否認権とは・・・

否認権とは・・・

否認権とは、破産者が破産宣告前に、破産債権者全体に詐害行為などの損害を与えまたは一部の債権者のみを有利に扱う行為をした場合に、これらの行為の効力を否定し、いったん責任財産から失われた財産を破産財団に回復し、破産債権者に対する公平な配当を可能にする制度をいいます。

否認権は、破産手続きを前提として、破産管財人のみが行使することのできる権利で、その行使は、訴え、否認の請求または抗弁によってすることができます。

また、否認権は詐害行為取消権と異なり、債務者の詐害行為という主観的要件を必要としない場合があります。

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第三者責任訴訟とは・・・

他の債権者が債務者である会社について抜け駆けをして債権回収を図るなどしてすでに会社に資産がなくなってしまった場合に、その会社の取締役・執行役員等に対して責任を追及することができます。

会社債権者等が役員等に対して民事責任を追及する訴訟を第三者責任訴訟といいます。

本来、債権者が取引したのは、役員等ではなく会社であるにもかかわらず、何の保証もしていない役員等の個人にまで負わせる賠償責任を第三者責任といいます。

これは、役員等が悪意または重大な過失により善管注意義務、忠実義務に違反し、これによって第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務懈怠の行為と第三者の損害との間に相当因果関係がある限り、第三者の間接損害、直接損害を問わず、その取締役が直接に第三者に対し損害賠償の責任を負うこととされているからです。

任務懈怠の態様には、間接損害と直接損害の事例があります。

間接損害とは、取締役の悪意・重過失による任務懈怠から会社の財産状態が悪化するなどの損害を被り、その結果第三者に債権の満足を受けることができなくなって損害が生じた場合をいいます。

具体的には下記の場合になります。

①取締役の放漫経営

②取締役の利益相反

③会社財産の横領

④公私混同

⑤経営破壊行為

⑥資本充実の見せ金

直接損害とは、役員等の悪意・重過失により、会社に損害がなく、直接第三者が損害を被る場合をいいます。

具体的には下記の場合になります。

①倒産に瀕した状況での決済見込みのない金銭借り入れ、代金支払いの見込みのない商品の購入

②会社の債務不履行

③建物の不法占拠

④株主総会決議に反する退任取締役への退職慰労金不支給

⑤詐欺、詐欺的取引

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法人格否認の法理とは・・・

法人格を有するとは、会社が法人として、個人と同じように権利を有したり義務を負ったりすることをいいます。

会社に対して債権を有していてもその会社に資産がなければ、会社と株主などの個人とは法人格が別なので、会社の債務について、個人が責任を負わないのが原則です。

しかし、その原則を貫くと正義・公平に反すると認められる場合に、特定の事案について会社の背後にいる株主ないし別会社を債務者会社自体と同一視する法理を法人格否認の法理といいます。

法人格否認の法理が適用されるのは、法人格を濫用する場合と法人格が形骸に過ぎない場合の二つがあります。

法人格否認の法理は、会社が実質上一人会社であって、その一人株主が出資者であるが取締役でないときにその個人責任を追及する場合や、親会社・子会社間で法人格が別であることを否定して親会社に責任を追及する場合などに有用性を持ちます。

法人格否認の法理が実務上問題となるのは、下記のような場合です。

①会社と個人が同視される場合

②旧会社と新会社が同視される場合

③親会社と子会社が同視される場合

法人格の濫用とは、株主などの会社背後者が法人格を支配して、その支配者が違法または不法な目的を有している場合をいいます。

法人格の形骸化とは、法人とは名ばかりで、会社が実質的には株主の個人経営である状態や、子会社が親会社の営業の一部門に過ぎない状態をいいます。

法人格の形骸化が認められるのは、背後の個人または別法人による全面的な支配のほかに、会社と株主の財産の混同、取引や業務活動混同の反復・継続、帳簿記載・会計区分の欠如、株主総会・取締役会の不開催などの会社法上の手続の無視という形式的形骸化の事実の存在が必要とされています。

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