財産開示手続とは・・・
◇財産開示手続とは
財産開示手続は、一定の債務名義を有する金銭債権者の申立に基づき裁判所において財産の状況について債務者に開示させる手続をいいます。
強制執行を申し立てるには、差し押さえる不動産や預金のある銀行の支店などの特定が必要ですが、債権者がこれらの情報を取得することは簡単ではありません。
これでは判決を取得しても、強制執行することができません。
財産開示手続とは、債権者に差し押さえるべき財産の情報を開示するために定められた手続をいいます。
◇財産開示手続の申立
財産開示請求できる債権者は下記になります。
①執行力のある債務名義を有する金銭債権者。
ただし、仮執行宣言付の判決、支払督促、公正証書は除かれます。
②一般先取特権を有する債権者
このような債権者で、下記のいずれかの場合に財産開示手続を申し立てることができます。
①強制執行手続などの配当手続において、金銭債権の完全な弁済を受けることができなかったとき。
②判明している財産に対して強制執行または担保権の実行をしても、金銭債権の完全な弁済を得られないことを明らかにしたとき
この場合、できる範囲の調査をした結果、どの程度の財産があり、それらの価値から強制執行などをしても請求する債権の完全な弁済を受けられないことを、調査結果の報告書として裁判所に提出します。
例外的に、債務者が過去3年以内の財産開示期日で財産を全部開示したときは、原則として財産開示手続は行われません。
◇財産開示手続の内容
財産開示手続の申立がなされると、裁判所が財産開示期日を指定し、その日に、債務者を呼び出します。
また、債務者は、一定の期限までに、裁判所に財産目録を提出しなければなりません。
債務者が、正当な理由なく財産開示期日に出頭しなかったり宣誓を拒んだとき、宣誓したのに期日で陳述しなかったり虚偽の陳述をしたときには、30万円以下の過料の処罰に処せられることになります。
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強制執行できない場合とは・・・
◇債権者平等の原則
債務者の財産について強制執行の申立をしたところ、他の債権者も同じ財産に強制執行を申し立ててくる場合があります。
この場合、両者の合計債権額が、差押財産の価額を上回る場合は、両者の債権額に応じて按分して配当されることになります。
強制執行が競合した場合は債権の発生時期、差押の時期を問わず平等に弁済されます。
これを債権者平等の原則といいます。
◇債務者に財産が無い場合
強制執行によって権利は実現されるのですが、債務者が無資力であったり、強制執行の前に財産を譲渡したり、または隠匿すると債権者は強制執行ができなくなります。
債務者が無資力の場合は強制い執行できなくても仕方ありませんが、強制執行の前に債務者が財産を譲渡・隠匿することは考えられることです。
このような場合を防ぐために、仮差押を規定しています。
◇破産の申立をした場合
強制執行が成功し、差押ができても、弁済までの間に債務者に破産手続開始決定があると、その強制執行は失効します。
その場合は強制執行の費用が無駄になるので、債務者の破産申立の可能性も考えながら強制執行の申立を行う必要があります。
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仮差押とは・・・
◇仮差押とは
金銭の支払いを目的とする債権を有する人は、債務名義を取得して強制執行をすることにより債権を回収することができますが、そのためには、強制執行の目的である債務者の財産の現状を維持しておく必要があります。
債務者が財産を譲渡したり、毀損したりさせないで、現状を維持させることが必要です。
この目的のために債務者の財産の保全を図る手続が仮差押です。
物の引渡請求権など金銭債権以外の権利の保全を図るものを仮処分といい、仮差押、仮処分を併せて民事保全といいます。
仮差押は、債務名義を取得するまでの仮の手続であることから、仮差押の申立が認められるためには、原則として、担保を提供しなければなりません。
◇仮差押の要件
仮差押は、債権者が裁判所に申立を行い、債権者に保全されるべき被保全債権があるか、また、債務名義を取得する余裕がない緊急的な処分なので、保全の必要性を裁判所が判断して、原則として債務者の言い分を聞かずに仮差押命令を発します。
差押の決定は、裁判手続による証拠調べによって債権の存在が認められて出されたわけではなく、債権者の一方的な主張に基づき発せられるので、裁判の結果、債権者に権利がないことが判明することがあります。
この場合、仮差押は無効となりますが、仮差押の結果、債務者はその財産の処分を禁じられたので、債権者に対し、損害賠償を請求することができます。
この損害賠償の担保として、原則として債権者は、求める権利の金額の3分の1~5分の1の保証金を供託しなければなりません。
この担保を積むことが仮差押命令発付の条件となっています。
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