抵当権の設定と登記とは・・・
抵当権の設定契約を結んだら、直ちにその設定登記をしなければなりません。
債権者に有利な抵当権設定契約であっても、登記を経ていなければ、抵当権者は自ら取得したその抵当権を第三者に対抗できません。
債権者Aが債務者Bから抵当権の設定を受けても、その登記をしないでいるうちに、Bが別の債権者Cに同じ抵当物件につき抵当権を設定し、その登記を先にしてしまうと、Aの抵当権はCの抵当権に優先できなくなります。
Aがあわてて抵当権の設定登記をしてもCの後順位になってしまいます。
また、滅失した建物についての登記の流用をしないように注意が必要です。
Aは所有の建物を取り壊し、その跡地に新しく建物を建築しました。
しかし、古い建物の滅失登記、新建物の保存登記という手続をとらないで、旧建物のために備えられた登記用紙に表示されている建物の構造、床面積を新建物にそれに合致するように変更の登記をしました。
その上、債権者のために、これに抵当権設定登記や停止条件付代物弁済契約に基づく所有権移転請求権保全仮登記をしました。
この場合に、すでに滅失した建物についての登記をこのように新しい建物についての登記に流用する事ができるのでしょうか?
最高裁の判例では、「建物が滅失した後、その跡地に同様の建物が新築された場合には、旧建物の登記簿は滅失登記により閉鎖され、新建物についてその所有者から新たな所有者保存登記がなされるべきものであって、旧建物の既存の登録を新建物の保存登記に流用することは許されず、かかる流用された登記は新建物の登記としては無効と解するのが相当とする。」とされています。
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不動産登記とは・・・
不動産登記とは、法務局に備えつけてある国の登記簿に一定の事項を記載することをいいます。
登記簿を保管し、登記の事務を取り扱う役所を法務局といいます。
各地には、法務局や**地方法務局、その支局や出張所などがあります。
これが登記を取り扱う役所です。
不動産についての登記申請や登記簿の閲覧、登記事項証明書の交付請求などは、その不動産の所在地を管轄する法務局に対して行います。
不動産の登記簿は、土地登記簿と建物登記簿とは別々になっています。
不動産登記簿を作成する登記事務は全てコンピューター化されています。
登記簿は磁気ディスクに電子データとして調整され、活字、横書きになっています。
表題部には、土地の場合、所在、地番、地目、地積が記載されています。
また、建物の場合には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積が記載されています。
甲区欄には不動産の所有権に関する事項が記載されています。
乙区欄には不動産の所有権以外の権利に関する事項が記載されています。
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抵当権の順位とは・・・
同一の抵当物件について何人もの抵当権者がいるとしたら、各々の抵当権の優先弁済の順番はどう決まるのでしょうか?
抵当権設定の契約日によって決まるのではなく、各抵当権の設定登記の日付によって決まります。
抵当権設定登記申請書が法務局に受理された順番で決められます。
これを抵当権の順位といいます。
同一の抵当物件に複数の抵当権がついていて、その物件が競売される時、優先的に支払いを受ける順番は、抵当権設定登記の順位によるわけです。
この順位の事を一番抵当とか二番抵当、三番抵当といいます。
一番抵当というのは順位第一番の抵当権ということです。
抵当権の順位というのは、このように同一の抵当物件から優先弁済を受ける順番なのです。
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抵当権設定者が登記を拒む時とは・・・
抵当権の設定契約を結んで、設定契約書を作り、抵当権設定者はその契約で抵当権設定登記手続に応ずる旨約定していたにもかかわらず、印鑑証明書その他登記に必要な書類を準備しないで、弁解をしては抵当物件に対する抵当権設定登記を拒んでいるような時があります。
このような場合に抵当権者がとるべき手続として、仮登記仮処分という手続があります。
この手続は、その不動産所在地の地方裁判所に仮登記仮処分命令の申立をして、裁判所から抵当権の目的たる不動産について仮登記仮処分命令を出してもらう事になります。
この裁判所からの命令に基づいて仮登記の申請を登記所になし、これによって本登記の順位を保全しておく事が可能になります。