抵当権設定後の処分とは・・・

抵当権設定後の処分とは・・・

抵当権を設定した後であっても、抵当権設定者はその目的物を他に売却したり、これを他に賃貸するなど法律的処分をすることができます。

ただし、抵当権設定契約で抵当権者の承諾なしには、処分ができないと定められている場合には、抵当権者の承諾が必要です。

抵当権が設定されている目的物をその状態のままで買い受けるなど、法律的処分を受けた人のことを第三取得者といいます。

抵当物件を買い受けるなどした第三取得者は、抵当権が実行されるまでの間はその目的物の所有者ですから、目的物を自由に使用、収益する事ができます。

しかし、目的物について抵当権が実行されると、原則として第三取得者は目的物を競売等されてしまいます。

民法は抵当権とこの第三取得者の利益を考え、代価弁済、抵当権消滅請求制度、明渡猶予制度という3つの制度をおいています。

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代価弁済・抵当権消滅制度とは・・・

代価弁済とは、抵当権者が抵当不動産の所有権又は地上権の買受人に対し、その抵当不動産の買受代金を請求し、買受人がこれに応じて弁済すると、抵当権はその第三者のために消滅するという制度をいいます。

これは抵当権者の請求があってはじめてできることで、買受人の方から一方的にはできません。

抵当権消滅制度とは、民法の平成15年以前の滌除(てきじょ)の制度を名称変更するとともに、その内容が合理的なものに改められたものです。

滌除とは、抵当不動産の第三取得者が、自ら抵当不動産を評価し、その評価額を抵当権者に提供する旨を申し出て、抵当権者がこれを承諾した場合に、申し出額を払い渡し、又は供託すれば抵当権を消滅できる制度をいいます。

抵当権消滅請求制度では、申立権者が、抵当不動産の所有権取得者に限られ、地上権者、永小作権者は、抵当権消滅を請求する事ができなくなりました。

また、抵当権消滅を請求できる時期は、抵当権者から抵当権実行の通知を受ける前に限られます。

抵当権消滅請求は、第三取得者から登記をしている各債権者に対し、民法383条所定の3通の書面を送達する事によって行います。

3通の書面は次のものになります。

①取得の原因、年月日、譲渡人及び取得者の氏名、住所、抵当不動産の性質、所在、代価その他取得者の負担を記載した書面

②抵当不動産に関する登記事項証明書

③債権者が2ヶ月以内に競売の申立をしないときは、第三取得者は①の書面に記載した代価又は特に指定した金額で、債権の順位にしたがって弁済又は供託する旨を記載した書面

債権者が2ヶ月以内に競売を申し立てない時は、第三取得者の提示した金額を承諾したものとみなされ、第三取得者は上の金額を弁済又は供託することによって、抵当権を消滅させる事ができます。

抵当権者が第三取得者の提示する金額が低すぎると思う場合には、抵当権消滅請求を受けてから2ヶ月以内に通常の不動産競売を申し立てる事で、抵当権の消滅を避ける事ができます。

抵当権者が申し立てた競売手続が、取下げ、却下又は取消しにより終了した時は、第三取得者が提供した金額を承諾したものとみなされますが、買受人がいなくて競売手続が取り消されたような場合には、抵当権は引き続き存続する事になります。

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賃借人の明渡猶予制度とは・・・

平成15年の民法改正で、民法395条の短期賃借人に対する保護が廃止され、期間の長短に関係なく、抵当権に後れる賃借権は、抵当権者及び競売の買受人に対抗できないこととなりました。

その代わりに、抵当権に対抗できない賃貸借により建物を占有し、競売手続の開始前より使用収益をなす者は、競売代金納付から6ヶ月までに限り、当該建物の明渡猶予を受けられる事になりました。

賃借人は、あくまでも明渡の猶予を受けるにとどまり、占有権原が付与されるわけではありませんから、賃借人はこの猶予期間中、買受人に対し、建物使用の対価として、賃料相当額の不当利得返還義務を負います。

建物使用の対価について、買受人が建物使用者に対し、相当の期間を定めて1ヶ月分以上の支払いを催告し、相当の期間内に履行がない場合には、猶予の権利は消えて引渡しの対象となります。

抵当権に後れる賃借権が買受人に対抗できないものとなった以上、賃借権者が差し入れた敷金の返還請求権は買受人に承継されません。

また、抵当権者の同意による対抗力付与制度が新設されました。

この制度は、登記した賃貸借は、その登記前に登記をした全ての抵当権者が同意し、かつその同意の登記があるときは、同意をした抵当権者に対抗する事ができるというものです。

賃貸用オフィスビルのように、抵当権実行後も賃貸借を存続させないと担保価値が低くなるような物件での利用がなされるからです。

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