
⑥代理人による場合、債権者の従業員が債務者の代理人となることは有効です。
⑦公正証書作成嘱託については表見代理の規定の適用はないので、代理人と本人の委任関係を確認します。
⑧公正証書が代理人により作成された場合は、作成後委任者本人に通知すべきことを定めています。
これは、違反した場合でも罰則などのない訓示規定です。
通知内容は、公正証書が作成されたこと、当事者、代理人の氏名、強制執行受諾文言の有無等が記載されるだけで契約内容まで記載されません。
⑨貸金業法により、貸金業者が貸付の契約について債務者または保証人から強制執行受諾文言付の公正証書作成の委任状を取得することは禁止されています。
これに違反すると刑事罰があります。
これに違反して作成された公正証書も無効になります。
◇公正証書で強制執行するための要件
①金銭の一定の額の支払いまたはその他の代替物もしくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求であること。
条件付、期限付、将来の請求権でもかまいません。
その証書に金額を明記してあるか、または証書自体によりその金額を算出しうる場合でなければなりません。
他の資料と結びつけてはじめて確定できるものではだめです。
将来の請求権については、「当事者間において基本たる法律関係が確定していて、これから生ずる将来の請求権が金額において一定していること」が必要です。
連帯保証人と債務者との間で、保証委託契約がなされ、求償権の範囲につき契約公正証書を作成している場合に、その公正証書が事後求償権について執行証書とすることできるかについて、事後求償権の行使は公正証書ではできないというのが実務です。
事前求償の特約にして、予定される金額を具体的に記載しておき、弁済による事後求償の必要が生じたときは、これに代えて事前求償についての条項を活用して強制執行を申し立てる方法をとります。
②執行受諾文言があること。
◇公正証書作成の費用
目的の価額 | 手数料 |
100万円まで | 5,000円 |
200万円まで | 7,000円 |
500万円まで | 11,000円 |
1,000万円まで | 17,000円 |
3,000万円まで | 23,000円 |
5,000万円まで | 29,000円 |
1億円まで | 43,000円 |
1億円を超える場合超過額5,000万円までごとに、3億円まで13000円、10億円まで11000円、10億円を超えるものは、8,000円をそれぞれ加算する。
◇公証人
公証人は、その権限、職務、任免、監督、懲戒などについて規定した公証人法によって、職務が制度化されています。
公証人は法務大臣に任命され、その指定した法務局、地方法務局に所属し、役場を開設します。
定年は70歳です。
広義の国家公務員ですが、国からの給与などの支払いはなく、手数料制です。
◇確定日付
契約の日付が重要な意味を持つ場合があります。
このような場合は公証人役場で700円を支払って確定日付を押してもらい、後日の証拠とすることができます。
公証人は書類が持ち込まれた当日の日付印をその書類に押印することにより、その書類がその日以前に存在していたことが証明されます。
債権譲渡の対抗要件として「確定日付ある証書」が法律上要求されていますが、第三者からの「承諾」の「確定日付ある証書」として公証人役場の確定日付が利用されます。
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強制執行とは・・・
◇強制執行とは
強制執行とは、金銭の支払い、家屋の明渡し、抹消登記の請求、ビルの建築禁止などをなす義務のある人がその義務を履行しない場合に、債権者の申立てに基づいて、裁判所や執行官が債務者から強制的にそれらの義務の履行を図る手続きです。
強制執行は、それによって実現される権利が、金銭の支払いを目的とする金銭債権かそれ以外の権利かによって、金銭執行と非金銭執行に分けられます。
◇強制執行の方法
金銭執行は、請求の内容を債務者の協力無しに直接実現する直接強制の方法により行われますが、非金銭執行は、直接強制のほかに代替執行、間接強制の方法があります。
代替執行は、執行に必要な費用を債務者から金銭で取り立てて債権者に代わって給付内容を実現するもので、間接強制は、債務者に不利益を予告して心理的に圧迫し、債務者自ら強制する方法による執行です。
◇強制執行の準備
①債務名義の取得
強制執行は、債務者の債務の存在を公的に証明した文書で、法律によって執行力を与えられた債務名義に基づいて行われなければなりません。
②執行文の付与を受ける
執行文とは、債務名義に執行力が現存すること、執行力の及ぶ人的、物的範囲を公証する文言をいいます。
仮執行宣言付支払督促、小額訴訟判決には不要です。
③債務名義の送達証明書の取得
強制執行を開始する前に債務者に債務名義が送達されていなければなりません。
これは、債務者に防御の機会を与える趣旨です。
裁判所または公証人役場で債務名義の送達証明書を取得して、それを申立書に添付して強制執行の申立てをします。
④条件執行文等の送達
条件執行文、承継執行文が付与された場合は、それを証明する文書があらかじめ債務者に送達されていなければ強制執行を開始できないことになっています。
⑤強制執行すべき財産の調査
動産以外は、差し押さえるべき財産が特定されていなければ強制執行を申し立てることはできません。
強制執行すべき債務者の債権や不動産などの財産をあらかじめ調査する必要があります。
債務者からの所有財産の情報を取得するための財産開示手続が定められています。
◇強制執行の費用
通知、送達、公示などや、執行官の現況調査、売却実施手数料、評価人に対する評価手数料などのために、一定の費用を裁判所に予納しなければなりません。
執行費用は、原則として債務名義を取得した上で取り立てることになりますが、金銭の支払いを目的とする強制執行の場合には債務名義を必要とせず、執行手続きにおいて請求債権と同時に取り立てることができます。
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金銭執行とは・・・
金銭執行は、債務者の財産の差押をして、その財産を強制的に換価し、換価された現金を債権者に交付または配当するという順番で行われます。
債権者は多数で、全部の債権者に弁済できないときは、債権額に応じて比例的に配当します。
債権者は、債務者の財産を調査し、どの財産を強制執行するかを決め、不動産執行、債権執行は地方裁判所へ、動産執行は裁判所内の執行官に強制執行の申立てをします。
金銭執行は差押により開始されます。
差押は、金銭執行において債権者に金銭的満足を与えるべく、執行の目的物たる債務者の財産の事実上、法律上の処分を禁止し、自由に換金できる状態におく執行機関の財産保存行為です。
その方法は、不動産の場合は、執行裁判所による差押宣言、動産の場合は、執行官による占有、債権その他の財産の場合は執行裁判所が債務者、第三債務者に差押命令を送達する方法によって行います。
不動産の差押の場合、所有者は差し押さえられた不動産を従来どおり使用・収益できますが、最終的には強制的に売却され、競売代金の納付が行われると、不動産の所有権は買受人に移転し、買受人の申立てにより、その占有が排除されます。
仮に所有者が差し押さえられた不動産を第三者に処分しても、差押債権者との関係では、処分は対抗できません。
差押債権者は差押後の処分を無視して手続きを進めることができます。
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