手形などから債務者の危険信号・・・

手形などから債務者の危険信号・・・

親しい取引先、大口の取引先から、既に発行した手形の決済期日の延期であるジャンプを依頼してくることがあり、これは危険な兆候です。

次の手形の決済の資金繰りがつかないことを意味します。

取引額が小額の場合には、ジャンプに応ぜず、手形の取立てを強行することによって、決済されることがあります。

他の大口の債権者に手形のジャンプを依頼して承諾が出た場合には、小口の手形は決済するからです。

また、資金繰りが厳しくなると、支払手形の残高が多くなります。

売り上げの規模に対して、膨大な支払手形残があるときは、融通手形の交換で、資金繰りをしていることがあります。

また、今まで第三者発行の手形で決済していたのに、これが不足したからといって、自社振り出しの手形で決済したいと申し出てくることがあります。

これは、相手先企業の売り上げが減少したり、あるいは手持ちの商業手形を割り引いて、自社の資金繰りに使ってしまっている可能性があります。

また、資金繰りの厳しい業者間で、融通手形の交換をしているように、資金繰りの苦しい業者間で、お互い相手方の債務の保証をしていることがあります。

保証債務を追及されると、業者全てが倒産に追い込まれます。

保証債務という帳簿に載らない債務の存在に気づいたときは要注意です。

業者自身が保証債務を負っている場合のほか、経営者個人が、他業者の保証債務を負担している場合も要注意です。

また、取引先企業が、自己の売掛債権を担保に金を借りたり、債権譲渡によって融資を受ける場合も要注意です。

買掛金支払のため、約束手形が発行され、これを金融機関で割り引いて、資金繰りをしますが、さらに売掛債権まで、譲渡して金を借りるというのは危険信号です。

売掛債権譲渡の通知が第三債務者あてに発せられると状態というのは、危険な状態といえます。

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危険な債務者と交換条件で保全・・・

債務者の危険を察知した時の対策としては、次のことが考えられます。

①不動産や有価証券など追加の担保をとる。

②信用ある第三者の保証や会社の代表者の個人保証をとる。

③先取特権の行使をする。

④新債権発生の防止のため、売り込みの中止をする。

⑤契約成立後であっても未出荷の商品の出荷をストップする。

⑥検収前の納入商品の引き上げをする。

⑦売掛債権の残高確認のために、手形を発行してもらったり、これが不可能なら残高証明書を発行してもらう。

⑧仮差押などの準備をする。

⑨確定した金額の債権について、強制執行認諾約款付公正証書を作成して、いつでも強制執行できるようにする。

これらの対策をとるためには、ただ単に要求するだけではうまくいきません。

商品の供給の約束や、手形のジャンプの交換条件として、要求します。

例として、山田工業が田中商会に2億円以上の債権残を持っていたのですが、担保は、本社不動産に5000万円の根抵当権だけしか設定していませんでした。

ところが、山田工業は、今月末の手形が落とせないと言って、ジャンプを依頼してきたので、田中商会は考えに考え、ジャンプに応じるが本社不動産に5000万円の担保に出すよう交渉し、最後の順位に根抵当権を設定しました。

田中商会は、その後も、商品の供給を少なくしていき、翌月の手形のジャンプ依頼も一部を現金内入れさせ、残額をジャンプするという方法をとりました。

その結果、債権残が1億円に減少し、担保の不動産に根抵当権1億円を設定しましたので、債権回収の目処がたってきたのです。

田中商会が強硬姿勢でジャンプに応じなければ、山田工業は倒産していました、かといって無条件に応じたのではいずれは倒産することになり、債権を回収できませんでした。

危険な兆候のある債務者からは、交換条件などをつけて、担保交渉をし保全した上で、少しずつ回収していくことが考えられます。

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社長個人の資産から債務支払い・・・

田中商会は、取引先である山田工業が倒産しそうになり、社長の個人保証を取っておらず、社長個人が田舎に相当広い土地を持っていることを調べ、社長の個人保証を取っておきました。

その後、山田工業は倒産し、調査したところ、社長個人が大地主であることが判明したのですが、農地、底地が多く、担保価値も低いので、金融機関も担保設定していませんでした。

田中商会は、売れる見込みのない広大な社長の所有地に仮差押を執行してみたところ、社長個人が隠し金から弁済してきたのです。

このような例もありますから、できる限りのことはするべきなんですね。

反対の例もあり、斉藤実業は外国から商品を仕入れ、ある問屋に翌月払いの現金売りをしていましたが、その問屋の取引先が倒産して、多額の不良債権が発生したという噂を聞きました。

斉藤実業は、すぐに強引に出荷を止めたのですが、その取引先の問屋は、社長個人の私邸を売却して資金繰りをつけたのです。

そのため、斉藤実業は得意先を失った上、問屋への売掛債権の支払を拒否されました。

勝手な出荷停止を契約違反として、問屋は売掛債権の支払を拒否しているのです。

注文を受けてしまった、法律上、売買契約が成立している商品の出荷停止については、手続き上難しい点があり、単に取引先の経営状態が怪しいという情報だけでは既契約の商品の引渡し拒否は、債務不履行になり、損害賠償の請求をされてしまうのです。

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