債権回収の訴訟の和解・・・

債権回収の訴訟の和解・・・

民事訴訟法では、裁判所はいつでも和解を求めることができると規定しています。

(和解の試み)
民事訴訟法第89条 裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。

これは、訴訟による判決ばかりが民事紛争の解決法ではないとの考えから規定されています。

例えば、銀行から融資を受けるからというので、不動産の登記済証と実印を預けたのに、実際には高利の金を借りられて、その担保にされてしまった被告の場合、被告の不注意は責めるべきですが、債権者も担保提供者、保証人に直接確かめて真意を確認するのを怠ったことは明らかですから責められるべきです。

ですので、すぐに表見代理の法理を適用して、債権者を勝訴させるのは早急かもしれません。

そこで、担保提供者とか連帯保証人に対して、分割払いや利息免除を認めるという方向で和解しなさいと原告に勧め、また、被告にも無効というわけには行かない旨を話し合うのが和解です。

また、債務者側に資産がない場合には、和解によるのが望ましく、債務者である被告の支払える限度での分割払いを認め、利息も一部又は全部を免除し、時には元本も一部免除するような妥協案を呑むほうが債権回収はうまく行く場合があります。

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手形小切手訴訟の手続・・・

手形訴訟、小切手訴訟は、特別の手続で行われ、すぐに仮執行宣言付の判決を取得し、これによって債務者である被告の財産に対して強制執行ができるようになっています。

手形小切手訴訟の訴状には、訴状という表題の下に、「手形訴訟による審理及び裁判を求める」と記載します。

請求の趣旨には、必ず「仮執行の宣言を求める」ということを書き加えます。

請求の原因は、必ず手形法に定められた要件を正確に記載し、原告がこれら手形を所持していることを書きます。

支払のため法定の期間内に呈示したこと、支払を拒絶されたことを記載します。

訴状に手形の写し、支払拒絶のあったことを示す銀行などの付箋の写しを、甲第一号証、甲第二号証として添付します。

手形の裏面のコピーも添付します。

実際の裁判では、手形に押された印鑑が真正のものであり、署名や記名押印に間違いがなければ、裁判が第一回で終わります。

手形小切手訴訟では、証拠調べのが制限されており、原則として、書証だけしか証拠に出せないことになっているからです。

例外的に、手形が真正なものであるかどうか、手形の呈示が合法的になされたかどうかに限って、当事者本人若しくは会社の代表者などの尋問が許されるだけです。

ですので、それが融通手形であるとか、契約不履行で商品が引き渡されていないとか、手形を騙し取られたなどいう抗弁については、証明することが許されていません。

これらの主張は、手形判決が出た後、これに対する異議とした手続きで、主張していかなければなりません。

小切手の場合は、請求の原因の中に「小切手の支払が拒絶されたので、支払人をして平成**年**月**日付をもって拒絶の宣言を小切手に記載せしめた」という文言を書き加えることが必要です。

小切手は支払呈示の期間が10日以内となっており、通常は、振出日から10日過ぎても呈示しても支払ってくれますが、不渡りとなった場合は、呈示期間経過後に呈示した場合は、振出人に対して請求することはできません。

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強制執行と担保権に基づく執行・・・

債務者が任意に債務の弁済をしない場合に、裁判所に申立て、相手の財産を処分し、その換価代金から債務の弁済を受ける手続きを強制執行といいます。

強制的に債務者の財産を換価する手続きは民事執行法という法律に定められており、強制執行と担保権の実行としての執行とに分けられます。

強制執行は債務の内容を強制的に行わせる手続きをいい、債務者の財産を強制的に換価する手続きをばかりではありません。

金銭の支払を目的とする債権であれば、債務者の財産を換価するなどして取得した金銭を債権者に交付します。

建物の明渡しを目的とする債権であれば、執行官が強制的に債務者の占有を排除し、債権者へ建物を引き渡します。

これに対して、担保権に基づく執行は、債権の担保として提供された物件を競売等に付して、取得した売却代金等から優先的に弁済を受ける手続きで、金銭の支払を受ける債権に限られます。

この2つの手続きの相違点として、強制執行では、「債務名義」という文書が必要になります。

民事執行法では、確定判決、仮執行宣言を付した判決、仮執行の宣言を付した支払督促、執行認諾文言を付した公正証書、和解調書、調停調書などが債務名義とされています。

(債務名義)
民事執行法第22条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
1.確定判決
2.仮執行の宣言を付した判決
3.抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
3の2.仮執行の宣言を付した損害賠償命令
4.仮執行の宣言を付した支払督促
4の2.訴訟費用若しくは和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第42条第4項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
5.金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
6.確定した執行判決のある外国裁判所の判決
6の2.確定した執行決定のある仲裁判断
7.確定判決と同一の効力を有するもの(第3号に掲げる裁判を除く。)

担保権に基づく執行の申立てには債務名義ではなく、担保権の存在を証明する文書が必要です。

例えば、担保権の登記されている登記簿謄本などです。

金銭の支払を目的とする債権に基づく強制執行では、法律によって差押が禁止されていない限り、債務者の財産であれば不動産、動産、債権を問わず強制執行の目的とすることができます。

しかし、債務者の財産でなければ強制執行することはできず、第三者に財産が移転されたときは追及できないのが原則です。

強制執行したとしても、その財産に優先する担保権が存在すると、その被担保債権を控除した後の残額でしか弁済を受けられません。

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