敷金と保証金に担保設定する方法・・・
債務者がその店舗や事務所を他から賃借しているときは、貸主に対し、敷金や保証金を差入れていることが普通です。
敷金というのは、賃料支払その他の債務を担保するために、賃貸人に交付し、差入れておく金銭のことです。
敷金を差入れている賃貸借契約では、賃貸借関係が終わったときに、賃借人に賃料滞納等の債務不履行がなければ、賃貸人はこの敷金を賃借人に返還し、もし、賃料が何か月分かたまっていたなどという債務不履行があれば、敷金の中からその不履行の額を差し引き、残額を賃借人に返す仕組みになっています。
敷金を担保にとるには、その返還請求権に質権を設定する方法があり、賃貸人、賃借人間の賃貸借契約の中で敷金の額や条件などを調査し、その敷金返還請求権について質権設定の契約を結び、賃貸人の承諾をとりつけ、その承諾書に公証役場で確定日付をもらっておきます。
貸ビルの賃貸借などに際し、賃借人から賃貸人へ差入れる入居保証金について、保証金といっても敷金と変わらない場合には、敷金と同じように質権設定を行います。
貸ビル業者がビル建設資金の調達の必要から、入居者たる賃借人から資金の一部を借りる目的のもとに授受されている入居保証金があります。
このような保証金は、10年間無利息で据え置き、その次の年から分割で返還する定めになっている場合があります。
このような入居保証金についても質権設定と譲渡担保によって担保にとることができます。
質権設定や譲渡担保のためには質権設定や譲渡担保の契約を結ぶことが必要です。
また、第三者に対抗する要件として、ビル賃貸人に確定日付ある証書によって通知をするか、又はその承諾を同じく確定日付ある証書によらなければなりません。
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火災保険金請求権に担保設定する方法・・・
火災保険金の請求権は保険契約に基づく権利ですが、実際に火災による損害がなければ効力を生じないので、法律上は一種の条件付権利です。
このような条件付権利もこれを処分したり、また、担保の目的とすることができます。
(条件の成否未定の間における権利の処分等)
民法第129条 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。
火災保険金を担保にとるには、これに質権を設定する方法があります。
質権設定契約を結び、質権設定者から内容証明郵便などの確定日付のある証書によって、質権設定を保険会社に通知するか、又は保険会社から承諾を得て、承諾書に公証役場で確定日付をもらうことが必要です。
(指名債権を目的とする質権の対抗要件)
民法第364条 指名債権を質権の目的としたときは、第467条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
(指名債権の譲渡の対抗要件)
民法第467条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
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特許権などに担保設定する方法・・・
特許権、実用新案権、意匠権及び商標権を工業所有権といい、これらの工業所有権は著作権とともに無体財産権といわれます。
特許権者は特許を受けた発明を、業として自らがこれを実施する権利を占有しているのですが、これを他人に実施させることもできます。
他人に特許を実施させるには、その他人に専用実施権を与える場合と通常実施権を与える場合とがあります。
この特許権、その専用実施権、通常実施権には質権を設定することができます。
特許権やその専用実施権、通常実施権に質権を設定する場合は、債権者とこれらの権利者との間で質権設定契約を結び、さらにその質権設定を特許庁にそなえられている特許原簿に登録しなければならないとされています。
質権設定を登録することは質権の効力発生の要件で、第三者に対する対抗要件になっています。
特許権は譲渡可能な財産権ですから、譲渡担保にとることもできます。
ただし、専用実施権を譲渡する場合などは、特許権者の承諾を得る必要があります。
特許権や専用実施権の移転は、相続その他の一般承継による場合を除いては登録をしなければ効力を生じません。
特許権以外の実用新案権や意匠権、商標権について担保に取る場合も、特許権に準じ、根拠となっている実用新案法、意匠法、商標法によることになります。
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